THE GREATEST BIRTHDAY -4-


 すでに十時を回っていたが、二人は夕食を取っていないことに気付いた。

「何処かに食べに行こうって言ってたのに…これじゃ殆どの店閉まってんな。どうする? どっか店探す?」

 そう井ノ原は言ったが、健は、

「いい。今夜は井ノ原くんと二人っきりで居たいから。俺何か作るよ。何がいい?」

 と言ってさっさと台所に行ってしまった。

 エプロンをつけて再び現れた健が可愛くて、井ノ原は顔がニヤけそうになる。

 そんなこんなで、健の作った料理を一緒に食べて、確かな幸せをかみしめた二人は、先刻健が見ていたライブビデオを改めて見直し、あーでもない、こーでもないと議論を繰り返していた。

「あー、やっぱりここでバランス崩してる。だからバック宙失敗したんだ。」

「お前、あと少しで岡田と接触するとこだったじゃねーか。気をつけろよ。」

「あはは。病院送りになんなくて良かったよね。」

 などと言っているうちに、井ノ原のソロシーンになる。

 ギター弾き語りということで舞台照明もファンの声も控え目で、より一層井ノ原の魅力を引き立てている。

「やっぱり、井ノ原くんのソロはいいね。」

 うっとりしながら健が言う。

「何度観ても、何回聴いても、格好良い…。」

 それを聞いた井ノ原は、急にテレビを消してしまった。

「井ノ原くん? 何すんの急に。」

 健は余りにも唐突なことに驚く。

「あーあ、せっかく浸ってたのに。」

 その時、部屋の鳩時計が十二時を告げた。

 勿論、井ノ原はそれを見計らってテレビを消したのだ。

 健の顔を真っ直ぐ見つめる。

「誕生日おめでとう。健。」

 言うや否や、何か言われる前に井ノ原は健の唇を自分の唇で塞いだ。

 暫くして唇を離すと、少し言いにくそうに井ノ原は言った。

「ごめん。誕生日プレゼント、家に置いて来ちゃった。取りに戻ろうと思ってはいたんだけど…健?」

 突然のことに呆然としていた健だったが、状況を理解すると目を潤ませて井ノ原の胸に飛び込んだ。

「いいよプレゼントなんて。井ノ原くんが居てくれれば…。ありがとう。」

 自分の腕の中で震える健を抱きしめて、井ノ原はあることを提案した。

「なぁ健。プレゼントは無いけど…お前が好きだって言ってたあの曲を歌ってやるよ。ビデオなんかじゃなくて、生でな。今は取り敢えず、これがプレゼントってコトで……いいか?」

 その言葉に、健は井ノ原の胸にうずめていた顔を上げた。

「充分すぎるくらいだよ。ありがとう。」

 心からの笑顔を見せる。

 泣いた顔も、怒った顔さえも全部好きで、愛おしいけれど、やっぱり健は笑顔が一番だと井ノ原は思う。

 一番近くで支えてくれる健の輝く笑顔。

 この笑顔があるから頑張れる。そして自分も笑顔になれる。

 何者にも代え難い、大切な宝物。

 誰にも、たとえメンバーであっても渡したくない。

 健は自分といるときの笑顔が最高なんだと、井ノ原は改めて自覚する。自惚れてると思われたっていい。

 井ノ原は歌った。静かに、ただ一人の大切な人のためだけに。

 健はその歌声に、確かに自分が満たされていくのを感じた。











END











 無事に終わりました。いちお、初めて書いたJ禁小説でした。今思えばこの話のキャラ設定が一番いいような気がする。元々節操ないから、書こうと思えば思う程いろんなCPが頭の中に浮かんじゃって、結局「あー何かうまくいかない」ってパターンに落ちることが最近増えてきて。まぁそれはそれとして、プレゼントを渡しそびれた剛くんのその後はどうなったのか書く予定ではなかったのか私よ・・・(もう1年以上ほったらかし)。

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