口付けの意味1

 おかしい。何か今日の狼帝は変だ。勉強を教えてくれてるのはいつも通り なのに、何故だろう。俺は狼帝に触れるたびにドキドキした。


「ほら、冬哉、分かったのか」
 狼帝の部屋で座卓に並んで付きっ切りで教わっていた。だって明日の 2学期の中間テストは数学があるのだ。
 テキストを広げ、その下にノートを開いて狼帝が書いてくれた計算問題を 解いていた。
「この公式を使うんだぞ」
 テキストにマーカーで印が付いてるところをシャーペンの先で指す。体を ピッタリと密着させて頭を寄せて二人ともが考える。
 俺は計算の答えを。狼帝はどうやって理解させるかを。

 う〜ん、ちょっと気が散るけど頑張って考える。狼帝が教えてくれた通り にすると何とか答えが出た。
「そうだ。合ってるぞ。出来たじゃないか」

 普段は生真面目な顔が緩む。恋人接近と言っていいほど至近距離で見る 狼帝は渋くていい男だ。それはほんとにいつも通りなのに。何故掛かる 息まで熱い物を感じてしまうのだろうか。

 その理由は分かってる。今日の狼帝はとても色気がある。男の匂いが ムンムンとする。俺は明日のテストのことよりその匂いの方が気に掛かる。 いつもの狼帝は色事にはまったく無縁の存在なのだ。やるときはあんなに 激しいくせに、その時以外はそれを微塵も感じさせないのである。

 俺が感じる理由は分かっても、狼帝が普段はまったく発していない匂いを 出してる理由が分からないのだ。

「今のと同じ要領で解ける」
 そう言って狼帝はもう一つ問題を書いた。だが俺の気はもうそちらへは 向かない。元々が諦めてるのに、気になることがあったら集中なんて出来る わけがない。

「冬哉。うわの空だぞ。またやる気にさせないとダメか」
「だっダメだって。あれされると解けるのはそのときだけで全然頭に 残ってないんだもん」
「じゃあちゃんとやれよ」
「うっ、うん」
 一応試験だから勉強しなくちゃならないって頭はある。 諦めててもやってると安心するのだ。


 でも‥でもやっぱりダメだった。

「ダメ、やる気出ない」
「冬哉‥」
 狼帝はため息を一つ付いた。
「冬哉、さっきのは冗談だ。今日は俺は途中で止まれない。だからやる気 にはさせられない」
「さっきからそれが気になってたんだよ。なんで? 珍しいよね、 狼帝が欲求不満なんて」
「お前なんか勘違いしてるぞ。俺はいつでも欲求不満だ。神や仏じゃなくて 男だからな」

 えっ、そうなんだ。堅物だと思ってた狼帝からの言葉に俺はびっくりした。
「いつでもお前を抱きたいと思ってる」
「いつでも?」
「そうだ」
 んー‥、でも普通この歳なら当然か。俺だってほぼ毎日抜かれてる わけだし。それがないと当然欲求不満になっちゃうわけだし。

「だからそんなふうに誘うなよ」

 少し思い詰めたような顔で俺の制服のボタンを外す。身体の真ん中を 素肌にすると胸が見えるようにシャツを開く。
「ここも俺を誘ってるのか」
 そう呟きながら胸の尖ってるところを摘む。
「ぁんっ‥」
 狼帝の匂いに感じていた俺の胸は既に情報を収集できる状態になっていた のだ。
 俺の反応が良かったためか、狼帝の手はそのままズボンの中に入ってきた。
「こっちも誘ってるな」
 だっだって、摘まれた拍子に勃ち上がっちゃったんだもん。

 狼帝は少し苦笑し、俺はベッドを分断するような位置で寝かされた。 そのときにはもう下半身は何も付けておらず、残っているのは靴下だけ だった。

 仰向けになって膝を立てて足を開かれる。ベッドの下に座ってる狼帝に そこを見つめられる。俺は恥ずかしくなって両手で前を隠し、膝を閉じた。

 すると狼帝は立ち上がると何かを取ってきた。
「冬哉、俯せになれ」
 言われた通りにすると俺の両手を紐で縛った。
「なっなんで?」
 2人でするときに縛られたことはない。
「その方が感じるんだろ?」
 うっ、それは否定できない。手が拘束されると、刺激をどうあっても 受けるしかないわけで、そう思うと酷く興奮する。
 でも狼帝はそれが分かっていたのに、今までしなかったことをなんで 今日はするんだろう。

 両手を下敷きにしてまた仰向けに戻された。そして初めと同じ形になった。
「冬哉の方が欲求不満みたいだぞ」
 縛られて興奮してしまった俺のモノは着実に準備を整えていた。 でもそこはすぐには触れられなかった。両足の膝裏を持って広げて押された。
 狼帝の顔の真ん前に自分の秘所をさらけ出す。またそこを視姦される。

「まだ何もしてないのにもうヒクついてるぞ。こんなとこまで俺を誘ってる のか」
 俺の前が脈を打つたび後ろの口は力が入る。それが繰り返されてヒクヒクと 動いてしまう。

「や‥、そんな見てないで」
 狼帝はとにかくイかすことが一番だと思ってるから、いつもはすぐに前を 扱いてくれるのに。虎王先輩は我慢させるのが好きだけど、そう言うところ は両極端なんだよね。俺により多くの快感を味合わそうとしてるのは二人 とも一緒なんだけど。


 焦れったくて腰を振ってしまうほど眺めていた狼帝は、俺がもう一回声を 出す前にそこを舐めた。
「ヒャッ‥ろっ狼帝、汚いって」
 俺が言ったことなんか耳に入ってないのか、狼帝の舌は怪しく蠢く。 いつも潤滑剤を使うのでそんなところは舐められたことがなかった。 初めてされることは興奮する度合いが違う。
 舌が穴の中心を狙って突く。どうしても力が入って抵抗してしまう。 すると舌は違うところも這いずり回る。尻の肉付きがいいところから、 開かれて筋が立ってる付け根まで。

「あっ‥、んん‥ふ‥」
 くすぐったいような何とも言えない感触が気持ちいい。どんどん体から 力が抜けていく。
 それを見越したのか再度舌は中心を目指してきた。ギュッと窄まった縁を 尖らせた舌で撫でられる。
「あんっ、早く‥中に」
 いつものようにすぐにイけるほどの刺激が得られなくてついねだって しまう。だっていつもはいらないって言っても容量オーバーなほどくれる のだから。

 狼帝は俺が数回ねだるまでそれを止めなかった。ほんとに狼帝の方が 欲求不満なのかと疑問に思うほど焦らされた。やっと指が入ってきた頃には 焦らされ過ぎてグッタリとするくらいに疲れていた。

 それでも中を擦り上げられると身体は震える。さっきよりも強い刺激に 一旦身体は満足する。

 でも狼帝は焦らすことを止めない。二本に増えた指は、ゆっくりと、 本当にゆるゆると出入りを続ける。まるで指は意志を持って絡みつく 柔らかさを満喫してるみたいだ。
 あまりの焦れったさに自分で腰を振って中に入ってる指に内壁を 擦り付けてしまう。

「ん‥ん‥。狼帝、早‥く」
 腰を振りふり請求する。
 まだペニスには触られていなかった。それがもう耐えられない。 先走りを滴らせてそこに刺激がくるのを待っているのに。 いつもの狼帝は必ずそこに快感をくれるのに。

「ね‥狼帝‥ったら」
 もう一度せっつくと俺の腰は浮いてしまった。
「あぅっ」
 狼帝のもう一つの手はペニスを通り過ぎて俺の胸を摘みに来たのだ。
「こら、冬哉。締め付けるな」
 そっそんなこと言ったって。狼帝がキュッキュッと摘むたびに下半身にも 力が入る。それは俺がしているわけじゃなくて、反射神経が反応してる だけなんだから。

 かなり長い時間そうされてた。もう俺は何度願ったか分からない。 もっときつい刺激が欲しい。いつも無茶なくらいに強い快感に晒されている ので、それくらいじゃイけない。
「冬哉、足りないか」
「うん‥、前‥も」
「でも今日は俺が先だ」
 そう言うと狼帝は、とうとう前には一度も触れずに自分のモノを 突っ込んだ。

 両手で俺の足を押さえつけたまま抽送を始める。指からもっと太いものに なってまた俺の身体は一旦満足する。今日は一段一段と登るのに酷く時間が かかる。
 でも最後を見ないことには完全には満足できないのだ。


「冬哉。お前の中はなんで‥こんなに気持ちいい‥んだろうな」
 狼帝は少し荒い息で、いつもと同じ様でいて、ちょっと違うことを呟く。 狼帝はペニスを挿入したときは必ずと言っていいほど俺の中はいい、と言う のだ。
 そう言われると誉められてるような気分になって、もっと俺の中で 気持ち良くなって貰おうとか思ってしまう。まあその頃には大抵こっちも イきそうになってるんだけど。結果、俺は狼帝の分身を締め付けて緩めろ って言われてしまうのだ。

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