降っても晴れても 前編
その日真樹は起きてすぐ窓に飛びついた。
そして恨めしそうに空をみあげた。
いつもこうだ。いつだって。
毎度のことながら嫌になる。なんて呪われた運命なんだ。
真樹はふてくされたように口をとがらせながらリビングへ向かい朝食を口にした。
だが、カフェオレをぐっと飲みほした時。
「お、雨やんだぞー。よかったな真樹」
「え、ええええっ!?」
父の能天気な声が真樹のとんがった口を大きく開かせた。
急いで窓に駆け寄るとそこは先ほどまでの雨が嘘のように真っ青な快晴が広がっていた。
「嘘だろ・・・?」
目の前の光景が信じられない真樹だったが、その日は結局もう雨はふらなかった。
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「真樹くんおはよ〜」
「真樹くん今度の日曜日〜」
朝学校につくと真樹のまわりには女の子が集まってくる。
そのかわり、
「また小田かよ」
と、男子の視線は刺々しいものだったが。
だが真樹はそんな視線はきにしない。といより眼中になかった。
彼には重大な使命があるのだから。
「あ、ユリちゃん、アカネちゃん、マユミちゃん。週末に一緒に遊園地でもいこうか」
真樹がにっこり微笑めば女の子たちが黄色い悲鳴をあげる。
「えー、いいなあ。私も行きたい!」
「カンナはこの前行ったでしょ!」
誰が週末真樹とデートできるかは真樹の気分次第だった。
というより・・・
「小田真樹って一回デートした女とは二度と遊ばないらしいぜ」
「げー、まじかよー」
「毎回毎回、女ばっかり何人もはべらせていい気なもんだよな」
というのが正しい。
真樹はもてる。非常にもてる。
決して背が高かったり、男らしい顔であったりするわけではない。
身長は高校生にしてはちょっと小さ目の165cmだったし、顔も中性的でいわゆるジャ○ーズ系だった。
女の子たちはまるでアイドルを扱うように真樹を大事にしてくれる。
しかし、だからといって真樹が自分のルックスを武器に女の子をもてあそんでる訳ではない。
彼には彼なりの理由があり、週末ごとのハーレムデートをくりかえしてるのだった。
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「はあ・・・。」
真樹は悩んでいた。毎週毎週女の子をはべらせてデートをしてきた。
入学からすでに半年以上経つ。もう1年生の女の子とは全員デートをしてしまった。
「なのに見つからない・・・。」
さらに真樹はため息を重ねた。
1年がダメなら2,3年にも手を伸ばすしかないのだろうか。
だがこの半年で真樹は疲れていた。望んでもいない女の子たちとのデートに。
もちろん女の子は好きだ。大好きだ。
だがこう毎週毎週では疲れてしまう。しかも2、3年にも手をのばすとなるとあとどれくらい時間がかかるのだろうか。
想像しただけでげんなりしてしまう。
「なにが見つからないの?」
真樹が見上げるとそこには真樹の数少ない男友達である花菱 空がたっていた。
気弱そうに眉をハの字にしながら空は真樹にほほえんでいる。
180を超える長身にがっしりとした体格をしているのだが非常に気が小さく、まるで真樹の子分のようになっている。
「なんでもねーよー」
真樹がそっけなく言っても空はめげない。
「僕も一緒に探してあげるよ。ね?」
男子から嫌われている真樹をここまでかまおうとするのは空だけだった。
「探し物はもういいんだよ・・・。今週はデートもやめとこ・・・」
もう諦め始めてる真樹にそれじゃあと空が声を弾ませた。
「今週は女の子とデートしないの?それなら僕とたまには遊ぼうよ。」
「あー?お前と遊んでも何の得にもならねーっつーの」
「そういわずに〜。真樹がみたがってた映画見に行こうよ。おごってあげるからさ」
おごるという言葉に真樹の顔がかわった。
「まじで?」
「まじでまじで。お昼もおごってあげるしさ。ね、いこうよ」
毎週毎週女の子とのデートでおこづかいがすっからかんの真樹は甘い言葉に弱かった。
「じゃあいく。」
「ほんと!?じゃ、じゃあ土曜真樹の家に迎えにいくから!!」
何故か興奮しきっている空を横目に「へいへーい」と適当な返事をした真樹だった。