男かよ!−2(男だよ!)

「おい、総長来てるらしいぞ」
 体育館裏でダベってた2年機械科の主要メンバーが全員立ち上がってダッシュする。
 俺たちが1年生の時の3年で卒業生なんだけど、すげぇ格好いいんだよね。見上げるような身長で、誰も敵わない破格の強さ。それなのに全然威張ってなくて、ごく普通。
 俺たちにも気軽に話しかけてくれるし、うちの工高ってだけで庇ってくれる。下級生はみんな憧れていたと言っても言い過ぎじゃない。それくらいに強くて格好良かった。

 情報を持ってきた奴の後を付いていくと、総長はなんと職員室にいた。
 全員で2列に並び、出てきた総長を出迎える。
「チワッス」
 学ランの集団でまるで応援団みたいだが、自然とこうしたくなるんだ、総長といると。

 総長って言うと超が付くヤンキーか、極道に近い人を想像しちゃうと思うんだけど、うちの総長はちょっと違う。本当に見てくれは普通。背が高いから目立つは目立つけど、名前だって総長よりも兄貴の方が有名だったくらいに自分からは出ていかない。こんな人が総長を名乗っていて務まるのかな、と最初は不思議で心配だった。

 でもね、違うんだ。ケンカになるとすげぇの。もうその凄さったら、国語が苦手な俺じゃ語れない。
 他の総長を知らないから何とも言えないんだけど、漫画とか見てるとさ、特攻隊みたいなのが最初に突き進むわけじゃん。当然だけど、最後まで守られていて出ていかないのがトップでしょう?
 それがうちの総長は真っ先に飛び出ていって、手招きするんだよね。向こうの幹部クラスを。向こうだって、下っ端は敵わないことが分かってるから手出ししないし。
 ヘタすると総長だけ戦って終了ってなこともあるくらい。まあ、族同士のケンカもそんなにないんだけど。うちの姫龍は最強だから。
 ケンカしてる時のギラギラしたオーラ。それは殺人鬼と言われてもおかしくないくらいに、キれまくっていて味方でも怖いと思うんだ。
 「俺、逝っちゃっていい?」って台詞が出たらもうダメ。誰にも止められない。超絶好調。それがまた格好いいんだ。

 俺はサッカー部所属で、俺を可愛がってくれてる部の先輩が、総長の一番の友達で、実はその先輩は自分の親友がこの辺を治めてる族の総長だって知らない。だってこれは極秘事項。いわゆる「ワル」って奴しか知らないのだ。先輩はいい人で、不良とかヤンキーとかとは全然無縁。普通科に行った方がよかったと思うんだけど、就職したかったんだって。電気科なんだけどね。一番の花形職業の電気工事士になっちゃった。難しいのに、さすがだよ。
 俺んちはスナック経営でさ、まあ、ガキの頃から酒やタバコや女も経験済みって感じ。それでワルへ入るのも抵抗なくて、しかもツテは沢山あったから簡単だった。
 で、先輩が無縁のワルにまでなっちゃって、その先輩と一緒にいたから俺もすぐに覚えてもらえたんだ。

 あ、内緒なのにそんな風に出迎えたら、バレバレだって思うでしょ? でも、誰がどう見てもうちの学校を仕切ってたのは総長だし、空手部の主将も兼ねてたし、その辺は問題ないんだ。自動車クラブにも在籍してたけどね。自分の単車は自分で弄るのがいいんだって。
 俺もいつかは総長が乗ってるカタナに乗ってみたいんだけど、デカイから無理かな。だって今乗ってる125でも400と間違えられるもん。
 残念ながら身長は164センチしかなくて。もひとつ残念なことに、もう伸びないみたい。
 でも兄姉とその先輩しか乗せないって言ってた後ろに特別に乗せてもらえたから、それで結構満足しちゃってるんだけど。

 総長と一緒に先生まで出てきて、俺たちに小言をひとこと。
「お前ら、授業もそれくらいビシッとして聞けよ」
 もう、みんなで苦笑いするしかないよ。
 余りにも大勢なので近くのファミレスへ移動した。みんなが総長に近況を報告したくてたまらない。
 でもここでの呼び名は主将。もしくはリーダー。間違えでもしたら、先輩連中からキツ〜〜イヤキが入る。みんな一度は間違えて呼んじゃって殴られてる。身体の芯から教え込まれているから、外へ出てきたら滅多に間違わない。
 一緒については来たけど、2年は話すことは出来なかった。3年が話して終了。やっぱ先輩には逆らえない。あ〜あ、残念だなぁ。なんて思っていたら総長は俺の先輩、イコール総長の親友と会うと言うので一緒に行くかと声をかけてくれた。やったぜ!

 居酒屋で飲むぞ、と言われて着替えて再度合流する。俺は会話には余り加われなかったけど、石川先輩も大好きだし、総長も大好きだし、一緒にいるだけで嬉しかった。先輩も卒業してからは初めて会えたし。仕事してるってだけで俺とは違って大人って気がする。
 居酒屋でお腹一杯食べたら、次はカラオケ。3人なのですぐ番が回ってくる。先輩とはよく行ってたけど、総長の歌は初めて聞いた。結構上手くて俺の中で総長の株はどんどん上がっていく。女にももてるだろうなぁ。なんて思っていたら、全然興味ないんだって。勿体ないなぁ。シスコンって言ってるけど、お姉さんは彼女とは別だもんね。
 そう言えば先輩も女作らないし‥。
「もしかして主将と先輩って出来てるとか?」
 だってさ、そう言いたくなるくらいに仲がいいんだ。こんなに仲いいのに、総長だってばれてないってのも凄いんだけど。石川先輩‥ちょっと抜けてるとこあるから。でもね、本人はそれに気付いてなくて、俺のことも総長のことも守ってくれてるつもりでいるんだよ。ほんっといい人なんだ。
 思い切り冗談だったのに、先輩は飲んでいたウーロン茶を吹き出した。
 なっなんだろう。この反応。聞こうと思ったら、総長の目が光った気がした。きっ、気のせいかもしれないけど、マジだったらすんげぇ怖いから、突っ込めないよ。

 雰囲気が白くなった丁度その時、総長の携帯が鳴った。
「兄貴? えっ、違うの? 誰? うん、そう。全く兄貴はしょうがないなぁ。分かった、今からすぐに迎えに行きます」
 携帯でそれだけ話すとすぐに切る。
「悪い、ちょっと兄貴を迎えに行ってくる。すぐ近くだから、連れて帰ってくるから待っててくれる?」
「おお、いいよ。鷹神先輩どうしたの?」
 石川先輩は総長とは中学から一緒だから、総長の兄貴もよく知っている。俺もサッカーの試合で見て、格好いいなぁって思ってはいたんだけど、俺の場合はそれだけで。
「なんかね、珍しく飲んで潰れてるみたい。いつもは女の子を酔わせることに燃えてるのに。何を失敗したんだか。あんなデカイの、誰も担げないから行ってくるよ」

 総長がいなくなってから、さっきのことを先輩に質問する。
「ね、先輩ってマジで主将と出来てるの?」
「バッ、バカだな。お前。んなことあるわけないだろうが。俺と龍将は友達だよ。それ以上でも以下でもない」
「でもさっきの慌てようって疑いたくなるよ」
「ちっ、違う‥。‥う‥ん。お前にだけ正直に話すと、すこ〜しだけ友達以上かもしれない」
 先輩はそれ以上はどんなに聞いても頑として教えてくれなかった。ちえっ、総長とだったら俺が関係持ちたいよ。いいなぁ、なんかあるのかなぁ。
 実は俺、どっちでもいけるんだよね。女もいいけど、男もいいんだ。

 歌も歌わずにそんな話しをしていたら、ほんとにすぐ総長はお兄さん、鷹神先輩を連れて帰ってきた。
 総長は男っぽいけどマッチョじゃなくて筋系の兄貴って感じ。そのお兄さんの鷹神先輩はマジで色男。確かに兄弟というだけあって総長とも似ているのに、どうしてこんなに雰囲気が違っちゃうのだろうか。
 ソファーに寝かされた鷹神先輩を観察していたが、顔色の悪いことが気に掛かる。
「大丈夫なの?」
「うん、きっと大丈夫。うちの家系って別にアルコールに弱い訳じゃないからさ。俺と美姫ちゃんは飲めるし。ちょっと寝かせておけば肝臓が働くよ」
 総長にニコッとされると、全部が大丈夫だと思えてくる。本当に不思議。どうしてこんな少年みたいなのに総長なんだろう。バイク屋へ就職した総長は未だ引退せずに総長でいる。
 総長の言葉にすっかり安心して、一時間ほど歌いまくった。
 一時間経ってそろそろ終了時間かってとき、鷹神先輩はムックリと起きた。
「龍?」
 そう言われてドキッとした。

 鷹神先輩は弟がいることに安心したのか、おもむろにリモコンに手を伸ばし、知っているのか番号を押す。
 掛かった曲は森山直太朗のさくら。
 酔っぱらっていたくせに、信じられないほどの熱唱。
 直で声まで聞いたことなかったけど‥、なに‥これ?
 腹の底に響いて、そこから腰骨まで直撃する。腰骨から尾てい骨までが振動し、性感帯に響き渡る。
 腰にクる声。それがこれ。
 立てないほどの衝撃で、魂が抜けたようになってソファに沈み込んでしまう。
 いつの間に終わったのかも分からなくて、鷹神先輩に肩を抱いて耳のそばに口を付けて囁かれて正気に戻る。
「抱かせて‥。ヤりたい」
 う゛あっ。ダッダメだ。
 なに、この声。
 きっと俺はこの時、あっさりと落とされていたんだと思う。ううん、歌を聞いた時点でもうとっくに落ちていたのかもしれない。

「ああ、気にしないで。兄貴、きっと女の子と間違えてるんだと思う」
 普段ならどうして俺が女なんだよ、って心の中で突っ込んでる所だけど、この時は俺を欲されていないんだと言うことの方が気になった。
 もの凄いさくら独唱(でも演奏付き)を最後に店を出る。単車に乗るよ、と言う総長にホテルに行くと踏ん張ってきかない鷹神先輩。この姿だけみたら、全然酔ってないみたい。総長によると泣き上戸とかあるけど、鷹神先輩はシャキッとするんだって。変なの。それで突然倒れるから始末に負えないんだって。
 そして俺の肩を抱いて、ホテルに向かって歩き始めた。行くなんて返事してないのにー!

 暴れる俺と慌てる総長と石川先輩。なんで先輩、そんなに慌ててるの?
「兄貴、ちょっと起きてるの! 今の相手は男だよ、男。分かってる?」
「鷹神先輩、こいつは可愛いけど男です。しっかりして下さい」
 男、男ってうるさいなぁ。男でなんか悪いの? って聞きたくなる。そんなに女が好きなら男は相手出来ない? 一回試してみる?
 なんだかみんなから俺の存在を拒否されてる気がしてムカムカしてきた。それでつい、挑戦的になっちゃった。
「鷹神先輩、いいよ。ホテル行こう」
「おし、そう来なくちゃ。思い切り可愛がってあげるから」
 身体を擦り付け、あの声で耳に響かせる。
「おい、なにをヤケになってるんだ。お前は男で、鷹神先輩も男なんだぞ。お前までいつの間に酒を飲んだ。酔っぱらってるのか」
「分かってるよ。分かってるけど、男だっていいじゃん」
「なにお前、いじけてるの」
「だって、男、男って。男でなんか悪いの?」
「はいはい、ウダウダはこれで終了。お前ら解散ね。俺はこれからやりたい放題」
 俺の肩から手を離さない鷹神先輩はとにかく早くヤりたくてしょうがないみたい。

「仕方ないなぁ。ちょっとジッとしててよ。動かないように」
 総長はそう言うと、左足を一歩引いた。
「はっ」
 短くかけ声を掛けるといきなり鷹神先輩に後ろ回し蹴りを喰らわせる。
 ウヒャッ。
 首を竦めたけど、早すぎてそれ以上の反応が追い付かない。動かないようにって、動けないよ。
 だけどその足は鷹神先輩の鼻先をギリギリ掠めただけで、通り過ぎる。そのまま回転して第2弾が放たれる。次の足は顔があれば真横の位置で止まった。
 うっ、うそ‥。凄い怖くて凄い早かったのに、鷹神先輩は確実に当たらない所へ移動していた。凄い、いつの間に‥。ちょっと離れた俺の身体をまた引き寄せる。
 けど総長。マジで格好いいなぁ。今の蹴りなんてほれぼれしちゃうよ。
 足を上げたままで止まっていた総長は、ちょっと顔を斜めにして息を吐いた。
「大丈夫。ベッドへ行ってもそのまま寝ちゃうと思うから」
 普段なら絶対蹴らない、って分かってるから微動だにしないんだって。本能で避けたと言うことは、理性がないってこと。総長は蹴るつもりの早さだったのに、酔っぱらいに避けられるなんて、って嘆いてるし。それって変じゃない? 絶対蹴らないんでしょう。

「じゃあ、悪いけど兄貴を頼むよ。一晩寝たら、きっとなんにも覚えてないと思うから。俺の名前を出せば理解すると思う。って言うか、男相手なら気にしない‥かな」
 まっ、また男だからってバカにして。こうなったら絶対関係持って、絶対覚えてもらうから。
「ちょっちょっと待てよ。鷹神先輩だぞ。万が一ってこともあるだろう」
「やだな、政史(まさし)。まだ兄貴がケダモノだって思ってるんだ? でも、あの頃だってムリヤリはしたことないよ、これでも一応はさ。それに節操なしだけど、男には手を出さないから」
「そっそうかぁ? ほんと大丈夫か?」
 えっ、石川先輩がそんなに心配するほど鷹神先輩って危ない人なの?

「大丈夫だって。俺のこと信用出来ない?」
「そりゃ、お前なら信用してるけど‥。鷹神先輩は‥ちょっと」
「あ〜あ、素行が悪いと中々信用してもらえないなぁ。全く兄貴も少しは控えてよね。だけど本当に高校に入ってからは問題起こしてないし、大学も兄貴の救いの神と一緒だしね」
「わ‥かった。龍将がそこまで言うなら信用する」
「そんなわけで兄貴のことお願いね」
「ハイッ! 任せて下さい」

 やったね! 総長からお願いされちゃった。
 総長の兄貴ってのも格好いいし、その相手になれたら凄くいい気がする。なんと言ってもこの声をずっと聞いていられるのだから。

 かなりドキドキしながらホテルへ入る。総長の言った通り、部屋に入ると鷹神先輩はベッドを見るなりなだれ込んだ。ダメだ、そのまま寝ちゃう。
「ね、ちょっと、鷹神先輩。ヤりたかったんじゃないの」
「んん? そうそう、ヤりたかった」
 俺の手を引っ張ると自分の横に寝かせる。何故だか後ろを向かせると、後ろから抱き締めてきた。そのままシャツをめくり、両手で素肌を触る。そして胸を抱くと男なのに乳首を摘まれた。
 ん‥っ。ドキドキしてたからその手から凄い刺激を感じてしまう。鷹神先輩はそこがイイと思ったのか、両手の指を動かすだけで、身体は動かさない。
 ヒーッ、俺‥胸だけでイっちゃいそう。
 その行為は本当に長くて、耐えられなくなった俺は震える身体になんとか力を入れて、身体を反転させた。

「鷹神先輩‥」
 名前を呼んだ所で絶句した。先輩は寝てたのだ! 寝たまま俺の胸だけ弄ってた。ひっ、酷い。1人だけ悶えさせておいて、自分は寝てるなんて。
「鷹神先輩」
 ゆさゆさと揺すって起こす。
「んっ、頼むから寝かせて‥」
「やだ、鷹神先輩とヤるんだから」
「先輩は違うでしょ。俺は鷹神。先輩」
「鷹神‥先輩?」
 区切りが変で聞き返す。
「だから先輩って変でしょ。鷹神でいいから」
「た‥鷹神?」
「そうそう、鷹神。寝かせてくれないなんて、珍しく積極的。それならとことんやるよ。いいんだね、後悔しない? 後からイヤだって言っても取り消しは聞かないからね」
 眠気より性欲が勝ったようで、鷹神‥は本格的に手を伸ばしてきた。

 まず俺を後ろに向かせるとそのまま服をはぎ取った。そして後ろ手にベルトで縛る。鷹神の格好はVネックの長袖カットソーとワークパンツに穴のないベルト。バックルだけで挟んで止めるタイプなので両手も縛って止めれちゃう。
 俺だけ裸に剥いて、鷹神は上に着ていたベストを脱いだだけ。ヤダ‥、石川先輩が心配していたように、鷹神って危ない人だったのか。それでも不思議なことにちょっと危なそう‥って状況がもの凄く煽る。俺もこんなに感じたことはないってくらい感じちゃった。
 ほんとにもう、そりゃ凄くて、ちょっぴり後悔しちゃったよ。男とは4人やったけど、こんなに激しいのも、回数こなすのも初めてだった。そんでもってこんなに胸を弄られたのも初めてで、擦れて腫れたよ。おまけにあのデカさって違反だよね。腰が立たない。
 その違反の大きさで突っ込んだまま抜かないんだもん。ずっと串刺しにされっぱなしで、もうどこをどう感じたらいいのか。その状態であちこち弄られたら、死にそうだったよ。余りの凄さに今もまだ中に鷹神が入ってるみたい。
 なのに朝起きたら、総長の言った通り、ほんとに何にも覚えてないんだもん。超ビックリ。
 男は嫌だとかダメだとか言っておきながら、とーや先輩とやらはしっかり抱いてるし。神ってどういうことなんだよ。
 突っ込んだことにも答えず、鷹神はシャワーを浴びて出てきた。

 抱かれているときにももちろん思ったんだけど、こうして裸を見ればよく分かる。イイ身体してるのは服の上からでも想像できた。でもあそこのデカさはこうして見ないと分からない。
「凄い、大きいね。俺、こんなの初めて。もっかいヤらない?」
 腰は怠かったけど、でもここで逃したらいけないような気がして。
「これね、自慢の一物だけど、もっとデカイ奴いるから。あそこまで行かないと満足させられないんだよね。だからやりまくってもっと育てないと。でも男とはやらない。勃たないから」
 なんだよ、勃たないって。夜通し立派に勃ってたじゃないか!
「しゃぶってあげるから、ね?」
 男の‥ってあんまり咥えたことないけど、なんか必死になっちゃった。
「お前は一体何処の風俗嬢だ。誰とでも寝てるんじゃないぞ。それじゃ、俺、帰るから」
 思い切り呆れた顔をして鷹神は背を向けた。
「エッ? エエッ?」
「ああ、心配しなくてもホテル代は払っておくから。そのまま寝ていろ。じゃな」
 そんなこと心配してないってば。
「ちょっちょっと待ってよ。俺が誰とか気にならないの?」
 一度も俺が誰なのか聞かないし、気にもしない。どういう人なんだ、鷹神って。
「お前が男だってだけで充分ショックだったよ」
「どうしてこうなったとか、聞かないの?」
「お互い楽しんだんだからそれでいいだろ」
「あんたって、女以外は頭も使いたくない?」
「おお、よく分かったな。偉いぞ。俺は女の子のことで頭が一杯なの」

 うそぉ。もう、普通は誰だっー? って驚かない? そんなに興味が持てない身体だった? とうや先輩って誰? 神って総長が言ってた救いの神ってこと?

 聞きたいことがいっぱいあるのに、鷹神はヒラヒラと手を振って、ドアを開ける。
「鷹神! 俺、また抱いてもらえるように遊びに行くから。それからガキじゃない。俺は今度高2で、名前は龍二(りゅうじ)! 覚えてね」
 出ていく背中に必死で叫んだけれど、ドアを閉められて名前まで聞こえたかどうかは分からない。

 悔しすぎて闘志が漲る。でも総長の兄貴だし、連絡は取ろうと思えばいくらでも取れる。
 あれだけ抱けたんだから、俺だっていいじゃん。
 この名前、総長に似てるでしょう? 一度聞けば印象だって深いはず。
 絶対、今度は正気の時にやってみせる。

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