BLISSFUL RELATION -3- |
パシッ・・・。 ふたり向き合ってなんも言えんと立ちつくしてるんが気まずぅなって『電話来てんねん』とだけ言うてオレは、その場を立ち去ろうとした。 その瞬間、小気味よい音が自分の頬で炸裂したんを感じた。 「アホ。あんなんウソやん・・・太一くんの声やて気ィつかんかったんか?」 「・・・?」 「行かせへん!話し、聴かせてもらうで」 言われたことに反応できず、とっさに楽屋ん中に引き返そうとすると光一はオレの腕をおもいっきりつかんだ。 戸惑ってただ光一を見つめかえすと、ふいと視線を反らされた。 そんな行動に胸の奥が鈍く痛む。 「なんで・・・あんなコト言うたんか、教えてくれよ」 「・・・それは」 うつむいたままで呟くコトバに少しだけためらってから応える。 こんなトキがきたらと思って何度もココロん中で繰り返してきたこの台詞・・・ホンマに言うときが来るやなんて思てもみんかった。 「あんな・・・オレこの仕事しててよかったで。オマエがこれからもソロでやってけるようにオレも手ェ尽くすし」 黙ったままの光一に考えてた台詞をひとつずつ伝える。 最後までキチンと言いきらなあかん・・・言ってしまいさえすれば、それでキレイに終われるんやから。 「光一・・・今までホンマにありがと・・・」 「勝手なこと言うなよ!・・・何が気にいらんのか、俺のどこがイヤなんか・・・なんでこんなコト言うんか教えろよ!俺は・・・俺はな、剛・・・」 押しつぶされそうになりながらやっと紡ぎだした言葉を強い口調が遮った。 キッとオレを見据える瞳が、心なしか潤んでるようにもみえる。 「俺はおまえと一緒に仕事したいから今まで頑張ってたんやろ!?それをナニ勝手なこと・・・はっきり言えよ!俺の・・・どこが不満なんや!!」 「別に不満なんてないよ。でも・・・」 「そんなんで納得いくか!?理由言うてみぃ、俺が納得できるまで放さんからな!」 思わずたじろぐと光一はオレの腕をつかむ手に力を込めた。 「・・・好きやから・・・」 「ナニ?聞こえんかった」 ほぼ涙目で迫ってくる光一に俺は、とうとう根負けした。 このようすやったらどんなウソついてもごまかされてくれんやろうし・・・。 「オマエが好きやから。そんなコト思てる奴なんかと気色悪て一緒におれんやろ?オレかてキラわれて別れるんやったら・・・と思て・・・な」 もう半分ヤケで、何もかも洗いざらい話す。 岡田に言われたこと、あくまでベスト・パートナーでおりたかったこと・・・誰よりも光一に厭われとうなかったこと。 それを黙って聴いとった光一は、最後までなんも言わんとひとすじだけ涙をながして「なぁんや」と呟いて微笑んだ。 それはキレイな表情で・・・こころなしか嬉しそうな笑顔で。 「そんなん俺もおんなじやし・・・先走られたら俺、剛のコト一生忘れられんようになってしまうやんか。俺に後悔させんといてよ」 そう言ってつないだ手ェからはあたたかい愛おしさが流れ込んできてる気がした。 かわらないこの気持ちさえあれば、いつでもKinki Kidsに戻ってこれるんやな。 そんなことすらわからんと空回りしとった自分がなんかおかしい。 「岡田の相手ってダレや知ってる?」 ふたり連れだって楽屋に戻るとなんやとても落ち着いた気分になった。 お互いのキモチしらんかった頃よりもずっと近くに相手を感じられる気がして。 「え・・・イノッチやろ?いちばんなついてるやん」 「実はねぇ・・・俺も知らない」 「なんやそれ」 少しだけ他人ごとが気になるんはもう少しだけふたりの時間がほしいから。 まだはじまったばかりのこの関係に馴れてへんから・・・今までのふたりのままこの幸せを確かめてたい。
恐れることなんかない。 どんなコトバもふたりを揺るがさへんって自信、持てるから・・・今なら。 こんな幸せな間柄を誇りたい。 “ずっとふたりで居る”ことにホンマの意味を見つけたいから。 決して崩れてしまうことはない。 そう信じてるから・・・この上なく幸福な未来を。
END.
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