1.口付け
「いわゆる、アレだね」
唇を離した途端にロイは言った。
「んだよ?」
答えるのは不機嫌そうなエドワード。
「例えば年齢差がどうであろうが、だね」
「だから、何が言いたいんだよ!?」
何時になく回りくどいロイの口調に、最近ロイに対してだけ沸点が下がっているエドワードは切れかかる。
だって仕方ない。どう思われてるか、心配だし。
「そう直ぐ怒るのはやめたまえよ。カルシウムが足りないのかい?」
暗に牛乳を飲めと言われているような気になり、エドワードの沸点は更に下がった。
「だから、なんだよ!!! 男なら何事も直球勝負が普通だろ!」
男に見えても男ではないエドワードだけには言われたくない。
だが実際彼女は、ロイの知る誰よりも男らしい。
そんな彼女に負けない為にも、では男らしく直球勝負でもしてみるかね? とロイ。
エドワードを抱き上げると、その耳元に囁いた。
「年はまだまだ子供と言える年齢だと言うのに、君はやっぱり女だね?」
は? と思った時には、エドワードの体は、まだまだ遠いと思っていたベッドに押し付けられていた。
「キスだけって……」
「だから、キスするんじゃないか?」
自由にならない体をどうにか動かして、エドワードは腰のベルトに伸びるロイの手から逃れようとする。
上半身は既にロイの腕の中。
ドキドキと脈打つ心臓の音が、とても、うるさい。
「き、キスはもう、終わっただろ?」
「そうだね。恋愛ごっこのキスは終わったね」
「ごっこ、って……」
キス一つにすらかなりの緊張感を求められたというのに、それをごっこ扱いされてエドワードは泣きそうになる。
「だから、これから大人のキスをするんだよ」
「え?」
と、言ったはずが、言えていたかどうか。
深くまで合わさった唇によって言葉は封じられ、エドワードは「ごっこ」の意味をこれでもか、と実地で教えられてしまった。
触れ合うだけではない、ごっこ、じゃないキス。
優しさなんてあまり感じられないけど、でも、相手の熱が痛いくらいに伝わってくる。
互いの舌が交わり、怪しい音を立てて貪られる。
まるで、食べられているかのようだ。
だが、それだけではなかった。
初めての経験にぼうっとなっている間に、先程はやっとの思いで抵抗していた手が、いつのまにかベルトを解いていた。
ズボンの合わせを割って、下着の中に熱をはらんだ熱い手が忍び込んでくる。
「んんっ!」
悪戯な手はまだ閉じられた弁を割り開き……。
「や、やだっ!」
しつこく追いかけてくるロイの唇を振り解き、エドワードは叫んだ。
未知の経験に怯えるエドワードを苦笑で見やったロイは、しかし首を振る。
「だってまだキスが終わっていないじゃないか」
「キスって……だってもう……」
ともすれば奥に入り込んでこようとする手を、足を閉じて何とか防いで、エドワードは欲と怯えによる涙の滲んだ目でロイを見る。
「……キスには色々あるものだよ。少しこちら方面も勉強しなさい」
諭すように言いながら、しかしロイの手は遠慮がなかった。
強引にズボンと下着を下ろすと片足だけ抜き、細い両足をぐい、と広げる。
「ちょっ!」
閉じて隠そうとしても、男の力強い手には叶わなくて――。
「ここにね」
ロイが言って唇を落としたのは、濡れて恥ずかしい液でしとどに濡れた、エドワードの秘所であった。