ゲームを征する者   17














       ガチャ…







       仮眠室のドアがゆっくりと開けられていく。



       小さめの部屋にベットが2つ。

       仮眠室はこの部屋以外にもあるので、10数人は一度に仮眠を取る事が可能だ。







       「はい、大佐。ちゃんと寝てくださいよ、俺が中尉に怒られるんですからね。」



       掴んでいた腕を放り投げるように放し、ロイを部屋の中に押し込む。







       ロイはしぶしぶ上着とベルトを外し、仮眠室のベットの中へと滑り込んだ。



       ハボックが椅子を取り出し、ロイのベッドの傍らにどかっと座り、タバコに火をつける。





       「…何してる…」

       「何って…大佐がちゃんと寝るまで見張ってろって言われたから。」

       



       ふぅ〜と煙を吐き出し、ロイの顔を上から見下ろす。

       その顔が欲情しているとも取れるのは、自分の被害妄想からだろうか…





       「…そういや、お前、大総統閣下から何か貰ったそうだな。」

       「あ、あぁ。あれっすね。えぇ。頂きましたよ、とってもいいものをね。」









       

       「何貰ったか聞かないんすか?」

       「…私にとってはあまりいいものではない様な気がするのでな…」



       ハボックが頭をかきながら苦笑する。





       まぁ、あんたの勘は当たってるかもしれませんね。







       「これ、貰ったんです。」



       ポケットから徐に取り出された物…











       「首輪…?何でそれを…?」





       ごく一部の者は、昨日のゲームには参加しなかった。

       首輪は人数分作られていたので、参加しなかった人の分が僅かに残っていたのだ。

       ハボックはそれを全て引き取ったのだった。



       ロイはハボックを不思議そうに見つめていた。

       記念に首輪を貰ったって、ハボックは喜ぶようなオメデタイ奴ではない。





       「ハボック…?」

       「昨日…というより今朝ですね。あんたが気を失った後色々あったんですよ。」







       朝日が照らされ、ゲームの終了がブラッドレイから宣言された後…



       「勝利者に景品を与えなければいけないな。」



       このブラッドレイの言葉から色々面倒な事になっていった。





       「何で!?勝利者は俺でしょ?大佐は俺の物だってみんなも納得しただろうから俺が貰ったって別にいいじゃん!」

       「そうはいかない。君は主催者側の人間だ。景品を貰う資格はない。」



       「大総統!!」

       「エド、君の気持ちの前に、ゲームだと言う事を忘れるな。」





       静かに…そして威圧的にエドに語りかける。

       さすがこの国の最高権力者。あの鋼の大将でも言い返せないでいるよ…





       ハボックが感心して聞いていると、ブラッドレイがロイを抱きかかえ、ソファへと寝かしつけた。









       「エド…マスタングは確かにお前の物だ。それは今ここにいる者全てが認めているだろう。」

       「だがね…行き過ぎた独占欲は君だけではなく、マスタングさえも傷つけてしまうよ。」





       ブラッドレイはエドに近づき、その金髪を優しく撫でていく。

       エドの興奮を沈めるように何度も何度も…





       ブラッドレイの胸に顔を埋め、その手で心を落ち着かせたのか、エドが口を開いた。





       「俺…どうすればいいの…?」

       「君が選びたまえ。景品を与える勝利者をね。」





       要するに、エド自身がロイの浮気相手を選べというのだ…





       「ここに残ったものは皆その権利がある。最後まで生き残った者たちだ。ゲームを面白くしてくれたからね。」

       「だったらハボック少尉がいい!」





       「え、えぇ?俺ですか?」





       いきなりの指名にハボックは吸おうとしていたタバコを思わず噴出してしまった。



       「名前も知らない下士官にあげるより、よく知った人に大佐をあげた方が俺も安心する。」

       「ちょ、ちょっと待って下さいよ!いきなりそんな事言われても!?」





       「いらないの?権利を放棄する?」

       エドが机の上から悪魔の声で囁く。

       朝日が背中から差し込んできて逆光になり、一際威圧的な雰囲気をかもし出していた。













       「…で、お前はそれを承諾したのか…」

       「せざるを得なかったって言って下さいよ…あの場の雰囲気から言って、俺に拒否権はなかったっす。」





       嫌そうには見えないぞ…

       ハボックの顔は、満面の笑みで微笑んでいた。







       「私の意思はまるっきり無視か。」

       「仕方ないっすよ、あんたは景品だったんですから。」

       「好き好んで景品になったわけではない!」







       激しい口調で…しかし表情は諦めのムードが漂っていた。



       幾ら権利を訴えた所で、どうせ無視されるんだ…

       今度はハボックにまで私は弄ばれるのか…







       「景品を貰うに当たって、エドの大将と約束を交わしたんです。」

       「約束…?」





       一つ、大佐を好きに出来るのは、大佐がこの首輪をつけている時だけ。

       一つ、一回につき一つ。無くなったらおしまい。ハボックの手から大佐は離される事。

       一つ、必ず合意の上、首輪をつける事。

       一つ、決して愛してはいけない…





       「それを与えるのは俺なんだから…」





       そう言ってエドは何も知らずに眠るロイの頬をそっと撫でていた。









        

       「要するに、体だけの関係っすよ。大人の事情ってやつですかね…やるかやらないかはあんたの意見も尊重しろってさ。」

       「お前はそれでいいのか?納得しているのか…?」





       お前だって私に対する想いはエドと何ら変わらなかったはずだ…





       「俺に愛して欲しいんですか?大佐は…」



       暫くの沈黙の後、ロイは静かに首を振った。

       それはエドの役目だから…



       だったら期待するような事、言わないで下さいよ…

       ハボックは苦笑し、椅子から立ち上がると、ベットに横たわるロイに近づき唇に触れた。







       「昨日のあんたのあんな姿見せられちゃ、大佐への恋心なんて粉々に砕け散りましたよ。」

       「恋する気持ちがなくなれば、後に残るのは欲だけっす。」







       永遠に手に入らないのなら、今、幸運にも与えられたこの権利を思いっきり楽しもう。







       「…エドの…異常なまでの執着心を弱らせ、精神的にも強くさせる為…」

       「そう割り切ってしまえばなんて事はないっすよ?大佐…」





       「そう簡単に切り替えろといわれてもな…」





       ハボックは手にした首輪をロイにはめると、そのままシャツのボタンを外していった。







       「全てはエドワードの為…か…結局は東方司令部全てが大総統閣下とエドに弄ばれていた訳だ。」

       「企むはあの二人。向う敵は無し…っすね…」









       ロイの首筋に唇を落とし、昨日辿った痕をもう一度確かめるように舌を這わせていく。





       ハボックの頭を抱えながら、ロイは目の前の快楽を何も考えすに楽しむ事を決意した。











       すべては愛しいエドワードの為…

       そう自分に言い聞かせて…







       「ハボック…私からも一つ約束しろ。」

       「は?何すか?」





       「少しは私も楽しませろよ…」

 



       望むところっすよ!と鼻息荒く、ハボックはロイの両足を抱え込んだ。













   

       「気になりますかな…?大佐殿の事が。」

       「まぁね…今頃ハボック少尉に抱かれてるかと思うと、飛んでいって殺してやりたいよ。」





       アームストロング少佐が少し驚くような仕草をすると、エドはクスッと笑って窓の外を見た。





       不思議な気分だ。

       以前の俺だったら、こんな穏やかな気持ちではいられなかった。



       何があっても…誰に抱かれていても、大佐は俺を一番だと言ってくれる。





       何故だか分からないけど、揺ぎ無い自信がみなぎってくる。







       大佐は俺のものだ。

       俺だけの物だ。





       だからハボック少尉、好きなだけ大佐を抱いてもいいよ。







       どんなに体を重ねても、大佐が満足する快楽を与えられるのは俺だけなんだから…

















       セントラルに向う列車の中で、ブラッドレイは椅子に横たわり、一人その疲れを癒していた。



       

       やはり一晩中繰り広げられたゲームの疲れは拭えず、護衛に「少し眠る」と言い外へ出させたのだ。







       眼を閉じながら、昨日のゲームの成果を考える。







       エドワードの精神はこれでかなり強くなるはずだ。

       マスタングとの絆も深まり、益々軍から離れられなくなるだろう。





       強くなってもらわねばならない…

       エドも…マスタングも…





       「でなければ我らの使命は果たせぬのでな…」





       賢者の石の為に…

       我らの長年の夢を果たすために…







       人柱にさせる為には、心身ともに強くなくてはいけないのだ…









       「ああも簡単に壊れてしまっては困るのだよ…鋼の錬金術師よ…」







       ゲームはまだまだこれからなのだから…





       ゆっくりと眼を閉じ、ブラッドレイは深い眠りに落ちていった。















       全ては愛しい者達の為に…



       











       END









  



やっと終わりました!

だらだらと話を続けてしまい、申し訳なかったです…
連載中もいっぱいご意見を頂きました。
「ロイを幸せに!」とか、「いっぱいやらせて!」とか…(笑)

この場を借りてお礼申し上げますです!
ご意見本当に嬉しかったです!

最初に考えていたらストとかなり違ってしまいましたが…
私的にはフュリー君のエピソードが書けてとっても満足です!(笑)

結局は閣下の一人勝ち??見たいな感じで…
閣下の上を行こうなど、まだまだ早いんですね〜〜エドもロイも…

長々とお付き合い、ありがとうございました!!   



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