性春18禁きっぷ 2
山崎からチケットをもらった3日後。
大阪行きの支度を済ませ、土方は江戸の駅に一人で向かっていた。
「青春18きっぷは特別な切符なので、それ専用の改札口がある」
そう聞かされていたので、駅についてまずその改札口を探した。
江戸の駅と言えば首都の玄関口。
人はごった返し、探そうにもあまりにも広すぎて検討がつかない。
土方は駅の職員に切符を見せて、改札口はどこか尋ねた。
「ああ、この切符なら聞いています。こちらです。」
駅員は通常の改札口から少し離れた場所へと案内する。
中央口の雑踏の多さに比べて、ここは人通りが極端に少なかった。
まるで自分だけに用意された改札口のようだ…
そう考え、少し優越感に浸りながらも導かれるまま駅構内へと足を運ぶ。
ホームに向かうと、そこには通常のローカル列車がすでに止まっていて、
乗り込もうとする乗客で溢れていた。
土方も普通に電車に乗ろうとすると、駅員がそれを制した。
「ああ、その切符の方はこちらです。」
は?という顔を見せながらも、切符のシステムがまだよく判っていない土方は
黙って駅員の後ろをついていく。
ローカル列車の最後尾に土方は案内された。
「この車両なのか?」
「はい。その切符をお持ちのお客様は、乗り換えがある駅毎に
確認しなければなりません。」
「一つの車両にまとまって頂けると、確認がスムーズにできて
列車の遅延防止にもなるのです。」
なるほどな、と思い、小さく頷いてその車両に乗り込むと、中には誰もおらず
土方一人だけだった。
この先の駅で乗り込んで来るのかな…
そう思いながら、荷物を誰もいない座席に無造作に置き、座席へと腰を下ろす。
これから9時間の長旅。煙草も吸えないし、これは辛いな。
何かしら時間つぶしが出来るようにと本を持っては来たが…
ジリリリリ!
発車のベルが鳴り、電車が少しずつ動き出す。
放浪の日々を経験している土方にとって、旅はさほど珍しくはない。
しかし、やはり窓の景色が日常の風景から徐々に遠ざかっていくのは感慨深い。
どんな時でも旅っていうのは少しわくわくするものだな。
そう思いながら窓の外を見ていると、「ガラっ!」という
ドアが開く音がして、その音の出た方向に目を向けた。
なっ!?
一瞬目を疑った。
何故?お前がそこにいる…?
「総悟…?」
土方の方から目線をそらさず、後ろ手でドアを閉める。
小さく「カチリ」とカギが閉まる音がしたのを、土方は聞き逃さなかった。
「おい!どういう事だ?今鍵がかかったぞ?」
「当然でさぁ。今からこの車両は俺専用になるんだから
誰も入れさせねぇように鍵はかけなきゃ。」
「あ、あと、あんたが逃げ出さないように、の意味もある。」
どういう事だ!?
逃げるって何が…
「熱海までの2時間、俺が買ったんでさ。」
買う…?買うって何を…?
「経費削減、そして資金調達の一石二鳥とは、伊東先生も考えたものだ。」
資金調達…?伊東の野郎が何を考えたって…?
バンっ!!
総悟は、驚きと困惑のあまり身動きとれない土方の目の前に立ち、
乱暴に窓に手を置き、抱え込むように土方の頬を撫でる。
「俺があんたを2時間、30万円で買ったんでさ。」
「性春18禁きっぷとは考えたもんでぇ。おかげで経費も削減でき、
資金も調達できる。」
ま、俺が壊した分の賠償金に比べれば焼け石に水ですがね。
それでも、ただ金掛けて大阪に行くよりはずっと効率的だと思いませんかぃ?
総悟はにやりと笑いながら強引に土方の顎をつかんで引き寄せ、唇を奪った。
歯列を無理やりこじ開け、露わになった舌をからめ取る。
「んっふ…ん」
いきなりのディープキスに抵抗する暇なく、良いように弄ばれる。
いつも交わす慣れたキスだが、場所と状況が頭を混乱させ、
より一層感覚だけが先走った。
「んっ、総…悟…」
「いつもより情熱的ですね。この状況を理解しサービスしてくれてんですかぃ?」
カッと目を見開き、隊服のボタンに手をかけようとしている総悟を払いのける。
隣の車両とつながっているドアまで走るが、当然鍵はかけられているので
開く事は出来ない。
ガチャガチャと虚しい音だけが車両に響き渡った。
「無駄でさぁ!さっき鍵かけたって言ったじゃないですかぃ。」
「総悟!これはいったいどういう事なんだ!伊東の野郎が何をした!」
「やれやれ。まだこの状況を飲み込めてないんで?」
総悟は着物の袂から1枚の切符を取り出す。
それを土方の方に投げ渡し、土方はそれを警戒しながら受け取った。
性春18禁きっぷ
そこにはそう書かれていた。
そして「江戸〜熱海」30万円也とも書かれている。
これは一体…?
「江戸から大阪までの9時間、4回乗り換えがあると説明受けてますよね。」
「その4回乗り換えってぇのは、列車を乗り換えるんじゃなく、客を乗り換えるんでさ。」
「5枚つづりの切符、1枚はあんたの運賃として。残りは4人の客が買い取ったんでさ。」
土方さん。あんたごと、この車両と時間を。
買い取ったら何をしても構わない。
お酒を飲みかわす?冗談じゃない。そんなお子様みてぇな事はしませんぜ。
せっかくの2時間、やる事は決まってる。
「ほら、さっさと脱ぎなせぇ。2時間しかないんだ。時間は有効に使わなきゃ。」
「ちょ、ちょっと待て!俺は何も聞いちゃいねぇ!大体公共の場を使ってこんな事が
許されると思っているのか!?他の客に知れたらどうするんだ!」
「この列車はローカルだろう?各駅停車だ。駅ごとにドアが開いて他の客が入ってきたら…」
そう言いながら特別の改札口に通され、切符を持っている者専用の車両に
通された事を思い出す。
「まさか…この車両は…」
「ご明察。この列車は各駅に止まるけど、この車両のドアは熱海まで開かない。」
だから熱海までの2時間は俺と土方さんだけなんでさ…
ゆっくりと土方に近づき、震えてるその手をそっと握る。
そのままぐぃっと体を引き寄せ、再び唇をふさいだ。
今度はねっとりと、その感覚を味わうように舌を絡める。
息を合わせ、土方の欲情を引き出すようにゆっくり、しかし確実に攻めていく。
長いキスが終わるころ、土方の顔が上気したのを見て、総悟はにやりと笑った。
褒めてくだせぇ、土方さん。熱海までの2時間の区間が一番高額だったんだ。
誰にも渡す気はしなかったんで、一カ月の給料全部つぎ込んだんですぜ?
耳打ちでそう呟きながら、土方の隊服のボタンを一つずつ外していく。
露わにされた胸元に手を差し入れ、広く逞しい胸を撫でまわす。
はぁはぁという息遣いが車両の中に響くと、総悟は土方の手を撮り、
つり革につかまらせた。
「何を…」
「折角のこのシチュエーションだ。普段は出来ないプレイで楽しみましょうや」
両手でつり革につかまり、その背後から総悟が手を伸ばし体中を弄り撫でる。
窓からは景色が流れるように見え、それがいつもの日常の行為とは
かけ離れていると感じ、さらに興奮度が増していく。
「あっ…あ…」
「興奮してきましたかぃ?俺もでさぁ。」
背後からまわされた手が下腹部に伸び、そのままズボンのベルトが外される。
ボクサーパンツの下はすでに半起ち状態で、布越しでそれを扱いていく。
甘い刺激に耐えきれず、俯きながら自身を弄る手を見つめる。
「んっ…あ…総悟…」
布越しじゃなく直接…
そう言いかけてふと顔を上げた時、窓から見えた景色に心臓が止まりそうになった。
人が…見ている…?
ローカル列車なので各駅に停車するのは分かっていた。
各駅に止まれば当然ホームに人がいる。
車両のドアは開かないので人は入って来ないが、ホームから中は丸見えじゃないか!
「総悟!止めろ!人が見ている!」
「見られた方が興奮するんじゃねぇんですかぃ?」
「やっ…だ!離せ!総悟!」
身をよじって逃げ出そうとする土方に、総悟はすばやくつり革と左手首に
手錠をかけ、そこから逃げられないように括りつけた。
いきなりの拘束に一瞬我を失ったその隙に、もう片方の手も同じように
つり革に括りつけられる。
そこから逃げる事も屈む事も出来なくなった土方のわき腹を
総悟は優しく撫でまわす。
背後から外に見せつけるように体中を弄り、ズボンと下着を一気に下ろす。
すでに完全に起ちあがってる土方自身をぎゅっと握りしめた。
「ひっあ…」
「ほら、やっぱり身体は嘘を付けねぇ。みてくだせぇ、こんなに興奮汁垂れ流してますぜ?」
じゅるじゅると音を立てて擦りあげると、羞恥心と興奮でそれはますます膨れ上がる。
布越しでの愛撫に焦らされ、やっと直に触って貰えた喜びを身体は素直に反応した。
窓からは視線で、下腹部からは音で犯されてるように感じて
土方の興奮は最高潮に達してきた。
「あっ…んっ、もう…」
「もうイくんですかぃ?やっぱり見られてた方が感度抜群になるんですね。」
総悟の手の動きが早まると同時に、土方自身のこわばりがビクビクと脈を打つ。
悲鳴に近い声をあげ、土方は一瞬動きを止めると、己の精を一気に吐き出した。
「あっつあ…」
「結構出ましたね。それにいつもより早い。」
手についた精液をさらに絡め取ると、双丘の間を人差し指と中指で優しくなぞった。
人差し指をぐいっと差し入れると、土方の身体がびくびくと震えだす。
ぐりぐりと中を掻き乱し入り口を広げてもう一本こじ入れる。
「んっふっ…」
痛みと快感に堪えていると、車両ががたんと動き出す。
電車が発車したらしく、人の視線が土方のほうから外れていく。
ほっとしていると下腹部から激しい痛みが突き上げた。
「ひっあああ!」
「列車が動き出したんで、次の駅に止まるまでに俺がイかねぇと
またホームで視姦プレイ状態になりますぜ?」
「んっくっ…総悟…」
「ほら、必死で俺にご奉仕してくだせぇ.。」
総悟は土方の腰をつかみ、列車の動きに合わせて突き上げていく。
ズッズッと卑猥な音が社内に響き渡り耳から土方を犯していた。
背後から手が伸び、土方自身をぎゅっと掴む。
そのまま上下に擦りあげ、同じく腰の動きも激しさを増す。
下腹部二箇所からの刺激に土方は耐え切れず、悲鳴に近い喘ぎ声を解き放った。
「あああっあ!総悟!!」
「気持ち良いですかぃ?俺もでさぁ。土方さん。」
前の刺激と後ろの突き上げであまりの快楽に意識が跳びそうになっていく。
沖田の動きが少し早まり、こちらも限界が来ているようだった。
「うっああ、総悟!もうイク!!」
「俺もイキます。土方さんもいつものように派手にイってくだせぇ!」
二人の動きが一瞬止まると、総悟は土方の中に、土方は白濁の液を
前方の座席へ豪快に飛ばした。
ぐったりと力尽き、本当なら横になって休みたいが、両手首にかけられた手錠が
それを許さなかった。
半ば吊るされるような格好で荒い息をしていると、後孔から異物が抜き出される。
「んっ…」
「ふぅ…」
どろりと白濁の液が流れ落ち、太ももを伝い床に広がっていく。
総悟は袂から鍵を取り出し、土方の両手首にかけられた手錠を外した。
ドサッという音とともに土方が床に崩れ落ちる。
はぁはぁ、と肩で息をしているその身体を、総悟は無造作に掴み
前の座席に押しつけた。
「っあ、総悟?」
「何休んでるんで?まだ熱海に着くまでは1時間以上ありますぜ?」
それに、あの一回で俺が満足するとでも?
にやりと微笑むその顔を見て、土方は背筋が凍りつく。
列車は横浜を過ぎ、海へと目指していた。
To be continues.
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