「噂の尾ひれを毟り取れ」の続きです。
来訪者は突然に
そうだ、この人が食いつかないはずがなかったのだ。
ルルーシュは目を爛々と光らせる人間へ、うんざりとした視線を向けた。
事の発端は、CCとの食事だった。その出来事が何の因果か学園中に知れ渡り、しかしリヴァルとの問答で“一緒にいた女性は恋人だ”という勘違いは解かれたはずだった。と、ルルーシュは思っている。何故ならあれほど騒いでいた生徒たちは、何事かを納得したかのようにそれ以降彼に絡むことをしなかったからだ。
馬鹿正直に義務を果たすべく生徒会室に来るのが悪かった。何がどうであれ、会長が面白そうな話に飛びつかないはずがないのだ。
「うふふふふ。聞いたわよぉルルちゃーん。彼女、いたんだって?」
「いませんよ。全く、そんな事どこで聞いたんですか、会長」
「ナナちゃんに」
「……は?」
思いがけない答えに目を点とさせると、ミレイはにやにやとした笑みのまま、妙に儚げな表情で声音をか細くした。ナナリーの真似らしい。
「なんだかとても懐かしい気分になる女性なんです。お兄様とはお似合いだとは思いますわ、対等に話してらっしゃいましたから。それに、優しい方なんです。あの方が恋人というのでしたら、心から祝福いたします。……少し寂しいですけれど」
それを聞いたシャーリーは、妹にも紹介してるだなんて本物かと落ち込み、
聞き耳を立てていたリヴァルは、対等! と驚愕し、
当のルルーシュは、違う俺はナナリーが一番だナナリーナナリーあんなやつ恋人なんてありえないと白黒の精神世界で叫んだ。
ニーナはパソコンでユーフェミアのアイコラを作成していた。
ちなみにカレンは病欠、スザクは軍だ。
多種多様な反応を見せる彼らに、ミレイはむふふ、と笑ってルルーシュに詰め寄る。
「ねールルちゃん。お姉さんに紹介してよぉ、そのかわいいかわいい恋人さん」
「拒否します。というか、恋人じゃありません。かわいくもありません」
「えー。会長命令!」
「……単なる知人ですから。しつこいですよ会長、その書類をさっさと」
「おいルルーシュ。何故カードを止めた!」
強制的に話題を打ち切ろうとしたルルーシュ他数名の耳に入ったのは、扉が勢いよく開く音と、不機嫌な声。
ずかずかと立ち入る彼女に、生徒会員達は目を瞬かせる。
緑色の髪、年の頃、制服、態度、そしてルルーシュの名を呼んだ彼女――ああ、と声を上げた。噂の彼女か、もしかして。
ルルーシュはといえば、瞠目して固まっていた。彼は、とてつもなくイレギュラーに弱い。
「おま、お、お、お前……!」
「ピザが買えないではないか!」
「お前は買いすぎなんだ――じゃなくて、何でここへ来た!」
「ん? 制服なら出歩いていいのだろう?」
「誰がいつそんなことを言った! 勝手に人の言葉を曲解するな」
「お前の都合などどうでもいい。ピザだ、ピザ」
「……ピザ食って死ね!」
不幸中の幸いだったのは、ルルーシュの片目が赤く光ったことにも、ギアスは効かないさと鼻で笑う少女の言葉も彼らが聞き流したことだったことだろう。
ルルーシュと対等以上に接することが出来る人間は、これまで基本的にはミレイだけだった。それでも完全に彼が敗北することは少なかったし、そもそもミレイも彼が本気で嫌がることはしようとはしなかった。
だがこの状況はどうだ。圧倒的に、ルルーシュが、負けている。対等どころではない。
ミレイの頭の上に、ぴょこんと悪魔の角が生える。これは楽しい。からかうしかない。
「貴方がルルーシュの恋人?」
「ん? ……ああ、将来は誓い合ったな」
「お前はなあっ!」
「しょうら……っ!」
シャーリーが燃え尽きて灰になる。あらあらあら、と楽しげにミレイが頬に手をあてる。リヴァルはどうしたらいいのか分からない。ニーナは状況さえつかめず困惑するばかり。
未曾有の混乱、ルルーシュの恋人疑惑、机の上には提出期限間近の書類……混沌に晒された生徒会室に、一陣の風が通った。
「あれ……?」
扉を開いた、すぐそこにいたのは、かの。
(なんでこのタイミングで続々来るんだ!)
リクは「CCが生徒会メンバーと遭遇」でした。
リクエスト繋げて続き物にしてしまいました!あっはぁ! す、すみませ……。
続きますぅ。
最後に登場した人 1.スザク 2.カレン 3.ナナリー 4.大穴で玉城
さーどーれだー
20080215