剛三郎の部屋には磯野にとって、いい思い出など一つもなかった。 呼び出される事によって、思い出される過去の記憶… 部屋の前に来た時、磯野は気持ちを奮い立たせ、ドアを叩いた。 コンコン… 応答はない…変だな。確かにこの時間に来いと… ドアノブを回してみる。…開いている? 「失礼します…」 磯野はそっと部屋の中に入っていった。 薄暗い部屋の中…荒い息遣いが聞こえてくる… 肉と肉が擦りあう音… 息苦しくなるほどの卑猥な空気が、部屋中を覆っていた。 …剛三郎がまたどこかの少年を犯しているのか… 磯野は嫌悪感を覚えていた。 以前も何度か剛三郎は自分のそういう行為をわざわざ磯野に見せ付けていた。 見せることで自らの興奮を高め、また磯野に対しても自分が主である事を知らしめていた。 自分も同じように犯され続けた身… 剛三郎に逆らう事が出来なかった磯野は、ただじっとその行為が終わるのを待つしかなかった。 だが…この少年は…? 「瀬…人さま…?」 興奮した老人の下で淫らに喘いでいたのは、今、自分が仕えている少年だった。 白く透き通る様な肌は、紅潮してうっすらとピンクに染まり、 もう何度かイかされているのか、下腹部には白っぽい液が飛び散っていた。 剛三郎のしつこい愛撫に耐え切れなくなったのか、瀬人の両目には涙が溢れていた。 「や、あぁ…」 瀬人の甘い喘ぎ声が部屋中に響く… 限界が近づいてきたのか、剛三郎の動きが早くなる。 その動きに合わせて瀬人の息も荒くなっていく。 「ん、くっ!」「やぁ、あぁぁ!!!」 ほぼ同時に二人は絶頂に達し、独特のにおいが充満する… 瀬人は剛三郎の下でぐったりとして、荒い息の中、磯野のほうを見た。 「い…その…?」 瀬人の顔がみるみる青冷めてく。剛三郎との情事をまさか磯野が見ていたとは… 「瀬人様…」 磯野は瀬人の名前を呼んだ。名前を呼ぶ事しか出来なかった。 今までは剛三郎が誰を抱こうが、磯野はあまり気にも留めていなかった。 嫌悪感こそあったものの、かなり冷ややかにその行動を受け止めていた。 しかし、今回は違う… 異常なほどの嫌悪感、行為に及ぶ剛三郎への怒り、組み敷かれる瀬人への思い… 「これは…これはどういうことですか!」 磯野は両手を握り締め、行為を終え、ガウンを羽織る剛三郎に詰め寄った。 「いつもの事だ。貴様や瀬人に誰が主かを思い知らしめただけだ!」 「わしを追い落とそうと画策しているそうだが…」 磯野の表情が怒りに変わる。久しく出さなかった感情だ。 「何を怒る?貴様とて瀬人を抱いてみたいと思っているのだろう?だったら、瀬人を抱いたらどうだ?!今ここで!わしの目の前でな!」 剛三郎の言葉に磯野は抑えていた怒りが爆発しそうだった。 「そんなことできるわけないだろう!!」 抑えて言ったつもりだったが、磯野は大声で怒鳴りつけるように言っていた。 「今すぐ瀬人様をここから連れて行く!あんたの思い通りにはさせない!!」 磯野は声を震わせていた。怒りで我を忘れてしまいそうだ… 「フッ!磯野、貴様はいつからわしにそんな悪態がつけるほど偉くなったのだ?」 剛三郎が磯野に近づいていく。磯野はビクッと身構えた。 「貴様も昔はわしに犯され続けた身ではないか!今の瀬人と同じように…」 「わしには逆らえん…瀬人を抱かぬと言うのなら、この屋敷から追い出してやる!」 「まだそれだけの力はわしにもある…二度と瀬人の傍に近づけなくしてやる!!」 磯野は困惑した…今、瀬人の下を去ったら、剛三郎に打ち勝つのは難しくなる… 磯野が裏で手を回すからこそ、剛三郎に逆らって、瀬人についた人間も大勢いるのだ。 かといって、今この場で瀬人を抱くなんて到底できることではない。 瀬人にそんな事をするくらいならいっそ… ベットでぐったりしていた瀬人が、けだるそうに身を起こす。 そのまま、一糸纏わぬ姿で磯野のほうへ近づいてきた。 体中に刻まれた赤い所有印…立っているのもやっとなはずの瀬人は、倒れこむように磯野の元にたどり着く。 「瀬人様!」 磯野は瀬人を受け止め、心配そうに顔を覗き込む… 瀬人は磯野の首に両手を回し、軽く口付けをした。 「せ、瀬人様!?」 「俺を抱け…磯野…」 「な!そんなこと…」 「いいから…今、お前に去られては困る…」 「今はまだ、力が足りない…剛三郎に逆らうのは得策ではない」 「あと一息だから…あと一息ですべてが終わる…」 瀬人は磯野に抱き付いて言った… 「それに…磯野ならいい…磯野なら耐えられるから…」 「瀬人様…」 「磯野がいたから…磯野の存在が俺を支えていたから…お前がいたから、俺は正気でいられたんだ。 今、お前がいなくなってしまったら、俺は何を支えに生きていけばいい…?」 「どうやって、あいつの仕打ちに耐えたらいいんだ…」 瀬人は、その白い体を震わせて、磯野に訴えた。 細い体にうっすらと残る、無数の傷跡。剛三郎の瀬人への虐待の痕跡… 瀬人がなぜ自分を支えにしているのか。 自分は瀬人に何もしていない。ただ、瀬人と同じ過去を持つだけ… それが瀬人にとって、どれだけ救いになっているか、磯野にはまだ理解できなかった。 今はただ…その白く細いその体を抱きしめるだけ… 磯野にはそれしか出来なかった。 剛三郎の視線を感じながら、磯野は瀬人を抱きかかえベッドに座らせた。 不安そうに見上げる瀬人の頬に手を添え、そっと口付けを交わす。 震える唇を摘む様にキスをすると、瀬人が腕を回して磯野の首に巻きついた。 磯野の咥内に舌を差し入れ、その中をかき回す。 10台半ばの少年がする行為ではない。 剛三郎に教え込まれたのか… 自分も覚えている、あの調教の日々。 瀬人の求めに応じながら、磯野の右手は瀬人の腰へと伸びていく。 内股をゆっくりなぞりながら、その中心へと愛撫を施す。 「あっ…」 ピクンと体を震わせ、巻きついた腕に力がこもる。 かまわず磯野は瀬人自身にそっと触れ、いまだ熱がこもるそこを優しく擦り上げた。 じゅっ、じゅっと擦り上げる音が部屋中に響き渡る。 音が鳴る度に瀬人が苦痛の表情を示す。 快楽と嫌悪感が瀬人の中で渦巻いているのだ。 瀬人にとって、剛三郎に強要されるSEXは苦痛の何物でもない。 相手が磯野であっても、反射的に嫌悪感を抱いてしまうのだ。 それでも磯野はかまわず瀬人に愛撫をし続けていく。 両足を抱え、露になった秘部に指を添え、充分に解きほぐす。 剛三郎の精液で充分湿っているが、磯野はそれでも指を使ってそこを広げていく。 「んっああ…」 「もう少し…もう少し楽にさせますから。」 出来る限り瀬人が苦しまないように… 自分の快楽よりも、下で喘ぐ瀬人の事だけを考えていた。 くちゅくちゅを音を立てながら、磯野の指は瀬人の肉壁を広げていく。 瀬人の息はだんだん荒くなり、快楽に慣れた体は、磯野の指でも充分に感じ、眼は虚ろになっていく。 「も、いい…いいから…」 早く…挿れて… 早く…俺を解放して… この快楽から…剛三郎の呪縛から… 「瀬人様…」 磯野は目を閉じ、大きく広げた体に前進した。 「ひっああああ!」 いきなりの突き上げに、瀬人は思わず腰を引く。 磯野はその腰を引き寄せ、律動を繰り返していく。 ゆっくり挿れながら、瀬人が悶えるポイントを見つけていく。 「あっふ…んん…」 「ここですか?瀬人様。」 つんと突き上げると、瀬人の背中がピクンと跳ね、磯野に捕まっている手の力が強くなる。 「んっ…」 声を殺そうとする瀬人の手を、磯野はそっと取り除く。 「声を聞かせてください…瀬人様…」 「い…やだ…奴に、きこ…える」 「では、私の為だけに聞かせてください…」 「いそ…の…」 いつしか瀬人も磯野も周りの情景は見えなくなっていた。 剛三郎の視線も何も感じない。 あるのは…互いの眼に映る同じ思いを秘めた瞳。 口付けを交わしながら、磯野は瀬人の中への挿抽を繰り返す。 瀬人はもう構わず声を上げ、磯野を感じていた。 「ああ!磯野!!」 「瀬人様!」 突き上げながらも瀬人自身への愛撫は忘れず、頂点へと導いていく。 磯野を更に奥へと誘うべく、瀬人は足を磯野の背後で絡め合い、ぐっと自分に引き寄せる。 お互いの動きが早まり、互いに限界が近い事を感じ取る。 「もう…イク…!」 「私も限界です、瀬人様。あなたの中に注ぎたい。」 出して…お前のでいっぱいにして… 剛三郎の呪縛などすべて消し去って! 叫ぶ様に喘ぐ瀬人を磯野は強く抱きしめた。 その直後、二人の身体は小刻みに震え、磯野は瀬人の中へ、瀬人は磯野の原に精を放出した。 ハァハァと息を荒くしながら、薄れ行く意識の中で瀬人は磯野に自ら口づけをする。 そして穏やかな表情で笑いかけると、そのまま磯野の腕の中で安心しきったように眠りについた。 子供のように眠る瀬人の額に、磯野はそっと唇を落とす… 忘れていた感情が、次々と甦ってくる。 怒り、悲しみ、そして愛情… いつしか、磯野は、瀬人をいとおしく思うようになっていた。 瀬人の為なら、この命、投げ出してもいい… 生まれて初めて、磯野はそう感じた。 ガウンを羽織り、瀬人の眠るベッドを後にする。 瀬人を愛しいと思う反面、抱いてしまった罪悪感も湧き出てくる… この先どう瀬人と向き合えばいいのか… 「どうだ!瀬人の味は?」 剛三郎が磯野に近づき、いやらしく声をかける。 磯野はサイドボードに両手をついたまま、剛三郎の問いかけに答えようとはしなかった。 「よかっただろう…そりゃそうだ。わしが開発したんだからな。」 剛三郎は気にせず、話を続けた。 「どうだ?磯野。わしの元に来んか?そうすればいつでも瀬人を抱かせてやろう。」 「貴様も瀬人の味を覚えたんだ。もうやめられはしない…」 「黙れ!」 磯野は剛三郎の言葉をさえぎった。そして、怒りの表情で振り返る。 「今日のこの夜のことは決して忘れない…貴様と俺が瀬人様にした事を、俺は決して忘れない」 「覚えているがいい!俺は貴様などには決して屈しはしない!」 「必ず貴様の首を取り、瀬人様を貴様の怨念から解放させる!」 「俺が、命をかけて、貴様から瀬人様を守りぬく!!」 磯野の激しい怒りに、剛三郎は何も反論できなかった。 「くっ、今に思い知らせてやるぞ!!」 ただ、それだけを言い返すのがやっとで、剛三郎は、自分の部屋から出て行った。 今の騒ぎで、瀬人が起きてはしないかと心配になったが、瀬人はすやすやと深い眠りについていた。 それを見て安心した磯野は、そのまま朝まで瀬人の傍に座り、見守り続けた。 朝が近づき、もう剛三郎は来ないことを悟った磯野は、自分の部屋に戻った。 瀬人がなぜ、自分を支えにしていたのか… 同じ過去を持つもの同士の慰めあい…そう終わらせてしまうには、あまりにも過酷な過去の傷跡… 何も言わなくても、すべてを理解できる…ただそれだけなのに、少年にとってはどれだけ救いになった事か。 自分の闇の部分も理解している人間がたった一人だけれど、すぐ傍にいる。 それが瀬人の精神力を正気に保っていた。 だが、瀬人を抱いてしまった今、以前と同じように瀬人に接する事が出来るだろうか… 瀬人への思いを抑えることが出来るだろうか… 瀬人が自分を見ることにより、その過去を忘れる事が出来なくなるのでは… 磯野は、棚の引き出しからはさみを取り出し、そして自分の髪を切り始めた。 今の自分を残してはいけない… 昨日の事を思い出させるようなものは、すべて排除しなければならない… 俺の眼は、自分と同じ眼をしていると言った瀬人様に 決して…この眼を見せてはいけない… 磯野は黒いサングラスをかけ、それを二度と外すまいと心に誓った。 記憶を…永遠にこのグラスに封印する… それから数日後、剛三郎は瀬人たちの手により、自らの命を立った。 「磯野〜〜何ボーっとしてんだよ!!」 モクバの声に、磯野は我に帰る。 「モ、モクバ様!とにかく返して下さい」 「やだよ!!絶対無いほうがかっこいいもん!!」 モクバがサングラスを高く掲げる。 その時、後ろからさっとサングラスを取られてしまった。 「モクバ、あまり磯野を困らせるな」 瀬人が後ろからサングラスを取り上げた。 「兄様!」 「お前が廊下を走るから、磯野にぶつかったんだ。お前が全面的に悪い」 「はーい、ごめんなさい…」 兄にいさめられ、モクバは素直に磯野に謝った。 「ほら…返すぞ、磯野…」 瀬人はサングラスを磯野に渡す。磯野は瀬人の顔をまともに見れなかった。 それを知ってかしらずか、瀬人は磯野の顔を掴み、自分の真正面に持ってこさせる。 「せ、瀬人様!!」 磯野は驚き、そして困惑した。 その顔を見た瀬人は、その頬にそっと手を添え、やわらかく微笑んだ。 「お前の眼を見るのは久しぶりだ…」 そして、モクバにも久しく見せない顔で笑った。 そう、夢を語った、あの時と同じ笑顔で… End
今じゃ、HなしのSSが書けなくなったよ…(苦笑)
磯海も結構美味しいカップル。またいずれ書いてみたいですね。
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