「迫り来る氷帝」外伝で 不二と乾の話
「初めまして、かな。俺の名前は…」 「知ってる…乾貞治、この国のブレーンだね…」 それが僕らが交わした最初の会話… 僕の腕の中で眠るこの大柄な男は、その身体とは見合わない繊細な神経を持っていた。 「ん…ん…?」 「目が覚めた…?乾。」 「…不二…ここは…俺は一体…」 未だ記憶が混乱しているのだろう。 仕方がないさ…君はさっきまで発狂寸前だったんだから… 「少しは落ち着いた?」 「…頭が痛い…」 「もう少し眠るといい。僕が朝まで傍にいるから。」 そう言いながら乾の髪を優しくなでる。 その感触を心地よいと思っているのか。乾はまた眼を閉じ、すやすやと眠りについてしまった。 誰かをこうして抱きしめて眠るのは何年ぶりだろう… 僕の腕の中でこんなにも穏やかな表情をするのは、裕太以外いなかった。 僕がこの国の一員として認められたのは今から3ヶ月程前の事。 刺客としてこの青学王国の女王を狙ったんだけど見事に失敗。 本当なら銃殺されても仕方がない状況だった。 事実、僕は銃殺刑になったんだ… 「殺し屋」としての過去の僕を葬ったんだ… 女王の好意でこの国に迎え入れられたんだけど、僕はすぐには馴染めなかった。 手塚も大石も皆優しくしてくれるけど、僕にはそれがまだ息苦しく感じていた。 そしてこの乾貞治、と言う男が僕の世話役として傍に付く事になった。 多分、見張りも兼ねていたんだろう。 僕が本当に仲間になったのか見極める為に。 親しみやすい笑顔を絶やさず、親身になって僕がこの国に馴染むように色々世話をしてくれた。 僕と同じ他の国の出だったが、女王からも皆からも信頼され、既にこの国にはなくてはならない存在となっていた。 常にこの国の事を考え、皆の事を考え、最良の案を出す。 だが僕は感じていた… 乾の微笑みの奥に隠されていた虚無感を。 僕と同じ孤独の闇を。 お互いに心を開いたわけではない。 なのに何故か気になっていく。 気がつけば乾を眼で追っていて、その動向を見届けていた。 ひと月、ふた月と経つうちに、その闇はどんどん乾の心を支配していった。 だが気がついているのは僕だけ。 僕は乾の傍を片時も離れずにその行動に注意を払う。 傍から見たら恋人同士に見えていたのかもしれないな。 僕の世話をする間に、恋が芽生えて…なんて3流恋愛小説にもなりえる状況だ。 恋…?いや、これは恋ではない… 同じ孤独の闇を背負った者同士の傷の舐めあいかもしれない… それでも…僕は君が立ち直って欲しいと心から思うよ。 「乾…」 僕は乾の左手首の包帯にそっと触れた。 そう……僕がここに着てから3ヶ月目の満月の夜… 乾は孤独の闇に耐え切れずに自ら命を絶とうと手首を切った… To be continues.
キリリクゲットされた桜月雪華さんからのリクエスト
「迫り来る氷帝」で不二と乾に何があったのか書いて下さい」にお応えしました!
不二と乾はアニメでも何かありそうな気がします…(黒笑)この二人がつるんだら、一体何が起きるのか…(笑)
暫く連載致しますので、お付き合いの程、宜しくお願い致します。
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