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狂宴の宴 3

「そうきましたか……」

ふ、と笑ってフリングスはアッシュと対峙する。

「私は別に構いませんが……陛下が何とおっしゃるか……」
「宮殿でも二人を相手していたんだろう? ならば今ここで俺一人増えようが、問題ないんじゃないか?」
「ルーク様に対しての愛情すらないのに?」

長髪するようなフリングスの言葉に、アッシュは面白いように反応する。
かつて鮮血のアッシュと名乗っていた時のように、眉根を寄せ険しい表情を浮かべるそれに、フリングスは面白いとばかりに笑う。

「正直なところをお聞かせ願いたい。何故、ルーク様を求めるのです?」
「それは……」
「手放したとなったら、惜しくなりましたか? それとも、皇帝陛下の愛に包まれ綺麗になった皇妃殿下の味見をしたいと?」

ち、とアッシュは舌を打つ。とてもではないが、子爵の地位を受けた貴族とは思えない。
だが、気持ちは判るような気がした。
あのピオニーにですら、一生を捧げて愛を誓った相手である。それだけルークの魅力は男を惑わせるものだ。フリングスの一生ですら、ほぼ一瞬で奪っていった相手なのだ。

「ルーク様に手を出すということは、皇帝陛下の怒りを買うということでもあります。よろしいのですか?」
「皇帝の許可があれば良いのか?」
「そうですね……後はルーク様の意志ですか」

とは言え、ルークは被験者の願いであるならば無碍には出来ないだろう。そういう星の下に生まれていると言っても良い。
だからこそ皇帝の怒りは深いであろうが。

「どちらにせよ、生半可な覚悟で手を出さない方が良いですね。私がルーク様を手にする条件は、あなたには裏取引の義務となっている。あなたは何を、差し出しますか?」

小首を傾げて尋ねたフリングスに、アッシュは肩を竦めた。





「全く……あなたは本当に魔性だ……」

フリングスはルークの身を貪りながら言う。

「被験者ですら、その足元に平伏させようとしているのですから」
「や……っ、ちがッ……」

上等なベッドをギシギシいわせて、フリングスは遠慮などかなぐり捨ててルークの体を突上げる。
恐らくどこかで聞いているだろう被験者に見せ付けるように。
ひっきりなしに高い声を上げさせて、濡れた音を響かせて、わざと焦らすように。

アッシュが何故、それを望むのかは、本当のところはフリングスにも判らない。
ルークの言い分からは、アッシュは明らかにルークを憎んでいたらしいから、本来ならありえない要求である。

眉根を寄せ、涙の膜の張った瞳を見て、にんまりと笑う。

「陛下はどういう判断を下すのでしょう? また新たに、あなたの夫を増やそうとするでしょうか?」

問いかけても、もう忘我に至っているルークには聞き取ることも出来ないだろうが。
先を望むように締め付けるルークを愛しく見下ろし、フリングスは突き上げを深く鋭くする。
ビクビクと体を痙攣させて達するルークの白濁を腹で受け止めて、荒く呼吸を繰り返すルークの唇を奪うと同時に、その奥に欲を放つのだった。





ルークがコーラル城に滞在するようになって数日後、シュザンヌがバチカルからやってきた。
シュザンヌは皇帝からの親書を持ってやってきて、それを何故かアッシュに手渡した。
その後、ルークと体面したシュザンヌは、過去ルークが見ていた彼女よりも、更に一回り小さくなったように見えた。

「ルーク。本当にルークなのですね?」

涙の浮かんだ目で問われ、ルークは同様に涙を溜めながら頷いた。

「母を……愚かな母を許してください……」
「いいえ。俺こそ……」

親子は固く抱き合い、それぞれの間に流れた時間を涙で語った。

一方フリングスは、ピオニーからやってきた親書を見て笑うアッシュを見やる。
その顔を見ただけで、どういう結論が下されたのかが判る。

「……良い知らせでしたか?」
「俺にとってはな」
「ルーク様にとって、でしょうが……」

アッシュは怪訝な表情をフリングスに向ける。

「どういう意味だ?」
「さて……どういう意味でしょうか?」
「白をきるな。何か知っているのか?」

フリングスは細めた目でルークを見ながら、答えた。

「ルーク様の憂いは、皇妃でありながら子がなせないことともう一つ……これは一度も口に出されたことはありませんが、自らの身がレプリカでること。それも、疎まれたレプリカであること、なのでしょう」
「……被験者に認められるということが、ルークの安定に繋がるとでも言うのか?」
「少なくとも、そう陛下は理解したようですね」

だからこその結論なのだろう。
アッシュにも、ルークの共有を許すとの。

「……どちらにしても、俺も許された」
「王位継承者でありながら、それはどうします?」
「婚姻を結ばなくても、子はなせることは証明された」
「……成る程……」

二人の男は顔を見合わせて笑う。

「俺はマルクトの駐在大使になる予定だ。当然、王宮近くに屋敷を構えるだろう」
「それならば、問題はありませんね。今後も」
「皇帝と張り合うのは難儀だがな」

その笑みは、どこか狂気に似て……。




シュザンヌは期間ギリギリをルークと過ごし、バチカルへ戻っていった。
今後も皇帝の許しを得てマルクトへ向うことを約束しながら。

ルークの手には、金髪と赤毛の子供が届けられてた。
フリングスとアッシュは、条件をクリアしたのだ。
その二人の子を抱き、ルークはマルクトへ帰る。フリングスとアッシュを伴って――。

グランコクマ帰還後、ピオニーとルークによって二人の子には名前がつけられた。
金髪の女児にはリリィ。赤毛の男児にはマーク――と。





何かもう、色々済みません。

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