Bravado from Anxiety


誰か、教えて下さい。

彼は本当に私を愛してくれていますか。






 事の起こりは一通のメール。

「なあなあ上田ぁ、これ見てくれよ。まぁた中丸のヤツ、オレにつまんねーメール送ってきやがった」

 楽屋に入った途端、騒ぎ出す聖。

 それまで一人黙々と勉強していたオレは、シャープペンシルを走らせていた手を止めた。

 普段だったら誰かに相手を任せて勉強続けてるんだけど、オレと聖以外誰もいないからそんなの無理で、仕方なく相手をする。

 放っておくと勝手にキレるからなぁ、コイツ。

 …それに、中丸に関する事みたいだし、さ。

「何?最近そればっかりじゃん。で、今度はなんて書いてあったわけ?」

 微妙にトゲトゲしい返事になってしまったのは、きっと妬いてるから。

 オレにはあまり送ってくれないメールを、中丸は聖としょっちゅうしてるらしくて、それはオレが「受験勉強で忙しいから」って断ったからでもあって。

 いけないとは思いつつも、聖の口から中丸の話を聞くたび、中丸の口から聖の話を聞くたびに、醜い嫉妬心が心の奥底で湧き上がってしまう。

「そんな怒んなって。別にお前から中丸取ろうと思ってる訳じゃないんだから」

 う、しかも見透かされてるし…。

「怒ってなんかないよ。で、何なんだよそのメールって」

「…怒ってんじゃん…。まいいや。それなんだけどさー、あ、ほらコレだよコレ!」

 ケータイをピポパポ操作して、そのメールをオレに見せてくれる聖。

 オレは画面に表示された内容を声に出して読み上げる。

「なになに…えーと、『今日歴史のテストで赤点とったー。まじでへこむー』…何コレ」

 短いながらも画面が語るのは情けなさただ一つ。

「な〜?だからどうしたって話じゃね?アイツが赤点取ろうが取るまいが、オレには関係ねえっつーの。でさ、このメール写真にとって、今日の少クラで訴えてやるつもりなんだよねー。『迷惑メールfrom中丸お断り』ってね!」

 かなり楽しそうな聖を尻目に、オレは再び彼のケータイに目を落とす。

『赤点とった。まじでへこむ』

 ああそうですか、それはヘコむよね。

 もう気づいてると思うけど、このときオレは単にメールに呆れていた訳じゃない。

 腹を立てていたんだ。中丸の馬鹿さ加減に。






 やばい、やばいぞ。

 聖のヤツ、全国ネット(なんといっても衛星放送。海外でも放映されてたりするし)で俺のメールバラしやがって。

 どうせやるなら他のメールでやってくれればよかったのに。

 よりによって、よりによってあのメール。

 絶対知られたくなかった人がいるのに!

「な・か・ま・る・くん♪」

 来た。

 恐る恐る振り返ると、そこには最愛のハニーの姿が。

 なんか…笑顔が田口みたいで怖いんですけど、上田さん。

 収録が始まる前、いつものように遅刻した俺に、冷たい視線しか投げかけてくれなかった理由が、やっと分かりました。

「知って…たんだな、お前」

「うん♪」

 にっこり☆って、可愛い〜じゃなくて、何で笑ってるんですかアナタ。

 マジで怖いって。絶対怒ってる。

「中丸、オレに内緒にしてたんだね」

「はい…すみません…」

「このオレがわざわざ、受験勉強の時間割いて勉強みてやったよね?」

「はい…」

「特に歴史は、お前苦手だから、それにオレ得意分野だから、その中でもかなり時間かけたよね?」

「はい…」

「それなのにどうして赤点なんてとっちゃうのかなぁ〜?」

 しゅん…。

 上田の言葉、どっからどう見ても俺が悪いようにしか聞こえないし、事実その通りだから俺の立場、これっぽっちもない。

「あ〜あ、中丸また小さくなってるよ」

「相変わらず尻に敷かれてんなぁ」

「オレはあんな風に仁脅したりなんかしないもんね〜♪」

「カメのためだったら、たとえ脅されたって何されたって、何でもやっちゃうよぉ、俺」

「ほんとぉ?うれし〜♪」

「俺もカメが喜んでくれてうれし〜♪」

「うるさい、そこのバカップル。ちょっと黙ってろ」

「わぁ、聖が怒ったぁ」

「こら聖!カメビビらせんなよ!お前と違ってか弱いんだから!(ぎゅむっ)」

「きゃあ〜☆」

「お〜ま〜え〜ら〜(怒)」

「まぁまぁまぁまぁ(にこにこ)」

 いつも通りの騒がしい楽屋は平和そのものなのに、俺と上田の周りだけ暗いオーラが立ちこめてる。

 上田の顔見れなくて、目あわせられなくて俯いてるけど、痛いほどに感じる視線。

 次にくるであろう言葉が怖い。

 何故なら、今度のテストは上田と賭をしてたりするから。

『60点以上取れたらご褒美ちょうだい』って俺が言ったのが始まり。

 結局『80点以上。かつ、赤点取ったら罰ゲーム』って上田の意見に従うことになったんだけど。

 …俺が弱いとか言うなよ!

 もし合格したら、その、つまり、一晩上田と…ってつもりだったんだよね。

 だから余計、赤点取ったなんて言えなかったんだよっ!

「じゃ、罰ゲームなんだけど」

 うわぁ、きたよ。

 あ〜何を言われるやら〜…。

「そんな怯えることはないだろ…今日から次の全国模試までの約一ヶ月間、キスから先を禁止するだけなんだから」

 ……。

「は?」

 今、何とおっしゃいましたかお姫様。

「だ〜か〜ら!キスより先はすんなっつってんの!」

 ってコトは、コトはだよ…。

「そんなっ、無理!ずぇ〜ったい無理だって!」

「そこを我慢すんのが罰ゲーム」

 ピシャリと、それはもうハッキリと言って下さるお姫様。

 既に無言で帰り支度始めてるし。

「え、上田くんもう帰っちゃうの?遊びに行かないの?」

「お前…オレは受験生だっての」

「いいじゃん上田、今日くらい」

 俺なんか無視して他のヤツらと話し始めるし。

「田口がおいしいお店見つけたから皆で行こうって話が出てるんだけどさ」

「あ〜ゴメン。今日これから予備校なんだ」

「そっか、それじゃしょーがねーな」

「また今度声かけてよ。じゃ、また明日」

「おう、じゃあな〜」

「頑張れよ〜」

 パタン。

 …って出てっちゃったし。

 俺には挨拶もないし。

 冷たい。

「上田、頑張るよな〜」

「大学、受かるといいよね」

「に、してもさ」

 四人が一斉に俺の方を見た。何だよ。

 数秒間無言で俺に哀れむような視線を向けてくれる。

 と思ったら、赤西と亀梨が。

「中丸、可哀想…」

 声を揃えて言いやがった。

 ほっとけ!!











え〜…かなり古いネタでございます。これを書き始めるに当たってその時のビデオを探してみたのですがなかなか見つからず、結局自分の記憶だけを頼りに中丸さんのメールを使わせてもらいました。思えばあのときから既に中聖テイストだったなぁ…。当時はまだあの組み合わせに違和感しか感じでいなかったのですが、今考えると格好のネタだ(笑)でも今回は中上でね。聖はメンバーで遊んでる設定なんです。仁亀シーンは勢いに乗ると次から次へとセリフが浮かんでくるので不思議。姫が姫っぽくなっていればいいなぁと思います。

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