緑色の恋心   1


15歳の少年へ恋心があるなんて思っても見なかった…
そう気が付いたところで、どうにもならないとすぐに悟る。

それが大人の事情…そう心に言い聞かせながら又、彼は私の所にやってくる。





「でさぁ!今度そこに行ってみようかと思うんだけどさぁ…」


今日も私の執務室では、部下達が黙々と職務を果たしている。
私が上を目指す為の手助けをする、その尊い目標の為に。


私のデスクの上に腰を下ろし、饒舌に語る少年に、少しうんざりしながら書類にサインをする。
中々相手をしない私に業を煮やしたのか、鋼の二つ名を持つ少年が書類をさっと取り上げた。

「何をする?これにサインをしないと仕事が終わらないのだが?」
「いい加減、人の話を聞けよ。」
「ちゃんと聞いているさ。」
「俺の目を見て聞けよ、大佐。」

私の頭をぐっと掴み、自分の方へと向けさせる。
金色の瞳が私を映し出している。

「よさないか…私は忙しいんだ。」
そう言ってその手を振り払い、書類を奪い返して視線を戻す。

その金色の瞳に見つめられるのは…正直苦手だ。
活力に溢れたその輝きは、私を困惑させる。

「俺、ルカー博士の所に行くからな!明日までに連絡が無かったら絶対来てくれよな。」
「はいはい、判ったから私に仕事をさせてくれないか。これが終わらないと中尉に怒られるんだ。」
「けっ、自分の仕事が遅いのはあんた自身のせいじゃないか。」
がたんとわざとらしく机から飛び降り、一枚の紙を机に叩きつけた。


「頼んだからな。絶対忘れるなよ。」

少し真剣な口調で言うと、鋼のはくるりと向きを変え、執務室から出て行ってしまった。
その後姿を見届けると、机の上のメモを手に取った。

「…ルカー植物研究所…?」
こんな所に何をしに行くつもりだったんだ…?
首をかしげながらそのメモを上着のポケットに仕舞い、私は再び書類に意識を集中させた。




それから数時間後…

私はある一本の電話で呼び出される。



「お休みの所すみません大佐。」
「中尉か…どうかしたのか?」
「中央からある人物の逮捕状が届きました。大佐の管轄ですのでそちらで容疑者を確保せよと。」
「逮捕状?それは諜報部の仕事じゃ…」
「錬金術師だそうです。ですので大佐の力が必要だと。」
「…わかった。すぐにそちらに向かう。」


電話を切ると、私はさっき脱いだばかりの軍服に再び着替え、東方司令部へと車を進める。
執務室にはすでにハボックやブレダ、ファルマンが集まっていた。

「再びの登庁、ご苦労っすね。」
「こんな仕事だ。仕方ない。フュリー曹長はどうした。」
「一足先に現場に行ってます。中の様子が全くわからないので電話線から盗聴できないかと先発隊から連絡がありまして。」

ホークアイ中尉が敬礼をしながら状況を話す。
そして一枚の紙を私に手渡した。

「逮捕状…フィリップ・J・ルカー博士…?どこかで聞いた名だな。」
「植物を主に扱う錬金術師です。植物の治癒能力を錬金術に生かし、治療薬を作ると言う研究をしていました。」
「軍にとっても役に立つ研究じゃないか。何故逮捕状が?」
「それは表向きの研究で、裏ではどうやら合成獣…合成植物ですね、それを作っていたそうです。」

合成獣…キメラか。確かに危ない研究ではあるが、ちゃんと届ければ違法ではない。

「その合成植物に何か問題が…?」
「はい…確たる証拠はまだないそうですが…どうやら人間を使っていたと…」

人体練成…!?成る程。

「あそこの研究室に何人かの浮浪者が紛れ込み、そこから戻った者は居ないと噂が立っています。」
「潜入調査をしていた中央の軍人が消息不明なんだそうです。」
「成る程。それで業を煮やした中央が強硬手段をとったというわけだ。」

何があるか判らないから、東方司令部の人間を使うって寸法か。全く。
眼の上のたんこぶになりそうな私を使い、あわよくば相打ちにでもさせたいのか?
出る杭は打たれると言うことわざもあるが…まぁ構わんさ。

これを上手く利用し、出世に使わせて貰おう。


「又変な事考えてますね、大佐。」
ハボックがタバコをふかしながら、にやついている。
「別に。中央が手柄を私にくれるというのだからありがたく受け取ると言うだけだよ。」
逮捕状を綺麗に畳むと、胸のポケットに仕舞い込む。


ん…?

「何だ…このメモ…」
ポケットにあったメモを取り出し、それを広げる。


見覚えのある文字で書かれていた文字に私ははっとなった。


「ルカー研究所…!?確か鋼のもここに行くと…」
「!!そう言ってました!彼は戻ってるんですか?」
「中尉!!」
「すぐに確かめます。」

私のただならぬ雰囲気と、事の重要さに中尉がすぐに反応する。
こういう時、彼女はその才能を惜しみなく発揮できる。

数分後、彼女は戻り、その表情から察する答えを私に告げた。


「エドワード君とアルフォンス君は…昼出て行ってから戻ってないそうです…」
ホテルの従業員が部屋を開け確かめたのでそれは間違いないそうです。

ではあの研究所に行ったきり帰って来ていないという事か。

一瞬の沈黙の後、私は発火布を右手にはめ、厳しい表情で指示を出す。



「今よりルカー博士を逮捕しに行く。逆らう奴は容赦するな。」


全員が真剣な表情で敬礼をかざす。


無駄な話もせず、一瞬の無駄も無く行動する。
東方司令部から少し街外れにあるルカー植物研究所。


無事で…無事で居てくれ…


そこに乗り合わせた全員が皆同じ事を祈りながらトラックは走り続けた。



      
To be continues.

     




新連載始めました!

前々から書きたかったとあるプレイ、「触手」(くす)
だが色んなサイトさんで取り扱ってる「触手」…鬼畜な運びにするにはネタは尽きたか!?

どう転がそうかと色々考えていたら、浮かんでしまった。触手ラブリィネタ。(笑)
後は思いつきのまま進む進む。

触手とロイの淡い恋心をご堪能下さいませ。(おい)
勿論、触手といえば鬼畜も忘れてませんよ〜(にや)



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