翌朝、博士を駅まで見送った後、私達はそのままイーストシティ行きの電車に乗り込んだ。 列車の中で、鋼のは博士との経緯を話してくれた。 研究資料を見た感想、それが失ったものには効かない事が判る。 切れた物を繋げる事は出来ても、失った部分を生やす事は出来ないんだそうだ。 少しガッカリした顔をするので、金髪の頭をよしよしと撫でてやる。 「何すんだよ!子供扱いするな!」 「おかしいなぁ。子猫は大抵こうすると喜ぶのだが。」 「誰が豆粒どちび子猫じゃ!!!!!」 エドが真っ赤になって怒っている。 私はそのしぐさ一つ一つが愛しくてたまらなかった。 カンカンになって怒っていても私がにこやかに笑っていると、調子狂ったのか怒るのをやめ、窓の外を見てしまった。 走り抜ける景色を見ながら、エドは小さく呟いた。 「大佐…」 「何だね?」 「…俺も好きだよ…あんたの事。」 金色の瞳が私をしっかりと映し出す。 その時の私の顔は、きっと今まで見た事がないくらい歓喜に満ち溢れていただろう。 イーストシティに降り立った私達はその足で博士の研究所後へと向かった。 林を抜け、黒い焼け跡に車を止める。 「すっかり焼け落ちてんな…」 「ガスが爆発したからね。それに本とか燃えやすい物が散乱していたし。」 研究所内を歩くと、パキンと炭が割れる音が響く。 地下に続く入り口も黒く焼け焦げ、中にも火が回ったらしく、すべてが灰と化していた。 「あのキメラも…研究資料も全部パァか。」 「だが博士は研究内容はすべて頭の中に入っているから心配ないと言っていたぞ。」 「グラン准将達が地下の資料を持ち出したそうだな。」 パシッと足で炭を蹴りながら、エドは何かを探している。 何を探しているんだ…?鋼の… 「あんたも軍にあの研究を持っていかれるのは不本意だったんだろ?何で地下の事教えたんだ?」 「キメラが将軍に持っていかれそうだったのでな。等価交換で地下を話した。」 それだけか…?という顔で私を見つめる。 はは。君に隠し事は出来ないな… 「地下の資料は全部読んでもあのキメラは錬成できないよ。そうだろう?」 「やっぱり気がついてたのか。」 「当然だ。ある程度読めばすぐわかる。」 「一番要の部分をちゃんと持ち出したんだろう?エド。」 「まぁな…地下で一昼夜過ごしたからね。博士と俺とアルで手分けして分別して…」 そう言いながら、エドはすっとしゃがみこんだ。 「エド?どうした…?」 「見つけたぜ。ほら、こっち来いよ。」 エドが笑いながら手招きをする。 私はやれやれという気持ちで側に駆け寄った。 「何を見つけたんだ?鋼の…」 「これ。ちゃんと手入れすればまだ間に合うかもしれないぞ。」 黒い墨を掻き分け、地面から出てきた黒焦げの木を指差した。 「?ただの焼けた廃材だろう?」 「ばーか。よく見ろよ。」 エドが私の手を引っ張り、その木に触れさせる。 トクン…トクン… 木から鼓動が伝わってくる… 「エド…これは…」 「博士が言ってただろう?根があれば再生は可能だって。」 まさか…まさかこれはあの『彼』の… 「しかし…こんなに焦げてしまってはもう再生など…」 「生き物の生命力って半端じゃねーぜ。こんな黒焦げの根からも芽が生えてくるんだ。」 俺の家を焼き払った後を見てきてそう感じたんだ。 焼けたあの木から…一本の芽が生えていた。 「ま、芽が出るかどうかは大佐次第だな。世話できるか?」 「馬鹿にするな。これでも錬金術師だ。研究はお手の物だぞ。」 「ちゃんと芽、出させろよ。大佐。」 あんたの想い人だろう?それは。 くすっと笑いながらエドは私の首に手を回しキスをする。 舌を絡める大人のキスを交わし、私はエドの額に自分の額をこつんと合わせた。 「ああ…愛していたよ…お前と同じくらいに…」 『彼』に取り込まれたお前の想いごと愛していたよ… 焼け跡を後にし、アルフォンスの居るハボックの家には向かわず、少しばかりの寄り道をする。 エドは文句は言わず、黙って私の行く所に着いて来る。 町の中心部にある軍の宿舎。エドを私の部屋に招き入れる。 「大胆。」 「嫌ならいいぞ。」 「冗談!据え膳だぜ。」 お互い微笑みながら頬に触れ、そしてキスを交わしていく。 首筋に触れられ、胸にキスをされ、陰茎に舌が這われた時、私は歓喜の声をあげた。 互いの名前を呼びながら、私達は一つに繋がる。 「大佐…愛してるよ!大佐!」 「エド…あっああ…いいよ…エド…」 何度となく果て、そしてまた繋がっていく。 最後の一突きの後、私達は暫く眠っていたようだ。 突然の電話に起こされ、エドは必死で謝っていた。 「ごめん、大佐。俺行くよ。」 「ああ…私も司令部に戻らなければ。」 エドは失った物を取り戻す為に。 私はこの国のあり方を変える為に。 いそいそと服を着るエドに、私は背後から抱き締めた。 「鋼の…また…ここに戻って来い。」 震える腕に、エドがそっと触れてくる。 「馬鹿だな。俺はちゃんと戻ってくるよ。」 あんたの元に戻ってくるよ。 するりと私の腕から抜け出し、エドは振り返る事無く部屋を去っていく。 また会えるから、振り返ってその姿を目に焼きつけるなんて事とはしない。 私は再びベッドに横になり、さっきまで居た愛しい人の温もりを感じ取っていた。 身体中に残されたエドの痕跡を指で辿りながら、私はもう一度眼を閉じた。 一連の事件が過ぎて一ヵ月後。 中央ではグラン准将があの治療薬の研究を進めているという噂が聞こえてきた。 「大丈夫なんですか?大佐。」 「何がだ?」 「軍があの治療薬を開発させてしまったら、折角博士を逃がしても意味ないじゃないですか。」 「まぁ、そうだな。」 ハボックの問いに空ろに答え、いつもの職務に戻っていく。 鋼の兄弟は相変わらず、求めるべき答えを探して各地を旅している。 時折ここに戻ってきてくれる。私の元に。 そしてお互いの思いを確かめ合う。 時には熱く。時には優しく。 時間を惜しむように、私達は愛し合う。 「あら、大佐、これ少し水を上げたほうがいいんじゃないですか?」 「そうか?気がつかなかった。ありがとう中尉。」 机の脇に小さな植木鉢があり、そこに植木鉢に見合う小さな芽が生えている。 「大佐がガーデニング?似あわねーな。」 「失敬な。これでも花を育てるのは得意だぞ。」 「大佐は花を育てるよりも、花をあげる方が得意なんじゃないっすか?」 笑い声が司令部の中をこだまする。 私は小さく微笑みながら、その芽にそっと触れていた。 「大丈夫。ちゃんと育てて見せるさ。」 愛情を注ぎ、慈しみ、立派な花になるよう育てるよ… そしていつか…もう一度その笑顔を見せておくれ… 私の愛しい、もう一人のエドワード… The End.
「触手が書きたい!」と思ってから色々ねたを考えておりました。
人間外の物とのSEXなんていったら、もう鬼畜しかないじゃないか。
そしたら閣下がそれらしい物を用意して弄ぶか、エドがそれらしい物を錬成して弄ぶか…
でもそんなの他のサイト様で沢山見てる。しかも私なんかよりも絶対上手いし美味しいし。
そして行き着いたのがラブラブ触手プレイ。(笑)
植物に恋をしたらどうなるか。そう考えてみるとあれまぁ、次々とネタが浮かんでくる事!
ラブラブなロイ受けもまたいいものですねぇ。
しかし…途中で鬼畜に飢え始めましたが…(苦笑)