わがまま太陽 前編 |
はぁ・・・。 講義中だというのに横で堂々と机につっぷして寝ている男の顔をみて溜息が出た。 まあ、周りをみわたせば半分くらいの人間が同じように寝ているが。 教壇では年老いた教授がボソボソと独り言のように講義をしている。 出席重視だけど、厳しくもないこの教授の講義は出席さえすれば必ず単位が取れると有名で、 寝ていない生徒も他のことをしていて、真面目に聞いているのは最前列に座っている5〜6人だけだろう。 再び横の男に目を移し、今度は心の中で溜息をついた。 なんでこんなことになったんだろう。 俺、振られたはずなんだけどな・・・。 まだ花の残る桜並木。 サークルに勧誘の声に、緊張して答える声。 似合わないスーツに、どこか期待した表情。 これから始まる大学生活と一人暮らしに不安と期待でいっぱいになりながら、俺もそんな集団の中の一人だった。 そんな中で一人だけやたら目立ってるやつがいた。 そいつの周りは違った意味で浮かれた雰囲気だった。 女の子たちは頬を染めてみつめ、男ですら羨望の眼差しでみていた。 身長が高く、かなり男前。 なにより雰囲気が独特で、こういうのがカリスマ?なんて俺はおもった。 ふと目があって心臓がとまりそうになった。 まあ、向こうは本当に俺をみたのかはわかんなかったけど。 あれだ、コンサート会場でアイドルと目が合ったーと思い込んでるってかんじ? 案の定そいつはもてまくった。 そいつの周りには常に人が多くいた。 ほとんど女の子だったけど。 そいつは決して愛想がいいほうではなくて、どちらかというと無表情なのに、ふとした時の笑顔が妙に艶っぽい。 女の子はやつに夢中になって、恥ずかしながら気づけば俺も目が離せなくなってた。 結構遊びまくってるらしくって、同じ子を連れてあるいてるのをみたことがない。 そういうのをみてがっかりするどころか、俺でも一回くらい行けちゃうんじゃない?って、 妙な期待をもっちゃったんだよな。 そして俺はその期待が捨てれなくて告った。 「付き合いたいってことか?それともやりたいの?」 初めて話し掛けた相手に初めて告って、聞き返されたのがこの言葉。 まあ、最低なやつだろうと思ってたし、そこにつけこめるかもーなんて俺も思ったんだけどさ。 「できれば付き合いたい。」 無理だってわかってたけど。 「無理」 即答かよ! まあ仕方ない、俺男だしなー。 明るく自分を慰めてみても、やっぱり悲しい。 泣くのはみっともないからその場をすぐ立ち去ろうとした。 ・・・したんだけど、やつが俺の腕を掴んでいた。 なぜかそのままヤツの部屋につれていかれ、やってしまった・・・。 まあ一回だけの記念みたいな、そんなノリでしてしまった自分に嫌気もさしたけど、 ふっきれそうな気がしたんだよなー。 あいつも一回やったら飽きるやつだって噂があったし。 なのに、だ。 チャイムが鳴って、出席票をだしたらやつは当然のように俺の腕を掴んで歩き出す。 「なあ、腕痛いんだけど・・・」 まるで引っ立てられる罪人のような扱いにちょっと抗議してみる。 このままじゃ左腕だけのびちゃうよ。 やつはちらっと俺を見下ろすと腰に手を回してきた。 これもちょっとどうかと・・・。 さらに抗議すると肩に腕をまわされる。 嬉しい筈なのに、なぜかそうは思えない。 道端でヤンキーに絡まれて路地裏に連れ去られる中学生ってかんじだよ・・・。 そのままやつの車でやつの部屋まで連れて行かれてしまった。 これがここ最近の俺の日課(?)になってしまった。 ほんとにこいつは何を考えてるんだろ。 まあ何を考えてるのかわかんないのは俺も同じなのかも。 自分で自分がわからない。 だって今のこの現状、俺になんのメリットもないのにさー。 付き合ってはくれないのに体の関係はある。 しかもこの体の関係が。 「・・・ッ」 イッテーーーーーーー!! イタイイタイ!! 痛いなんてもんじゃない。 まさに引き裂かれるってかんじだ・・・。 暗くしてるからやつの表情はわかんないけど、たまに低い喘ぎ声が聞こえてくるから感じてるんだろう。 告白したその日からもう数え切れないくらいこいつとヤッテしまってるんだけど、実は一度も感じた事がない。 ほれた弱みってやつで迫られると拒めないんだよなー。俺って健気。 単なる憧れみたいなのだと自分でも思ってたんだけど毎回この苦痛に耐えてるんだから、俺かなり本気だったんだなと今更ながらに思ったり。 こいつが俺で感じてくれてるんだから、俺すげー嬉しいよ。 ・・・・だからと言って痛みは消えないけどなっ これいつかは気持ちいいと思えるんだろうか・・・。 とりあえず早くイッてくれ・・・。 ことが終わるとやつは意外に甘い雰囲気になる。 「一樹、一樹」 なんて名前をよびながら抱き寄せてくるんだからびっくりしちゃうぜ。 こういうときとかこいつ実は俺に惚れてない!?とか思っちゃうんだけど。 付き合ってはくれないんだよな・・・。 こいつに告ってから早2ヶ月。 ほんとにこいつはわけがわからない。ということがわかっただけだ。 |