わがまま太陽
後編



季節というのはこんなに早く流れるものなんだな。
ちょっと感慨深いものがある。嘘だけど。
もうあのわけのわからない男に告白して半年が過ぎようとしてる。
俺たちの関係に特に変化はない。

木枯らしに吹かれてどこまでも飛んでいってしまいたい。

なんてことは思わないにせよ、ぼんやりと遠くを眺めてる俺を不信に思ったのかやつが強く腕を掴んできた。

「はやく帰るぞ」

相変わらずの王様っぷり。
なんでこんなに偉そうなのかね。
しかもなんとも目つきの悪いこと。
さっきまでは普通だったのに、気付けば機嫌が悪くなってる。
こういうことってよくあるんだよなー、こいつ。

ほらほら、そんなに目つりあげてるから周りの人たちがびびってるでしょーが。
なんて思いながらキョロキョロと辺りを見回してるとがっしり肩をつかまれ、やつの家につれていかれた。




どういう風の吹き回しなのか。
やつの家につくなり、やつがキスしてきた。

なんだなんだ。
あせってる感じがやつらしくない。
そういやこういう関係になってからほとんど毎日やつの家にきてたけど、
俺が先週バイトをはじめたせいでこの家にくるのも1週間ぶりだった。
だから溜まっちゃってんのかねー。
他にも相手がいっぱいいるんだからそれはないか。


なんてぼんやり考えてるといきなり抱えあげられた。
もちろんお姫様だっこなんてものではなく、荷物のように肩にかつがれた。
そうそうお米とか買うとこういう担ぎ方するよねー。
って俺は米かよ。
まあ別にお姫様だっこがされたいわけじゃないけど。
普通に歩けるっつーの。せっかちすぎだろ。


ガラリと寝室のドアがあけられてやっぱり荷物のようにベッドにおろされた。
なんか知らないけどどうもムラムラしちゃってるらしい。
ムードもへったくれもなく勢いよく裸にむかれてしまった。
まあ、いつものことなんだけどさ。

うれしいけど痛いからなー。
ちょっと気がひけちゃうんだよなー。
今日ははやくおわってくれるかなー。

そんな気持ちが顔にでてたのだろうか。

「気持ちよくないのか?」

まさかやつが俺のことを気にかけるなんて。
どうしちゃったんだ。
熱でもあるんだろうか。

むくりと起き上がりやつのオデコに手を伸ばしたらそのまま抱きかかえられた。
座ったまま向き合って抱っこされてるかんじだ。

真剣な眼差しでこっちをみてる。
まるで恋人のような熱いキス。

そうそう、こういうムードとか前戯がいつもこいつにはないんだよな。
つっこんでだしておわり!みたいな。
まあ体だけの関係ならそんなもんかと思ってたんだけど。
今日はなぜか俺の乳首にすいついたりしてるし。
自分がそこが弱いなんてはじめてしっちゃったよ。
おまえもやればできるじゃねーか、なんて思わずほめてあげたくなった。

甘いムードのまま、いざゆかん!ってかんじに突っ込まれちゃうとこんなに感じるものなんだな。
いざゆかん!じゃ甘くはないか。
でもとにかくこの日初めてやつとのセックスで感じることができた。
痛くなくて気持ちいいならこの関係のままでもいいかも。とちょっと思ってしまった。
俺も男の子だったんだなあ。









そして。
念願の夜を迎えた男は満足げに恋人の寝顔をみつめた。
恋人にはまだ思いを告げてないが、以前告白されていたし、もう恋人と言っていいはずだ。
フガフガと寝言を言ってる姿すら愛しい。
気付けばこんなにもはまっている。
自分とのセックスに一樹が感じてないことに気付いたときの衝撃は今でも覚えている。
いつも余裕なく抱いてしまっていた。
一樹を前にするともう我慢ができなくて。
だが。
「恋人でもなくてセックスも下手なんて逃げられるんじゃねーの」
そんな友人の言葉でこんなにも焦燥感にかられるとは。
今までの経験から「付き合う」というのは非常にめんどくさいものだと男は思っていた。
束縛され、あれをしろこれをしろと要求される。
だが。
「そんなことで一樹が手に入るなら」
いくらでも束縛してほしい、なんだって言うことをきいてやると男は甘い考えとは裏腹にニヤリと笑った。

もう逃げられないのだと笑う男に気付くこともなく一樹は幸せそうに涎をたらした。





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