やっとこクラウドとラブラブになれたルーファウスは、ここでそろそろ結婚の一つでも申し込んでおいた方が良いのではないか、という気になっていた。
というのも、第二秘書のエレノアに聞いたところ、クラウドは結構な大人相手に愛想が良く、その愛想の良さを勘違いした男達が、最近クラウドを狙って色々画策していると聞いたからだ。
クラウドが可愛くて、誰にでも優しい人柄というのは、ルーファウスが一番良く理解しているが、それが他の男の劣情を煽るとなると、また別の話だった。
可愛がられるのは良いが、恋人候補として見られるのは我慢がならない――というのが、ルーファウスの我侭な本心だったりする。
といっても、クラウド本人には、まさか「他の男にケツを振るな」なんてことは絶対に言えないし、言えば傷つけてしまうだろう=嫌われる。
得策ではない。
ならば、クラウドに負担がかからないように、ずっと自分の元に繋ぎとめておける「何か」を実行しなくてはならない。
それは――結婚。
しかし、ありきたりに申しこんで結婚式を挙げるのは、派手好きなクラウドオタクのルーファウスには我慢できないことであった。
もっと突飛な――そう、クラウドが喜んで涙を流すような、そんな演出。
となると、何も言わずに式場まで用意し(これはエレノア辺りにやらせよう)、なおかつ指輪その他の小物も最高級なものを(これはツォン辺りに用意させるか。しかし、また大人の玩具を用意されても……それはそれで楽しいが、まぁ、奴も今度はまともに用意するだろう)。
クラウドには何も知らせないようにする為に――その日までは避けていた方が良いかもしれない。
ルーファウスは、そこまで計画を立てて、ミッドガル一の宝飾店に入っていった。
指輪を買うためだ。
この前の新婚旅行もどきでは、ゴールドソーサーのオマケをわたしてしまったが、あれはサイズが大きすぎて、クラウドの薬指にはまらなかったのだ。
それに、デザインが結婚指輪にしてはシンプル過ぎる。
細いクラウドの指には、プラチナの細さに、小粒のダイヤをあしらった、白く鈍い輝きの上品な指輪が似合う。
半ばドリーム状態に入りながら、ルーファウスは宝飾店のディスプレイに向かうのだった。
「俺、最近、ルーファウス様に避けられてるみたいなんです……」
クラウドは総務部調査課の主任室で、二人の大人――ツォンとエレノア――に囲まれた中で、さめざめと泣いていた。
このところ、一緒に寝るのは止めよう、と部屋を追い出されるし、仕事の最中も、副社長室に入れるのはエレノアだけで、クラウドはこの数日、一緒に暮しているのに関わらずルーファウスの顔も見ていない状態だ。
事情を知っているエレノアは困ったようにクラウドの肩を抱き。
同じく事情を知っているツォンは、やはり困ったように、クラウドの可愛すぎる泣き顔を見ていた。
彼らの仕事は、式の準備をすること+事情の一切をクラウドに話さないこと。
だが、内緒にしていて当日に驚かせるというだけの為に、クラウドをここまで泣かせるのは正しいことなのか?
彼らは首を捻って互いを見合わせた。
「俺……きっと…………ルーファウス様に、飽きられちゃったんです……」
クラウドの思考はそこまで発展し、ついには泣き声は悲痛なうめきに変わっていった。
暫く泣いた後、クラウドはここで愚痴っても何も変わらない――と仕事に戻っていき、取り残された大人達は――。
「何とかならないかしらね?」
エレノアはツォンに水を向ける。
「黙っていて喜ばせるのは賛成なんだけど、避けて悲しませるのは良くないと思うわけよ」
エレノアの言うのは尤もなことだったので、ツォンは頷いて――。
「私に任せてくれ……」
力強く頷いた。
さすが主任! 頼りになるぅ!
とは、さすがに前に主任だった記憶のあるエレノアは言わない。
「適当に頼むわね」
どころか、前科のあるツォン(ルーファウスにクラウドの実家への手土産を頼んだ際に、大人の玩具を贈りつけた実績)の突飛な行動を疑っていないようなコメント。
ツォンは咳払いすると。
「今度は大丈夫だ」
と、胸を張って告げたのだった。
さても当日夜。
やはりクラウドを避けて先に退社したルーファウスは、自室に入るなりぶっ飛んだ。
ベッドに転がる見覚えのあるモノの数々。
思わず近寄って手に取れば、思い出の数々が蘇ってくる。
「これは、クラウドが泣いて喜んだ、とうもろこし型」
粒粒の一つ一つが別の動きをするという優れもので、入れた途端に嬌声を上げ喜んだクラウドの涙に濡れた可愛い顔がよみがえる。
あんまりよがるので、自分のもので満足しなくなるのではないか、と直ぐに抜いた覚えがある。
「このキュウリ型は……」
埃臭い神羅屋敷のベッドに積もった埃が、空間に充満する程クラウドが暴れていやがった――。
クラウド曰く――死ぬ程感じる粒粒キュウリ。
そしてこちらのナス型は……。
「入れ方によって、局部直撃の……」
ずっくん。
思い出と共に蘇る、クラウドの狂態。
脳と直結したかのように、ルーファウスの股間のものが熱を帯びて固くなる。
じわり――布を濡らす液の存在に気付いたルーファウスは、部屋を飛び出した。
途中、執事のドミンゴを見つけて、クラウドの帰宅を尋ねると、まだ帰ってない――との答え。
そのまま外に飛び出し、運転手はもう帰宅済みの車に飛び乗ると、発進させた。
そのクラウドの方は――と言えば。
副社長室にいた。
帰ろうかどうしようか悩みに悩んで、縋るように第一秘書に持たされる鍵で入ってしまった、広い室内。
何時もルーファウスが座っている椅子に触れると、また涙が零れてくる。
「ルーファウス様……」
随分前に帰宅していったから、椅子にはもう、その温もりすら残っていない。
だがクラウドは、そこにまるでルーファウスがいるかのように、座部に縋り、涙を零した。
飽きられる――可能性はいくらでもあった。それこそ山のように。
クラウドが恋人となってからも、社長からの縁談の話は幾度となくきていたし、それを鬱陶しく思いながらも、ルーファウス自身も、女性に対する対応は穏やかだった。
綺麗で優しくて、更にはルーファウスのための子供も生んでくれる女性達だ。
クラウドには、子供は埋めない。
そんなことは関係ないとはいわれてはいるが、だが、神羅の将来を担う人物にならば、後継者は必要だ。
飽きられたのならば、丁度良いのかもしれない。
近くソルジャー適性検査も迫っているし、適性検査を受けるなら、寮住まいは必要最低条件なので、ルーファウスと共にいることは不可能だ。
「俺――ソルジャーになりたいし」
このところ、ルーファウスと共に過ごす日常に、本来の入社目的を忘れていた。
勿論、ルーファウスはソルジャーになることを応援してくれているので、ジムに通わせてくれたりとかはしている。
「けど――甘えちゃいけないよな……」
クラウドは呟くと、副社長室を出ようとした。
ところで。
「クラウド!」
丁度副社長室に続く秘書室に入ってきたルーファウスと出会う。
「ルーファウス様?」
「なんだクラウド。泣いていたのか?」
「あ、いえ、これは……」
ルーファウスはクラウドの涙を見ると、途端に不機嫌そうになり。
「誰が泣かせたのか知らないが、全く失礼な話だな」
と涙の原因が自分とも知らずに言い放つ。
ついでにクラウドの腕を掴むと、副社長室に逆戻り。
「え? あの……?」
クラウドはルーファウスの行動の理由がつかめなくて、おたおたとルーファウスに引きずられて、結局出たばかりの副社長室に逆戻り。
更にルーファウスは、副社長室内机の上の緊急ボタンを押すと、机に内臓されている、神羅副社長室のコントロールパネルを引き出した。
「あの、何をしているんですか?」
まるで行動の理由が判らず、クラウドは思わず尋ねる。
と。
「いや、この部屋には仮眠室があるんだ」
との答え。
「え? あの……眠いなら、家に戻ったほうが」
「いや、眠いわけじゃない」
「はい?」
益々意味が判らない。
しかも、クラウドは飽きられたはずじゃなかったのか?
色々な疑問がクラウドの脳をぐるぐると巡ったが、答えはなく――答えを求めたい相手はしきりにパネルを操作している。
何がなんだか判らないクラウドの目の前で、まず壁が動いた。
「あれ?」
ずずず、と重い音を上げながら、壁が動き、その壁に隠されていたドアが出てくる。
「あそこだ」
ルーファウスはクラウドの腕を引くと、ずんずんと仮眠室に入り――。
「……」
クラウドは絶句する。
「ここ、本当に仮眠室なんですか?」
思わず尋ねた。
「そうだ」
だけど、ベッドにしろ他の何にしろ、とても――そう、とても豪華だ。
ベッドは天蓋つきで四方を紗が覆っているし、家具その他は作りつけらしいが、年季のいったアンティーク。とてもじゃないが仮眠室とは思えない。
広さだって、兵舎と同じくらいあり、幾つかあるドアの向こうは、やはり某かの部屋なのだろうと想像出来る。
呆然としているクラウドを、ルーファウスはベッドに誘い、呆気に取られたままのクラウドを、押し倒した。
「え?」
驚くクラウドの視線の前に、ルーファウスの顔。
「あの……?」
「しよう……クラウド」
「はい?」
更に驚くクラウドに、もう言葉は要らないとばかりに、ルーファウスは口付けた。
何がどうなっているのか全く想像も出来ないながらも、クラウドは喘いでいた。
向かい合ったまま貫かれ、クラウドのまだ大人になりきっていないものを扱かれている。
「クラウド……」
吐息の荒いまま、何度も名前を呼ばれ、答えることも出来ないくらいに感じて腰を振っていた。
ルーファウスは余裕がないのか、最初からクラウドの後ろに触れてきた。
何時もゆったりと長い愛撫の後、クラウドが放ってから触れられるそこにだ。
余程焦っていたのだろう、潤滑油すら用意していなかったルーファウスは、クラウドが放ったものすらない状態で、腰を眼前まで上げて、クラウドのそこに、舌を入れてきたのだ。
さすがに焦ったクラウドは抵抗したが、腰から舌をルーファウスの半身に押さえこまれた状態では何も出来なかった。
指ともルーファウスのものとも――また一度使われた玩具とも違う、滑った柔らかい感触。
細く丸められた舌が、限界まで入りこんでくるのに、クラウドはもだえ、現実を忘れる程に感じた。
だからか、何時もは挿入に違和感を感じるのに、何も感じなかった。
いや、それどころか、もっと質感のはっきりしたものを入れられたいとも思っていた。
今も、やはり突き上げる動きにゆとりを持たせたルーファウスの腰の動きがじれったい。
もっと激しくして欲しくて、でも優しくされるのは嬉しくて。
複雑な感情の中で、クラウドはルーファウスを感じつづけていた。