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狂った傷跡 2

宮殿に住まいを移してから、ルークの生活水準は格段に上がった。ファブレの屋敷に居たときよりも、だ。
ただその代わり、以前は客であれば誰でも相手にしていたのを、皇帝一人に限定されて相手をすることになったのだが……。
皇帝が言うのには、こうである。

「客人としてもてなすのは良いんだが、生憎お前が気に入った。ということで、お前さんは俺の恋人になれ!」

明らかに間違いである。
そもそも皇帝という身分では、恋人は持てないだろう。あって婚約者、下手すれば皇妃である。
皇帝の後ろに控える銀髪の護衛――名をアスラン=フリングスと言うらしい――が苦い笑みでルークに目礼しているのを見て、ああ皇帝の部下は苦労しているな、と。

「仕事をするのはやぶさかではないんですけど……恋人は遠慮しますよ。生活費の変わりにお仕えするってことじゃ駄目ですか?」
「そりゃ別に構わないが……となると、キムラスカの王族を、俺は娼婦のように扱うことになるんだが?」
「最初ちょっと思ったんですけど、レプリカでも王族の名乗りは上げられるんですかね? 親善大使同行者達は、認めなかったから置いていかれたと思うんですけど?」
「お前の話を聞いた限りじゃ、最初から王族と認められていないようだったからな……これは俺の不徳がいたす限りだ。申し訳ない」

たかがレプリカごときに頭を下げてしまう皇帝ってどうなんだろう?
ルークは首を捻る。

「とりあえず、娼婦扱いで良いですから」
「そうか。ならばそうしよう」
「じゃ、夜に陛下の寝所へ……って、これは駄目なのかな?」

一般市民の生活は覚えたばかりであたが、王族の生活というものを、そもそもルークは教えられていない。よって王家の一族がどのようにして過ごすのかを知らず、ルークは戸惑う。

「愛妾は奥殿で主の訪れを待つのが普通です。ルーク様をそちらに移しますか?」
「正式に認めているわけじゃないからな。性別も問題だし」
「ならば女装でもして頂けばよろしいのではありませんか?」
「アスラン……お前な……」

それは要するに、ルークの主人格を曲げてしまう行為にもなる。
ここまでレプリカとして蔑まれたルークに、それは失礼ではないか? と戸惑う皇帝には、ルーク自身が「それで良い」と言い出した。

「だが……」
「女装していた方が、正体がばれにくいと思いますし。どうせなら名前も変えて、今後はルシアと呼んでください」
「ルシアか……」

どちらにしろ、ルーク=フォン=ファブレと正体がばれるわけにはいかないのだ。

こうして、ルークはルシアとして、マルクト皇帝の愛妾となった。





「のは良いんですけど……」
「なんだ? 文句があるか?」
「いや、それは仕事だから文句もなにもないんですけど……さすがに朝からってのは……」

ピカピカと天上から降り注ぐ朝日を浴びながら、ルークは皇帝に組み敷かれていた。
ルークの為に、と誰が用意したのだか、白い薄布を形ばかり剥ぎ取り、白く繊細な肌を撫でる。
潤滑油を絡めた指を、奥の暗がりに潜めると、ビクリと細い肩が跳ね上がった。

「剣を使っていたよな?」
「は……い…………」
「その割りには、あまり筋肉に祝福されていなようだが?」

腹筋の見事な筋肉に反して、本来なら剣士には必須の腕の筋肉はそれ程発達はしていなかった。
聞けば使う流派はアルバート流というので、それならばかなり筋肉がついていて良いはずだが、ルークの腕は細く、剣を振るうのに必要な筋肉が見られない。

「剣は……お遊び程度でっ……」
「なのに戦わされたのか!? ファブレといえば武門の家系として有名だから、だから戦っていたのかと思ったんだが……となると、あいつらは最低ってことだな……」
「そんなこと、より……陛下ぁ……」

滲む艶声が、皇帝の戯れを咎めている。
ぬるぬると指一本出し入れされている状態では、とてもではないが長く経験したいそれではない。
いい加減、全身に響く温い刺激から解放されて、もっと激しい波に呑まれたい。
気付いた皇帝は「すまん」と一言で謝罪すると、潜めた指の本数を増やし、もう一方で高まりきって張り詰めた下肢を握りこむ。
緩く上下にうごかすと、悲鳴のような嬌声が上がり、ビクビクとその体を跳ね上げた。

「ホント、感じやすいよな、お前」

笑いながら告げると、いやいやとルークは首を振る。
もうまともな意識は持ち合わせていないらしい。
根が子供だからか、それともオリジナルからしてそうなのか、ルークは必要以上に性に対して奔放であり、かつ敏感だった。
刺激を強めると、直ぐにもいってしまいそうな気配を察し、皇帝はルークを膝の上に抱き上げる。
向かい合わせに膝の上に座らせ、直ぐ側にあるルークの唇を唇で塞ぐと、慣らされて収縮を繰り返す奥に滾った欲望をつき立てた。

「んーーッ……」

痛みはもう、感じもしないらしい。
鋭い感覚に身もだえし、食んだ皇帝をリズミカルに締め上げる技術は、恐らく無意識に身につけた技なのだろう。
唇を解けば、上がる声は皇帝の劣情をこれ以上ない程に煽り、無意識に揺れる腰が、自身にも相手にも刺激を送る。

「ルシア……動け」

命じれば、幼いなりも男心をくすぐるような仕草を見せて奉仕すら始める。
まだ、七歳なのに!

何度か懸命に命令を実行したルークは、しかしその数度で力尽きてしまった。
もう感覚が許容量を越えているらしい。
皇帝はそんなルークの細腰を掴むと、力任せに振った。

「あっ、あ、陛下っ」

引き攣れた声が限界を叫ぶ。
締め付けも比例して強くなり、絶頂が近い。

「も、や、だ、だめぇ……っ」

ぎゅ、と握られた肩に力が込められ、ルークの全身が硬直する。
絞られるように締め上げられた皇帝も、その強すぎる締め付けに遅れて衝撃に耐え――。
ほぼ同時に放った。ルークは皇帝の腹に、皇帝はルークの奥に叩き付けるように。

ぐったりと力の抜けたルークを抱きしめ、皇帝は残念そうに吐息する。

「お前が俺の子を生めたらな……」

ルークは笑った。





ルークがグランコクマに訪れて半月後、やっと派遣した和平の使者が戻ってきた。
皇帝は使者の言葉には一向に耳を傾けず、ルークから聞いた、彼らから情報を掠め取る為にたった一人の主人と別れて行動していた小さな聖獣に、まず事情を聞いた。
言葉は滅茶苦茶で、支離滅裂。情報を情報として順序だてて話すのには向かなかったが、主人を思うが故か、懸命に話してくれた。
その後、親善大使として同行した者達に事情を。

皇帝は頭を抱える。
小さな聖獣ですらが、主観を交えず事実をあったこととして話したというのに、人間であり言語に堪能な者達の方が、あまりにも主観的に状況を話して聞かせるのを見て、嫌悪すら湧き上がる。
これまでの歴史を見ていると顕著なことだが、そういうもの達の馬鹿な思い込みが、世に戦乱を導くのである。
しかも、そこにいる殆どの人間が、マルクトともキムラスカとも違うダアトの者達ではないか。

「ローレライ教団ってのは、ろくな教育をしないんだな……」

皇帝は呟く。
それについて「失礼だ」という声が上がったが、どちらが失礼なのかは明らかである。
皇帝は直ぐに不遜な物言いを平然と口にするダアトの軍人達を拘束し、それを土産にキムラスカへ再びジェイドを使者に立て親書を送った。

後日、感謝の言葉と共に親書が返り、マルクトとキムラスカは共に手を取り、ダアトに攻め入った。
どさくさに紛れてヴァンを亡き者にし、六神将を捉え、世を乱した者として公開処刑に踏み切る。
中には逃れようのない罪をおかした、本来ならばキムラスカ王家の血を継ぐ者がいたという。

レプリカのルーク=フォン=ファブレはアクゼリュスにて死亡されたこととなり、ダアト殲滅戦後、マルクトにルシアという美しい皇妃が立った。

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