先へ飛びたい方用  4話


男かよ!−1

 何という訳じゃなく、フッと目が覚めた。充分に寝た気がするのでもう朝なのだろう。すぐに目に入ったのは天井。どう見てもラブホな感じ。隣で裸の背中が寝てる。うーん。

 昨日の晩のことは思い出せない。確か春休みが終わって大学も2年になり、久し振りに学校が始まったので、コンパでもやろうと言うことになって、強くないくせに女の子に乗せられて一気飲みを何度かした。大学へ入ってからは飲むことが多いから、そこそこ飲めるようにはなってきたけど、やっぱりまだ弱くて。うーん‥。
 たしか‥吐いたな。
 けど女の子の前ではそんな格好悪い所は見せられないから、トイレで吐いて戻ってきた所に再度飲まされて、そう、そこから記憶がないのだ。うーん。

 けど、ラブホへ来てるくらいだから、女の子はゲットしたんだよな。誰を狙ってたんだっけ。う〜ん。
 名前を思い出せないことには呼べない。でもまあ、泊まった次の日なんて誰だったか忘れてることが多いから、大抵は名前なんて呼ばないんだけどね。もしも間違っていたら揉め事になるし。
「お姫様」
 そう呼んで後ろから抱き締めた。ちなみに呼び方はその時で色々。ハニー、だったり、女王様、だったりね。
 んんっ。柔らかいはずの胸が‥ない。顎を乗せた肩が尖りすぎてる気がする。恐ろしくはあったが、胸の手を下の方へ伸ばしていく。
 うそっ! なんか余分な物が付いてる!!
「とっ、冬哉先輩?!」
 もしも冬哉先輩なら狼ちゃんに死ぬほど怒られる‥。けど先輩、俺となんてお泊まりしない‥よな。それに冬哉先輩よりも一回り小さい気がする‥。
 う〜んと転がってこちらを向いたのは、なんと全然知らない男だった!

 ガーン、大ショック。

 俺ってば女の子大好きで、女の子に関しちゃちょっとしたもんで、絶対女と男を間違えるなんてコト無いのに。
「冬哉先輩って誰?」
 起きあがってきたのはまだ子供でショックが倍増する‥。中学生? これって犯罪?
「なあ、お前って正真正銘の男? 身体は男だけど心は女とかじゃない?」
「なんだよ、今さっき触ったろ。おまけに昨日だって散々やったじゃないか。俺のだってムチャクチャ触ってくれて‥。初めてだよ、一度で4回も出したのなんて」
「って、ムリヤリ? した?」
「う‥ううん‥。そう‥じゃない、けど‥。でっでも、胸をこんなに触られたのって初めてだった。今ちょっと痛いもん」
 弄られすぎて赤く腫れてるそこはやっぱ俺が触ったってことか。
 はぁ、照れたその顔はお互いにノリノリだったってことかよ。俺もこのスッキリした感じ。相当の回数をこなしたと思われる。まあ、見てくれは結構可愛い部類だし、酔ってたから気にならなかったんだろうな。

 普段なら泊まりでラブホって言うと、吐き出し量がいっつも足りないので、朝からもう一戦交えるんだが、男だと思った時点でガッツリ萎えた。
「はぁ‥。男、男抱いたんか」
「なっ、なんだよ。そんなに男がショックなんかよ。おまけに気になるのはそこだけかよ」
「そりゃもう、ショックどころか爆死ってくらい」
「けど、さっきの言い方だと心は女だったら身体は男でも問題なさそうだったじゃん」
「ん? 身体はね、入れさせてくれるなら男でも全然イイ。むしろアナルは好きだから。でも俺は女の子好きなの。これはプライド持ってるの。だから心が女なら許せるって言うか問題ないの。分かる?」
「あんま‥よく、分かんない。だって、男の扱いだって慣れてたし。オカマと付き合ってるってこと?」
「俺はね、いっとくけどもてるの。女に不自由したことないの。その俺がお前みたいな男のガキを抱いたってコトが問題なの。だからどっかに救いを求めただけ。お前がオカマならむしろ問題ない」
「さっき言ってた冬哉先輩、ってのがオカマなの?」
 ズバッと直球かよ。子供は単刀直入で歯に衣着せないなぁ。

「冬哉先輩はしっかり男だよ。男前な男。でも可愛い」
「そんならなんでその人は抱けるんだよ。いきなり名前読んだってコトはそう言う関係なんだろ?」
「あの人は別格。俺の神だから」
「なっなにそれ。神様を抱いちゃうわけ?」
「そう、聖域を穢すのって男なら憧れるでしょ」
「‥酷い奴」
「それは違う。全身全霊を掛けて、天国へ導く。そう、元いた所へ。神はこの時しか帰れない」
「危ない宗教にでもはまってるの?」
「分からなくても別にいいから。俺、シャワー浴びてくる」
 はぁ、ホントにマジかよ! って叫びたいほどの衝撃。なんでラブホで朝から男の顔見ないといけないわけ。はぁ、これなら狼ちゃんに殺されても冬哉先輩だったらよかったのに。しっかりもう一戦やって、冬哉先輩を盾にして帰るのになぁ。

 ガキは素っ裸で出てきた俺の身体を凝視する。
「凄い、大きいね。俺、こんなの初めて。もっかいヤらない?」
「これね、自慢の一物だけど、もっとデカイ奴いるから。あそこまで行かないと満足させられないんだよね。だからやりまくってもっと育てないと。でも男とはやらない。勃たないから」
「しゃぶってあげるから、ね?」
「お前は一体何処の風俗嬢だ。誰とでも寝てるんじゃないぞ。それじゃ、俺、帰るから」
「エッ? エエッ?」
「ああ、心配しなくてもホテル代は払っておくから。そのまま寝ていろ。じゃな」
 俺のモノを喰らって無事なわけがないガキは腰が怠そうだったから、寝かせておいてやろうと思ったのに。もう一戦なんてやれるはずがない。

「ちょっちょっと待ってよ。俺が誰とか気にならないの?」
「お前が男だってだけで充分ショックだったよ」
「どうしてこうなったとか、聞かないの?」
「お互い楽しんだんだからそれでいいだろ」
「あんたって、女以外は頭も使いたくない?」
「おお、よく分かったな。偉いぞ。俺は女の子のことで頭が一杯なの」
 ひらひらと手を振った俺に叫ぶガキ。

「鷹神! 俺、また抱いてもらえるように遊びに行くから。それからガキじゃない。俺は今度高2で、名前は‥」
 まだ叫んでいたけど、ドアを閉めたら聞こえなくなった。
 ほんとショックで倒れそう。今から冬哉先輩呼び出して、気分転換しようかな。
 しかし、俺の名前を知ってたってことは、向こうが狙ってたってことか?
 けど、二度と男には手を出さない。 きっと冬哉先輩と間違えてたんだろうな。うっすらと甦った記憶では先輩くらいに乳首弄って喘がした‥気がする。先輩はずっと触られて鍛えられてるから、多少弄っても大丈夫だけど、いきなり同じくらい触ったのなら、痛かったかな。
 ま、いっか。向こうが寄ってきたのなら。

 あ〜あ、もてる男は辛いなぁ。
 でもどうせなら女の子にもてたいなぁ。ハァ‥。

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