それは、何の前触れもなく訪れた。
突如現れた皇帝は、抵抗の隙を与えず瞬く間に聖地と女王を奪い、守護聖すらも捕らえる事に成功した。
だが、幽閉された守護聖達は、別宇宙の女王アンジェリークや女王試験に協力した教官達の手により無事に救出されることになる。
彼らは、光の守護聖ジュリアスの指揮のもと、洗脳された人々や星々を解放しながら、一歩ずつ着実に女王を宇宙を救うべく皇帝へと向っていた。
繰り返される慣れない戦闘の毎日に、疲れ果てる者達を叱咤激励するジュリアス…彼自身も疲労を感じていたが、
そんな事は、おくびにも出さずただ前を向き突き進む。
首座の守護聖の名に賭けて、倒れる事など自分自身に許されなかった。
森での野営、倒れ込むように寝入る仲間達をジュリアスは、見守るように見つめていた。
陛下を救出できるのは…元の平和な宇宙に戻せるのは…いつのことだろう。
この戦いを早く終らせて、あの者を危険から遠ざけたい。
今、ジュリアスの心を占めるのは何よりも大切な恋人…闇の守護聖のことだった。
カサリと草を踏みしめる音に顔を上げると、そのクラヴィスが心配げな表情で立っている。
「クラヴィス…眠れぬのか?私が見ているから、先に休めと言ったであろう?」
「おまえも少し休んではどうだ?」
「いや。私は、大丈夫だ。そなたこそ、休め。顔色が悪い」
ジュリアスは、クラヴィスの手を取ると自分の隣に座らせ、その肩を抱き寄せた。
元々細かったが、一段と華奢になったようだ。
身体への負担が掛かり過ぎているのか…
クラヴィスは、ジュリアスの肩にそっと頭を持たせ掛ける。
「ジュリアス…私の事は、心配するな」
「無理な注文だ。心配せずにいられぬものか。そなたが窮地に陥る度に、生きた心地がしない」
そなたに危険が迫っても、私には、指揮官としての使命がある。
全てを放り出して駆けつけたくても…それは、他の仲間の命までも危険に晒す可能性が。
おいそれと持ち場を離れる事ができないのだ。
はがゆい思いに捕らわれジュリアスは、クラヴィスを抱きしめた腕に力を込めた。
クラヴィスは、ジュリアスを見つめ安心させるように微笑む。
「おまえがいるのだ…おまえを置いて逝かぬ」
「約束を違えるなよ」
微笑を返すとジュリアスは、クラヴィスの顎を軽く持ち上げると口づけた。
久しぶりに味わう感触を楽しむように何度も啄む。抱きしめあい、お互いの生を確認するように、激しさを増していった。
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