瀬人様総受け物語1〜社長室(モクバ)編〜
俺は社長室で書類にサインをしていた。
今日は珍しく仕事は立て込んでいない。
「久しぶりにどこかへ行くか…」
後数枚で終わる書類の束を見つめながら、
これからの時間の使い方を模索していた時…
トントントン…
社長室のドアがノックされる。
誰だ…?この後約束なんてあったか…?
「誰だ。」
そうぶっきら棒に答えると,ぎぃっとドアが開く。
「兄さま!今大丈夫?」
屈託のない笑顔で入ってきたのは弟のモクバだ。
そう言えば…ここの所、ろくに顔を会わせてなかったな。
「大丈夫だ。何か用か?」
「ううん、磯野に聞いたら今は忙しくないって言ってたから…」
ちょっと会いたかっただけ。
そう言いながらモクバは俺のすぐ脇までかけてきた。
椅子越しに俺の腕にしがみ付く。
少し寂しい思いをさせてしまっていたか…すまない。
「最近忙しくてな。お前の相手もしてやれなかった。」
「いいよ。兄さまは社長だもん。忙しいのは判ってる。」
でもちょっと寂しかったから甘えさせてね。
そう言ってモクバは俺の頬を掴み顔を近づけてきた。
!?!?こんなキス!何処で覚えた??
いきなり後頭部を掴まれ、ぐっとモクバの方へと引き寄せられた。
驚くより早く唇を奪われる。
以前の肉親としてのキスではない。
「モク…バ…!?」
呻く俺の歯列を割って、舌を差し込んできた。
驚いて逃げようとする俺の舌を、モクバが俺の咥内で追いかける。
狭い中では逃げようもなく…絡め取られて強く吸われた。
その動きは絶妙で。
俺の理性が狂っていきそうだ。
「どう??兄さま。」
屈託のない笑顔で微笑んでいる。
モクバはすっかり脱力した俺を椅子の背もたれへと押し付ける。
「大丈夫?兄さま…」
無邪気に俺の膝の上に乗り、馬なりになった。
さり気なく俺の両手を掴んで肘掛に押し付けている。
「モクバ…」
「兄さま。俺…」
モクバの顔がすっと近づいてきた時。
『社長、お客様です。お通ししますか?』
机の上のインターホンが鳴り響いた。
俺はモクバを押しのけてそのインターホンを取ろうと試みる。
だが一瞬早く、モクバがスイッチを押してしまった。
「今兄さまは忙しい。帰って貰え。」
待て!と俺が言うのより早く、モクバはインターホンを切る。
俺が動こうとすると、モクバがドンと俺の上に乗っかり、俺の手首を押さえつけた。
「モクバ!いい加減に…」
「兄さまは本当に疎いんだよな。」
モクバの左手が俺の頬をそっと撫でる。
疎い…?何にだ?
お前は俺の弟で、大事な家族で…
「一番兄さまを愛してるのは俺だぜ?」
すっと近づいてくるその顔を避ける事が出来ない。
モクバ…俺は…
バタン!!
物凄い音がして、社長室の扉が開く。
「何処が忙しいって??」
…また招かれざる奴がやって来た…
「それの何処が忙しいって!?」
つかつかと入ってきたのは遊戯だ。
俺やモクバの許しがなくて入って来れるのは遊戯かペガサスぐらいなモンだ。
「ちっ、遊戯かよ。」
「コラァ!モクバ!海馬の上から退け!」
「フン、俺達は兄弟だぜ?別に甘えてもいいじゃないか。」
遊戯に見せつけるかの様にモクバが俺にしがみ付いて来た。
確かに、兄弟何だからこの仕草は何でもないが…
どさくさに紛れて俺の頬にキスをしていた…
「こらあぁぁ!どさくさに紛れて何処にキスしてる!?!?」
「煩いなぁ!家族のスキンシップしてるんだから出て行け!」
べぇっと舌を出して、益々俺にしがみ付いて来る。
やばい、遊戯がマジに怒り出した…
「貴様!!闇のゲーム食らわせるぞ!!」
「へん!出来るモンならやってみな!」
「ようし!みてろ!!」
遊戯の額が光りだす。いい加減に…
「しないか!!!」
傍にあったカードを遊戯に向かって投げつけた。
パッとそれを器用に受取った遊戯が、ニヤリと微笑む。
何だ…?俺は何を投げつけた?
れみよ様絵&文
ったく、危ないな・・・ん?何だ?」
カードの絵柄を一瞥した遊戯の顔が嬉しそうに歪んだ。
「・・・青眼か、海馬オマエずいぶん気前がいいじゃないか」
絶句。
「でも別に今さら青眼なんて俺のデッキには要らないしな。どうするか・・・」
「遊戯!テメー兄サマの青眼返せよ!」
俺のかわりに声をあげたのはモクバだった。
「なんだよモクバ、これ俺が海馬に貰ったんだぜ?」
「うるっせー、そんなの偶然だ、偶然!」
「・・・にしても今は俺がこのカードをどうするか決められる、そうだろ?」
ぴらぴらと青眼をつまんで見せる。
「貴様・・・青眼に傷を付けたらどうなるか解っているだろうな」
どうにか再起動させた頭で啖呵を切っても、強がりにしかならない。
現に遊戯が言ったことは事実なのだ。
「だってよ、モクバ。ほら、兄サマの青眼を傷つけられたくなかったら、
どうすればいいか解るだろ?」
言葉に詰まったモクバは、仕方なく俺の上から(恥)降りた。
・・・しかしこれで遊戯が素直に青眼のカードを返すとは、どうしても思えない。
「さ!兄さまのカードを返せ!」
「う〜ん、どうしようかなぁ〜」
遊戯はニヤリと笑いながら俺のカードをチラチラ見せつける。
全く…俺の引きの良さも時と場合を考えてくれ。
「俺は海馬と話がある。モクバは席を外せ。」
「フン!そんな事聞ける訳ないだろ!?」
「じゃ、俺は帰る。カードはありがたく頂くとしよう。」
「待て!遊戯!!」
くるりと背を向ける遊戯に俺は思わず奴を引きとめた。
遊戯はしてやったりの表情でカードを見せている。
クソ…今はブルーアイズを保護するのが先だ。
「モクバ、席を外しなさい。」
「兄さま!!」
「兄さまの言う事を聞け。いいな。」
優しく諭すように話しかけ、モクバの頭をそっと撫でる。
モクバはこの手に弱い。じっと見つめながらこくんと頷いた。
「判った、兄さま…遊戯!兄さまに変な事したら許さないからな!」
そう睨みつけながらモクバは部屋を出て行った。
…変な事…?変な事って…
「や〜〜っと邪魔者がいなくなったぜ?」
遊戯の声のトーンが低くなった。
ここは社長室で、俺の他誰もいなくて…
俺が呼ばない限りあのドアは開く事はない。
………変な事………って???
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