今日は高校の卒業式だった。俺たちは2年生だし、そんなに関係なかったんだけど、虎王先輩に続いて美姫さんも卒業してしまって。なんだかやっぱり卒業式ってちょっと寂しいよね。 狼帝は生徒会の方で仕事が残ってるらしくって俺だけ帰ってきた。 都築の家の前を通る。バイクも車もある。もしかしたら先輩がいるかも、そう思ったらそのまま家に上がり込んじゃった。 「お邪魔します」 いつものように声だけ掛ける。そして勝手に2階へ上がる。でもおばさんの返事がないから今はいないのかな。 先輩の部屋の前でノックしてみた。 「先輩、いる?」 「おう、冬哉か。入ってこい」 やった。先輩居た。 最近の先輩の周りはめまぐるしく変わっていた。実業団から誘いがあってその合宿に参加するというのだ。それは監督に気に入られたら1ヶ月は帰ってこないと言うことだった。 早く帰ってきて欲しいけど、この先輩が監督の目に留まらないなんて、そんなことがあっていいはずがなく。当然のように気に入られて正規の選手を蹴落とすくらいに活躍して欲しい、って思いも目一杯あって。 とっても複雑な気分でいたところ、今日の卒業式でトドメを刺された感じ。 そう、俺は寂しいのだ。先輩と身体の関係を持ってから3日と会わないことは無かった。それが1ヶ月も会えないなんて。俺‥耐えられるんだろうか。 「今日は卒業式だったんだろ? 美姫におめでとうと言ってやったか」 「うん‥。美姫さん、他の女の子がみんな揃って泣いてる中で1人だけ笑顔を振りまいてたよ」 「ふふっ、美姫らしいな。で、どうしたんだ。昼もまだだろう」 「う‥ん」 「何だ、珍しいな。冬哉でも思い悩むときがあるのか」 「ひっ酷い。俺だって人並みに考えるんだからね」 「そうか、それは悪かったな。でも俺はお前が悩んでるのは2回しか知らないぞ」 「えっ‥」 「1度目はオナニーするかどうか。2度目は自分が淫乱かどうかだったな。どっちにしろ、冬哉はエッチなことでしか悩まないって事だな」 ニヤリと楽しそうに笑う先輩。バレーが大好きな先輩はこの新たな挑戦が嬉しくて仕方ないのだ。 「まず昼でも食うか」 先輩はそう言って俺を従えてキッチンへ移動した。 おばさんの作り置きのカレーを温め、おかずにコロッケをチンする。なんか先輩がキッチンで動いてるなんて、貴重なものを見てしまった感じ。でも手先だって器用な先輩は作らせれば料理だって上手なのだ。おばさんはそんなことさせないんだけどね。 中学の時、男バレの夏の合宿で先輩はカレーも肉じゃがも、代表的な料理は何でも作っていた。普段やってないけど、1年生の時に食事当番になったので料理の本を見て覚えたんだって。先輩の頭って一度覚えたら完璧だから。 それがまた美味しくって。だから合宿の時はいつも食事当番だったのだ。男しか先輩の手料理って食べたこと無いから、女の子達に凄い羨ましがられちゃった。 「ほら、冬哉。ボケッとしてないで食べろ」 俺は不器用だから手伝うと逆に邪魔になる。待ってろと言われ、ただ座って待っていた。先輩がカレーを運んでくれて、食べろと言われて我に返る。 「うん、いただきまーす」 おばさん、料理うまいんだよね。寂しいとか言ってたのにぺろっと食べちゃった。あーあ、俺って現金。 先輩と2人でご飯食べるなんて凄く久しぶり。いつも狼帝が一緒だし、3人とか狼帝と2人とかはよくあるんだけどね。 でも先輩‥いなくなっちゃうんだ。 後片付けは一緒にやって先輩の部屋に戻る。寒いからこたつに入る。 「先輩。いつから行っちゃうの」 「ああ、合宿か。明日からだ」 「ええっ、あっ明日。じゃ、今日会わなかったらそのまま行っちゃうつもりだったの?」 「いや、そんなことはない。狼帝と一緒に帰ってくると思ってたからな。でもあいつは役員だったな」 俺のことも先輩の頭の中にあると知ってちょっと安心した。 「それで何を悩んでるんだ」 「えっ」 安心して思っていたことが一瞬抜ける。 「なんだ。そんなどうでもいいことだったのか」 言っちゃおうかな、どうしようかな。 「やっぱり冬哉はエッチなことしか考えてないんだな」 「ちっ違うもんっ。もう先輩意地悪だからいい」 俺はこたつから立ち上がると帰りかけた。 「冬哉、止めて欲しいか。そのまま帰りたいか。どっちだ」 うっ、先輩はちゃんと言わないと何もしてくれない。先輩自身の意志は意地悪するとき以外はあまりないのだ。 「と‥めて、ほしい」 「戻ってこい」 命令されて、先輩の目の前に戻ることが出来た。こういう時は先輩の大きさを感じる。偉そうな役を自ら買って出る。そしてその相手は命令されたからと、言い訳が出来る。それは即ち先輩が全責任を負うと言うことなのだ。 周りから見てるとやたらと先輩が威張ってるようにみえるらしいけど、本当は凄く気を配ってくれてるんじゃないかと思う。先輩といるととっても楽なんだもん。 と言っても俺も最近ようやく気が付いたんだけどね。今まではそこまで頭が回らなかったから。 立ち上がった俺を座ったまま見上げた先輩が言う。 「お前も随分大きくなったな」 「でも2年になってからは全然伸びなかった」 「そうか」 「うん、1年の時は8センチも伸びたのにピタッと止まっちゃって」 「制服‥着てみるか」 先輩はそう言うとタンスから制服を出してきた。 「とってあるんだ?」 「お袋が記念に持ってましょうよ、って言うからな。少し詰めれば着れるようなら持っていくといい」 中3の時に5センチしか伸びなかったので、もう余り大きくならないだろうと思って、丁度いいのを買ってしまったのだ。だから今の制服はほんの少しだけ小さいのだ。 俺は自分のブレザーを脱ぐと先輩が出してくれたブレザーに手を通した。 で、でかい。 袖からは指先しか出ず、なにより肩が落ちて格好悪い。ちょっと詰めるどころじゃない。 先輩は俺のその姿を楽しそうに眺めている。 「やっぱり全然大きいね」 「ああ、そうみたいだな。冬哉は細いしな。と言ってもガリガリって訳じゃないんだがな」 俺は懐かしくなって先輩にお願いする。 「ね、一回着てみて。なんか懐かしい」 先輩はセーターだけ脱いでブレザーを羽織ろうとする。 「ダメダメ、ちゃんとカッターから着てよ。そんでもってネクタイも締めて」 俺の言うことを聞いてくれてアースカラーの黄色のシャツも脱ぐ。先輩の上半身は肩と腕の筋肉がどこからどう繋がっているのかがハッキリ分かる。無駄に育ってなくてきっとしなやかなのだ。 その美しいと言える裸は真っ白なシャツで隠される。そこへネクタイをしてブレザーを着た。 ああ、懐かしい。俺が憧れて憧れて必死になって勉強して、この高校に入りたいと思わせた先輩がいた。 「先輩、やっぱりブレザーってかっこいいね。それに凄く似合う」 「ふふっ、大学に入ってからまさか高校の制服を着る羽目になるとは思わなかったぞ。こう言うのはイメクラって言うのかもな」 「先輩っ、もしかして先輩って風俗とかも行ったことあるの?」 「この俺が? そんなところへ行く必要があると思うか?」 そうだよね。先輩なら引く手数多だもんね。でも1ヶ月も合宿してたらどうするんだろう。 「先輩も自分で抜いたりするの? 合宿の間はどうするの?」 先輩はあきれたように軽く笑う。 「冬哉、俺は狼帝ほど性欲が滾ってる訳じゃない。やらないならやらないで何ともないんだ」 ええっ、俺だって出さないと溜まってきちゃうのに。 「でもやり納めだ。冬哉、今日は回数こなすぞ」 先輩にそう言われた途端、俺の下半身は熱くなった。 部屋のエアコンの温度を上げて俺に命令する。 「自分で脱いで裸になれ」 ええっ、自分で脱ぐの。いつもは先輩が脱がせてくれるのに。恥ずかしいからそれがいいのに。 でも先輩の目を見たら不平は言えなくなる。仕方なくネクタイを解いてシャツのボタンを外す。上半身を脱ぎ終えるとズボンも脱ぐ。トランクス一枚になった。 「冬哉。もう反応してるのか」 「だだっだって‥」 俺は前を押さえしゃがみ込んだ。先輩とエッチするって思っただけで熱くなるんだもん。そういう先輩は俺とするって思っても反応してないのだろうか。 「ほら、来い」 こたつから少し出ると俺を呼ぶ。俺は立ち上がって先輩の前に行く。 先輩は目の前の俺の下着を下ろす。 うっ、はっ恥ずかしい。 先輩に下ろされてもっと充血したそこは勢いよく跳ね上がった。 「元気がいいな」 そして隠す間もなく手を掴んで引っ張られた。あぐらをかいてる先輩に跨るような格好で向かい合わせになる。 「冬哉。そう言う向きで座ると触ってやれんぞ?」 「いやだ。いつもいつも俺だけ恥ずかしいことされて。今日は先輩も脱ぐの」 先輩も反応しているのか、どうしても確かめたかったのでつい大胆なことを言ってしまった。変なこと言うとすぐにお仕置きされちゃうのに。 大胆ついでに先輩のシャツのボタンを外し始める。先輩は何も言わない。それに気をよくしてブレザーごと肩を滑らせた。 「なんだ。今日はやけに積極的だな」 先輩は面白がってなすがままになっている。勢いに任せてファスナーも下ろし、前を開いた。黒のビキニが見え、下向きにしまってあるソレはちっとも窮屈そうではなかった。 なんだか、がっかりした。 力の抜けた身体はガクッと腰を落とした。 「先輩、俺とやりたくないの?」 「初めに言ったことを聞いてなかったのか」 「だっだけど‥先輩の、まだ大きくなってない」 「そんなことは心配するな。お前を満足させてやらなかったことがあるか?」 「なっ無いけど‥」 「不満そうな顔をするんじゃない。それよりさっきは本当は何が言いたかったんだ」 ちょっとはぐらかされた感があったけど、チャンスは大事にしなくっちゃ。こんな雰囲気になったことはない。そう言う細かいこともちゃんと覚えてくれてることが嬉しい。 でも顔を見られるのが恥ずかしくって先輩の首に腕を巻き付け抱きついた。 うわっ、肌と肌がくっついて熱いくらい。こんなに体温って伝わるんだ。改めて裸で抱き合ってることに気付かされる。 なっなんか、こういう状態って恋人同士みたいじゃない? そう思ったらドキドキが増す。くっついてる先輩にそれすら伝わってしまいそうだ。 「俺‥。先輩がいなくて‥寂しい‥かも」 先輩は俺を抱き返してくれる。 「狼帝がいるだろ」 「でも先輩がいない」 「鷹神と龍将もいるし」 「だけど先輩がいない」 先輩は深いため息を一つついた。 |