等価交換の名の下に〜絆編〜 6
数人の舌が、ロイの身体を這いずり、卑猥な音が小屋中に響き渡る。
首筋に、胸に、腰周りに、内股に、まるでなめくじが這う様に蠢いていた。
時々強く吸い付かれると、ロイの顔が高潮し、そこが性感帯である事を物語る。
片足を高く上げさせられ、その奥に一人の男が進入してきた。
「んっあ…」
すでに形を成しているロイ自身に貪る様に喰らいつく。
身体中から繰り出される快感に、ロイの口はすでに半開き状態で息も絶え絶えに喘いでいた。
「すげぇ反応。こりゃ初めてじゃねーな。」
「そうさ。出世の為に自ら身体を差し出して今ある地位を築いたって話だ。」
蔑むように見下ろし、ロイの顎を掴んで強引に振り向かせる。
半開きの口の中で、ピンク色の下が見え隠れすると、ブラウン中佐は舌なめずりをしながら
その唇に吸い付いた。
ぴちゃぴちゃとわざと音を立てながら、舌を絡め口の中を犯していく。
絡められる舌に素直に応じ、耐える事無く声を上げるロイに男達の欲望は高まっていった。
欲望の頂点に達した男の一人が、ロイを壁に押し付け、怒り狂った己を取り出し前進する。
「うぁああ!!」
「うっ、すげぇ!女なんか目じゃねぇぞ!」
ロイの中のあまりの気持ちよさに、我を忘れて抽出を繰り返す。
がくがくと揺れるロイの身体を押さえつけ、快楽に沈むロイのその表情をもっと引き出そうと、
両脇から胸や下腹部をしきりに弄んだ。
立ったまま犯されているロイを、アルはどうする事も出来ずに見つめていた。
何度となく立ち上がって、その行為を止めさせようとした。
その度にロイに眼で諌められ、拳を握り締め耐えるしかなかった。
何で…どうしてですか…?
こんな事されても何とも思わないんですか…?
潜入捜査は失敗。ブラウン中佐が首謀者だってわかっても今はどうする事も出来ない。
なのに…なんでそんなに余裕の表情なんですか…?
兄さんに知られても信じあってるから大丈夫とでも言うんですか?
僕だったら許さない。たとえ仕事でもそんな風に身体を汚されるなんて。
僕は…もう耐えられない…
あなたがそんな風に乱れていくのを見続けるのは…
「止めろ!いい加減にしないと…」
「どうするって言うんだ?」
「お前がこいつを満足させてやれねぇから、代わりに俺たちがやってやってるんだろ?」
「ほら、大人しく見てろよ。ってその成りじゃ自分の起たせる事もできねぇだろうがな。」
くすくす笑いながら男達はロイと繋がっている部分をわざとアルに見せつけ、卑猥な音を聞かせ続けた。
角度を変え、最奥のポイントを突き上げロイを狂わせて行く。
その度に顔をしかめ、声を上げて反応する。
「大佐!もう止めてください!」
あなたがそんな顔で感じている姿を見たくない…
僕が…元の身体に戻った時…あんな顔をしてくれるだろうか…
兄さんが抱く時も、あんな顔で受け入れているんだろうか…
ロイの中を支配していた男が恍惚の表情になり、一瞬動きを止めたかと思うと、そのまま一気に突き上げた。
同時にロイの顔が苦い表情になると、男は舌なめずりをしながら、己を引き抜いた。
先端からは雫が流れ落ち、ロイの太腿に白い筋が流れ出す。
ハァハァと息も絶え絶えのロイを、他の男たちが床に引きずり倒した。
「今度は俺だ!」
「おい、俺の咥えろよ。経験豊富なら舌使いも上手いだろう。」
ロイの身体の事などお構い無しに、己の快楽を押し付けていく。
散々弄ばれ、明け方近くなった時、ようやくロイは開放された。
「ご苦労さん。満足したぜ。」
「たまにはこういうのもいいねぇ。」
「ホンと、このまま始末するのは惜しいぜ。」
床ににぐったり倒れているロイの髪を掴みあげ、痛みで歪む顔に満足げに笑いあう。
「おい、こいつを奥の部屋に連れて行け。この鎧も一緒にな。」
ロイの横で心配そうに駆け寄っていたアルも指差し、侮蔑の表情で見下していた。
「ふん、情けねぇよなぁ。自分の夫が散々弄ばれても、何一つ出来ないなんてな。」
「鋼の錬金術師と言ってもまだ子供。しかも内乱で殆ど失って機械鎧の身体でいるそうじゃないか。」
可哀想になぁ。何でこんな奴を夫に選んだんだ?
これじゃ、毎晩寂しいだろう?
ニヤニヤ笑いながらロイの下腹部に腕を伸ばす。
くちゅっと音を立て、搾り取られてしまった様に力なく萎えている陰茎を揉み解した。
「んっ、んん…」
「けっ、散々犯したのにまだ足りねぇのかよ。」
吐き捨てながらロイの身体から離れると、リーダー格の男が命令し、ロイとアルは奥の部屋へと監禁された。
アルは錬金術を使われると困ると、両手を後ろに回され固定される。
ロイはそのまま部屋の中に放り込まれた。
もう体力もないと思われたのだろうか。
ぴくりとも動かないロイに縄も何も付けず、男たちは馬鹿にした様に笑いながら鍵をかけた。
「大佐!大佐!大丈夫ですか!?」
「んん…アル…か…」
気だるい身体を何とか起こし、ロイは這う様にして壁まで動き、寄りかかった。
「待ってて下さい!すぐに縄を切ってここから…」
「駄目だ…アルフォンス。縄を切るのはいいが、ここから逃げては駄目だ。」
ロイの言葉に一瞬躊躇し、それでも後ろ手の縄は引きちぎり、部屋に無造作に散らばっていた毛布を
ロイにそっとかけた。
優しく微笑むロイに、アルの胸は痛む。
「どうして…」
「ん…?」
「どうしてこんな事を…自ら汚されるなんて…」
「どうしても夜が明けるまではここに居て貰わないといけないからね。」
冷静に答えるロイに、アルはじっと見つめていた。
「潜入捜査じゃないんですね…これは。」
「そうだ。囮捜査だ。軍がここに来るまで、テロリストたちとブラウン中佐をここに
引き止めなければいけない。」
「だからってあんな事…」
「…あんな事を平気でする私は最低か…?」
アルの視線を受け止めながら、反らす事無く見つめ返す。
「仕事…と割り切ってしまえば何て事はない。」
「本心で言ってるんですか?」
「アルフォンスはどう思う…?」
「僕は耐えられません!好きな人がこんな事…」
そう言ってアルははっと口に手を当てる。
だがロイは慌てず優しく微笑み続けていた。
「君が私を思ってくれていたのは気がついていたよ…」
だからこそ、君と一度ゆっくり話し合いたかった。
ロイの思いがけない言葉に、アルはどういっていいのか判らず呆然としていた。
「知ってたんですか…」
「…鋼のと同じ眼で私を見ていたからね…」
「でも僕は…」
「鎧の眼でも判るよ。」
その大きな想いを込めた瞳の強さは。
優しく見つめる漆黒の瞳に、アルは思わず眼をそらした。
「兄さんなら…」
「アル…?」
「兄さんなら大佐がこんな事しても大丈夫なんですか!?」
兄さんなら、お互い信じあってるから…?
兄さんも黙って耐え抜けるの?
二人の絆ってそういうものなの…?
だがロイはくすっと笑い、小さく首を横に振る。
「鋼のがもしここにいたら、きっと私が止めるのも聞かずにここの連中全員をぶちのめしていただろうよ。」
あれは後先考えない単細胞だから。
くすくす笑いながら遠くを見つめている。
その先にエドがいる事をアルは感じ取っていた。
「僕は…大佐の役に立ちたい一心で耐えていたのに…」
「アルフォンス…私がこんな事をして時間を稼いだのは、隣にいたのが君だからだ。」
真剣な眼差しで語ると、ロイは腕をそっと伸ばし、アルの顔に添えた。
「鋼のが…エドワードが隣にいたら…私はきっと抵抗しただろう。」
私は出世の為にこの身体を何度も使った。それは否定しない。
テロリストを捕らえる為に自らの身体を使う事も何とも思わない。
「だが…鋼のには…出来る限り見せたくない。見て欲しくない…」
愛している人に見せる光景ではない…
たとえ任務でも…たとえ独裁者の命令でも…
「僕には…見せても平気だと…」
「基本的には見せる様なものじゃない。だが今回のケースは仕方がないね。」
くすっと笑い、眼を閉じる。
その表情は、つい先程まで陵辱され続けたとは思えないほど穏やかだった。
僕の前では…任務の一環としてこんな行為をしても構わないと…
でも兄さんだったら…
「僕とチームを組んだのもその為ですか…?」
兄さんと組んだら囮捜査にならないから…?
自分が犯されていく姿を見せたくないから…?
任務に…私情を挟んでしまうほど、あなたは兄さんの事が好きなの…?
「これを兄さんが知ったらどうなると思ってるんですか?」
「鋼のが知ったら、きっと烈火の如く怒って、私を怒鳴りつけるだろうね。」
怒って、責めて、そして抱き合って…
互いの思いを確かめ合い、未来への決意を強めていく。
「私とエドワードの絆だよ。アルフォンス…」
「大佐…」
「出来れば君が黙っていてくれると助かるんだがね。」
優しく微笑み、アルの手をポンと叩く。
アルは拳を握り締めながら、すっと俯いた。
「僕が鎧の姿だから…だから…」
「君とエドが反対でも、私はエドを選んでいた。」
人と人との繋がりとはそういうものだ…
アルの手にロイの手を添えながら、ロイは諭す様に語っていった。
だが、アルはロイの手を振り払い、すっと立ち上がった。
「アル…?」
「…認めない…」
「絶対に認めない!僕だって大佐が好きなんだ。」
驚くロイの腕を掴み、そのまま床に押し倒す。
すばやい動きで練成陣を描き、そこから手械を練成した。
「アル!!」
「僕は鎧の姿だから、大佐と繋がる事は出来ない。」
静かに語りながらアルはロイにかけていた毛布を引き剥がす。
首筋から身体の線をなぞる様にゆっくりと触れていった。
「アル!止めろ!私は…」
「何故?散々やられたんだから、僕がしても構わないでしょう?」
僕はあなたを感じる事は出来ない。でも、あなたを感じさせる事は出来る。
僕は何でも作れる。あなたが悦んでくれる様な物を…
ロイの真横で再び練成陣を描き、練成を開始する。
青白い光の中から出てきたのは、テロリストの男の陰茎を形どっていた。
大佐…僕にも見せて…
兄さんに微笑むあの笑顔を僕にも見せて…
そして僕だけに微笑んで…
アルがロイの上に迫ってきた時、その鎧から見える眼の輝きは悲哀に満ちている様だった。
To be continues.