The love which it isn't possible
to finish giving up


「いつまで覗いているつもりだ?」

 先程までと打って変わった冷めた口調のクラヴィス様に、ハッと我に返る。
ショックのあまりしばし茫然自失になっていたようだ。
気がつけばアンジェリークの姿はなく、クラヴィス様が荒んだ視線を俺に送っていた。

  やばい…怒ってる…
  誰だって密会を覗かれれば、気分を害するか。
  しかし、すぐに見つけられるような場所でしているのもよくないですよ。
  まあ…覗いた俺が一番悪いとわかってますがね。

 言い訳を考えたが思い浮かばず、結局開き直ることにした。

「…さすがにお気づきでしたか」
「おまえの視線は煩い故、すぐにわかる」

 さも鬱陶しそうに、ため息混じりにクラヴィス様が呟く。

  それにしても相変わらず…俺には冷たい方だ。
  その表情が口調が…俺を真っ向から拒絶している。
  だが、その表情さえ俺には、魅力的に見える。
  どんな表情でも綺麗だ…おっと!見とれている場合じゃなかった。

 俺は、茂みから出るとクラヴィス様へ近付いた。

「覗いたことは、申し訳ないのですが…ところで、毎年あなたにお祝いも贈りものもしているじゃないですか!祝ってもらった記憶がないってどう言う事ですか!?」

 正面に片膝をつき座り、一気に捲くし立てると責めるような眼差しを向ける。俺の険相に驚いた様子もなくクラヴィス様は、訝しげな表情で俺を見つめ返した。

「……そう言えば…そんな事もあったな。すっかり忘れていた」
「クラヴィス様…本気で仰ってますか?毎年欠かさずの事ですよ!何故忘れるんですか!」
「本当に忘れていたのだから、仕方なかろう?それにおまえが勝手に来て、いらぬと言うのに贈りものを押し付けているだけではないか」

 クラヴィス様に悠然と言い放たれ、俺は脱力するしかない。

  毎年の事を忘れるなんて事がありうるだろうか…
  わざと意地悪で言っていると思いたい。
  だが、この方なら本気で忘れていそうだ。
  確かにあなたの意志に関係なく押しかけて…贈ってます。
  事実ですが、押し付けって…もう少し言い方ってものがあるでしょう…

 ついつい恨みがましい視線を向けてしまう。
 しかし、当のクラヴィス様は、瞳を閉じ腕を組み何かを思案していた。
不意にその瞳が開かれ、俺を真っ直ぐに捕らえる。

「わかった。おまえの祝いの言葉だけならまだしも…一緒に愛など告げられては不快と言うもの。 私は、嫌なことをすぐに記憶から消去してしまうのだ。それ故、忘れていたのではなかろうか」

 忘れていた理由に思い当たり、納得した表情を見せるクラヴィス様。

  あなたって人は……そんなきつい事を平然と…
  疑問が解け晴れやかな笑みさえ浮かべるあなた。
  深く傷つきながらも…その笑みに見惚れる俺。
  救いようがない…俺は、自虐趣味でもあったのか…



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