夜八時。
それが俺の帰宅時間。
まぁ、残業だの接待だのがない日に限るのだが……。。
更に、俺が余計な残業をしないように仕事のピッチを上げているので、よほどの事がない限り、残業になる事はない。
そうする事で、俺は帰宅時間を早めている。
何故か?
愚問だな。
の出迎えのない時間に帰りたくないからに決まってんだろ。
は10時きっかりに仕事をあがっちまうんだ。
あいつの年齢を考えると、仕方がない事なんだがよ。
つまり、10時過ぎに家に帰れば、俺を待ち受けてんのは沢木夫妻だ。
そうなると、二人には悪いが、一日の疲れがどーッと押し寄せてくんだよ。
の笑顔の場合は、一気に疲れが吹き飛んじまって、これからもう一度出社って言われても張り切れるぜ。
の笑顔は俺にとっての疲労回復薬なんだよ。
とにかくは可愛いんだ。
そうだな、仔犬系ってやつだな。
表情がくるくる変わるし、人懐っこいし。
ちょっと褒めてやったり、褒美だと菓子の一つでも与えてやれば、幻の尻尾を振って喜ぶんだ。
いや、のそれを見たのは俺だけじゃねぇぞ。
沢木達も見たことがあるって言ってたぜ。
お陰で、は我が家のアイドルだ。
可愛すぎてたまんねぇ。
俺をここまで惚れこませる女なんて、今後二度と現れねぇだろう。
俺の恋を成就させる為に、沢木達は俺との時間を出来るだけ邪魔しないようしている。
そんな援護射撃をありがたく受けながら、俺は必ずを手に入れるために画策しているって訳だ。
もうすぐ、5月の大型連休。
纏まった休みが出来る時期なのだが、その時期というのは、沢木達に纏まった休みを与える時期でもある。
その間、俺はどこぞのホテルで時間を過ごしてる。
そうやって俺が家を空ければ、使用人たちも休みを取らせられるって寸法だ。
だが…今年はなぁ…。
休みをやりたいが、と一緒に居られない時間が出来るのは辛い。
の居ない寂しい時間を過ごすのはイヤだが、沢木たちの休息も考えなきゃならない。
引越しの一件で、疲れているだろうしな…。
との事で貢献してくれている沢木夫妻には温泉旅行をプレゼントしてやりてぇし……。
…
……
………
温泉旅行…?
そうだ、それだ!
今年の大型連休を使って、慰安旅行をすればいいんだ!
の歓迎会を兼ねた慰安旅行に連れて行ってやればいいんじゃねぇか!
家族だとかも巻き込むような旅行にすれば、の妹とも知り合うチャンスも出来る。
沢木夫妻に子は居ないが、には妹が居るという事は知っていた。
の妹に気に入られたら、さらに外堀が埋められる。
俺はの居ない時間を過ごすことはなくなる。
更に、沢木夫妻やに休息も与えられる。
一石ニ鳥どころか、一石三鳥になるじゃねぇか!
これはいい案だぜ。
早速、沢木達に話をしてやるか!
が、仕事の時間を終えた10時過ぎ。
代わりに俺の部屋には沢木が居た。
その沢木に、俺は慰安旅行の話を持ち出した。
すると沢木は「それはいい案ですね」と乗り気になったようで。
早速、その話は皆の間に広まる事になった。
慰安旅行は温泉旅行に決まった。
有名な温泉街へ二泊三日を予定している。
臨時ボーナスみたいなもんで、費用は全て俺が出す。
もちろん、妹を連れて行きたいなら、連れて行っていいとには話してある。
その分の費用も俺もち。
で、もちろん俺も行く。
でも、沢木達が仕事をする必要は全くないように、温泉旅館を手配している。
時期が時期だけに、旅館まるまる貸し切りに出来なかったが、接客のクウォリティが下がるような旅館は選んだつもりはない。
俺も一緒に行く旅行なんだから、接客のクウォリティの高い場所を選ぶのは当然だろうが。
案の定、は妹を連れて慰安旅行に参加すると言ってきた。
予定通りに事が運びそうで、俺はそのは無しを聞いて内心でほくそえんだ。
が……、世の中っつーのは、そうは問屋が卸さないんだよなぁ……。
*
やってきた、慰安旅行の一日目。
温泉旅館へは昼、俺の屋敷からの出発だ。
出発の時間、用意させた2台の車の前に皆が集まっていた。
車の運転は雇った運転手に任せる手筈だ。
もちろん、をつれたも居る。
さて、と対面するとしよう。
初対面、第一印象が大事だぞ。
今日の服装は慎重に慎重を重ねて選んだもの。
にこりと人のよさそうな笑みを浮かべて、俺は達姉妹に近づくのだった。
「あ、景吾様」
が俺に気付き、そしてになにやら耳打ちをしている。
俺の居る場所からはよく聞えないが…。
「この子が妹のです」
がを紹介する。
姉妹だけあって顔立ちはよく似ている。
髪も瞳もやはり漆黒。
身長も変わらないくらい。
少しのほうが高いか…。
よりも髪は短く…所謂ベリーショート…少し釣り目である事も相俟ってきつい印象の娘だった。
「はじめまして、姉がお世話になってます」
何故だろうか、は不承不承というような口調と顔で俺に頭を下げる。
雰囲気で解る。
俺はに嫌われているようだと。
………なんで嫌われてるのか、見当がつかねぇんだが…。
「はじめまして…。俺は跡部景吾。こちらこそ、君のお姉さんにはお世話になってるよ」
12も年下のガキに、こんなに気を使って喋ったのはこれが生まれて初めてだ。
するとは「でしょうね」と鼻先で笑った。
このガキ、俺が下手に出てりゃつけあがりやがって……って、落ち着け俺。
相手は子供だ。
子供のいう事にいちいち目くじら立ててちゃ、に嫌われちまう。
「コラ、!目上の人に生意気な口を聞くのはやめなさいっ!」
が俺に対してとった行動を、が見かねて窘める。
けれどもは「はいはい」と肩を竦めただけで、何も気にしていない様子で。
姉はこんなに素直で可愛いのに、何で妹はこんなに捻くれて可愛くないんだ?
この姉妹の性格の違いは何なんだ…。
「すみません、景吾様。根はいい子なんですけど、ちょっと…その、男性不信なところがあって…」
がフォローするように言葉を紡ぐ。
男性不信ねぇ…。
「あんな事があって、男性不信になってないお姉ちゃんのほうが……っ」
の言葉を聞いたが、突然そんな風に声を荒げ、はっとしたように口を噤む。
それはがの言葉を聞いて酷く悲しそうな顔になったからだ。
………あんな事ってのはなんだ?
ただ、それがの男性不信の要因になっているようで。
の警戒を解く事が先決ってか?
全く、こんな落とし穴があったとは予想外だ。
そんなこんながあったものの、慰安旅行は無事スタート。
車に乗って目的地まで向かうことになった。
しかしだ。
なんで俺との間にがいるんだ?
俺をに近づかせない理由が解らない。
男性不信なら、が一番 俺に近づきたくないんじゃないのか?
まるで、を守るかのようには俺の隣に座っている。
それは車の後部座席での事。
ムッツリとしているの様子に、は困り顔で。
本当に、一体何がコイツをこうさせてるんだ?
訳がわからないぜ。
いつもなら簡単に出来るとの会話が、今日はどうしても出来そうにない雰囲気で。
せっかくの慰安旅行だというのに、俺達の居る場所だけ空気が重い。
沢木夫妻はもう一台の車に乗っているお陰で、この重たい空気を感じる事はない。
その事は幸いだった。
そして車は、目的地の温泉旅館に到着するのだった。
長時間の車移動は、体を酷く疲れさせるものだ。
その証拠に、皆が背伸びをしたり、体を解そうとしていた。
も、両手を天に向けて伸ばし、大きく伸びをしている。
普段見る事のない、の私服姿は、俺にとっては新鮮な姿で。
ストーンウォッシュのジーパンに白地に紺の染め抜き文字のチビT、更にフードつきのピンクのカーディガン。
でも、トレードマークのポニーテールは健在。
可愛いな…、よく似合ってる……。
それにしても、カーディガンのフードについてる妙な飾りは何だ?
フードについているカーディガンと同じ生地で出来た二本の飾りが少し気になって、俺はに近づいて手を伸ばした。
が、その時。
「お姉ちゃんに触らないでよ!」
そんな鬼気迫る表情と声の俺の手は叩き払われた。
更には俺からを守るかのごとく、をその背の後ろに隠す。
「、やめなさい!」
そんな行動に出たをが、今まで聞いた事のないような強い口調でしかりつけるが、はまったく聞いちゃいない。
俺を強く睨みつけてくる。
射殺されそうな強い強い眼差しで。
沢木達夫妻がどうにか場を収めてたのでそれ程の騒ぎにはならなかったが…。
この反応、何かある……。
そうは思ったが、今ここで問うわけにもいかなそうだ。
とりあえず、旅館の各々振り分けられた部屋へと向かうことにした。
その旅館は創業130年を超える老舗旅館。
出される食事も京都の三ツ星料亭と引けを取らないほどの出来の良さや建物の落ち着いた佇まいが人気の旅館。
そんな場所が簡単に用意できるのは、ここが跡部財閥傘下企業の投資によって経営されている旅館であるからだ。
急な話ではあったが、使用人たちの部屋を用意してくれた。
俺に宛がわれた部屋は、ホテルで言うスウィートにあたる。
俺が一人、窓際にあったカウチに腰掛けて、の行動の訳を思案している時だ。
俺の部屋をノックする音と、の「すみません…」という遠慮がちな声が聞えた。
入室を許可すると申し訳なさそうな表情のが部屋へ入ってきて、俺の座るカウチの近くまでやってきて、その畳の上に座る。
そして、申し訳なさそうな表情のまま「妹が大変失礼な事をしてしまって、申し訳ありませんでした」と深々と頭を下げた。
それは土下座の格好でそんな姿のを見るのは酷く辛かった。
「頭を上げろ、」
頭を下げたまま一向に上げようとしないに、俺はそう優しく声を掛ける。
けれど、は頭をあげなかった。
「…、もういいから……」
再度に俺は言う。
それでもは頭を上げることをしなかった。
困ったものだと俺は小さくため息をつき、カウチから腰を上げるとの許へと近づく。
そして、の両肩に手を置いて、頭を上げさせる。
少し強引に力を込めてやれば、は素直に従って頭を上げるのだった。
「本当に…ごめんなさい……」
の顔は相変わらず曇ったままで、こんな彼女の表情を見るのは初めてだっただけに酷く胸が締め付けられてしまいそうで。
「俺は怒ってないから、そんな顔するな。見てるこっちまで辛くなっちまうだろ」
俺はそう言いながらの頭をやさしく撫でる。
するとはとても小さく笑った。
「すみません…」
また、が謝る。
「俺がもう良いと言っているんだから、もう良い。気にするな。これは命令だ」
今は勤務中じゃないけどな。
そういうと、は「はい」と頷いた。
「ただ、一つ聞きたい事がある。答えられる範囲でかまわないから答えてくれ」
俺の言葉に、は無言で頷く。
俺はの前に腰を下ろして彼女と視線を合わせてから、疑問をぶつける事にした。
「が言った、あんな事ってのは…一体何なんだ?それが、の男性不信の元凶なんだろう?」
俺の問いに、の表情が酷く曇る。
先ほど、俺に頭を下げた時よりも…。
それは自身にも、暗い影を落としている事であるんだと、彼女の表情を見て確信した。
それから暫くの間、は沈黙してしまう。
暗い表情のままで。
お前のそんな顔は見たくない。
俺はの笑っている顔が好きだ。
俺からのありがとうの一言や、時折与える褒美のお菓子に嬉しそうに笑うその表情が好きなんだ。
だから、お前にそんな顔をさせてしまうモノから守ってやりたいと思うんだ。
なかなか言葉を発しないに、俺は再び声を掛ける。
するとははっとしたように目を見開く。
どうやら彼女は思案に囚われていたようだ。
やはりまだ、俺には言いづらいか…。
が口走った一件は、にも深く関わる事であるようだ。
いや、に深く関わるが故に、があのようになってしまったと、考えるのが正しいのかもしれない。
「どうしても言えないなら、答えなくて良い。ごめんな、お前を困らせちまったみてぇだ」
俺はそう言うと再びの頭をやさしく撫でた。
するとはほっとした表情で「ごめんなさい…」と謝った。
そして、俺はの気持ちを楽にさせてやるために、話題を変えることにする。
それは、先ほどに手を叩かれて聞きそびれていた事。
他愛のない事ではあったけれど、話題を変えるには丁度いい。
「なぁ、気になってたんだが…」
俺はそう言いながらのカーディガンのフードに手を伸ばした。
「このフードについてんのはなんだ?触角か?」
フードに付いた飾りの一つをつまみあげて問うた俺の言葉に、がむくれた顔を見せる。
何に怒ったのか見当もつかなかったが、それでも表情が先ほどとは違うものになった分ほっとした。
「違いますよ。ウサ耳です」
にそう言われて、俺はもう一度フードに付いた飾りをマジマジと見やる。
確かに、ウサ耳らしい形はしているが……。
カーディガンの生地で作られているからだろうな、そのウサ耳は力なく垂れ下がってしまうものだ。
フードを被れば、それがよく解るだろう。
「随分ヘタレたウサ耳だな…触角と見間違えちまったぜ」
俺は冗談めかして言葉を紡いだ。
「ヘタレてるウサ耳ですけど、可愛いからいいんです!」
は更にむくれて、上目使いで俺を睨んでくる。
そんな可愛い顔して俺を見るなよ。
可愛すぎて押し倒したくなるだろうが…。
「景吾様って時々意地悪だ」
の呟くような声に「そうかもな」と俺は笑って答えるのだった。
の表情が、幾分明るくなった事に、かなりほっとした。
その後は、「おじゃましました」とそう言って部屋から出て行く。
のことだ、沢木夫妻にも頭を下げに行くのだろう。
結局、真相はわからないままか…。
これは暫く、事の成り行きを見守るしかないのか。
俺はそんな事を考えながら窓の外の景色を見やる。
すると、俺の視界にの後姿が移った。
は旅館を出て何処へ行くのだろうか。
この事をは知っているのだろうか。
俺は気になって、の後を追いかけることにした。
*
旅館からさほど離れていない場所に、はいた。
人気のない絶壁の谷間に掛けられたつり橋の上に。
吊橋の桟に両肘を乗せて腕を組み、その上に自分の頭を置いてじっと谷底を見詰めている。
……飛び降りるとか…ないよな。
不安がよぎったが、の様子を伺っていると、そのような素振りは全くない。
俺はに声を掛ける事にした。
「そんな所で何してる?」
するとは驚いたらしく体をビクリと震わせて俺のほうへ視線を向ける。
「…なんで…居るの……」
は突然現れた俺に驚いているようだ。
「俺の部屋からお前が旅館から出て行く姿が見えたんでな。気になって追いかけてきた」
俺は正直に答えた。
「そうなんだ」
はそんなそっけない言葉だけを返して、再び谷底を覗き込む。
「はお前が出かけた事を知ってんのか?」
俺が問うとは「黙って出てきた」と返事を返す。
「が俺に謝りにきたぜ。妹が失礼をしましたってな」
「………知ってるよ………」
俺の言葉に、はそう言葉を返すと、橋の桟の上に組んだままにしていた両腕に顔を突っ伏した。
「何時だって、お姉ちゃんはそうだもの。何時でも私を庇って、大事にして。自分のことなんかそっちのけで、私の事しか考えなくて」
顔を突っ伏したまま喋るお陰で、の声はくぐもって聞える。
「私よりも頭がよくて、勉強が出来て…。知ってる?お姉ちゃん中学の頃の試験で一位から転落した事一度もないんだよ」
のいう事は初耳だった。
頭が良いとは思っていたが、それほどまでとは……。
「なかでも英語が得意で、大好きなイギリスの推理小説を原書で読んじゃうし……。もっと勉強すれば、翻訳の仕事にだって就けるって進路指導の先生が言ってたんだ」
そしては相変わらず突っ伏したまま、大きなため息をついた。
「なのにお姉ちゃんは、私を大学に行かせるんだって、進学断って就職して……。私みたいな脳筋なんかより、お姉ちゃんが大学に行くべきなのに……」
自分で自分を脳筋という娘も珍しいな。
俺のそんな思考など気付くはずもなく、は突っ伏していた頭を上げた。
「お姉ちゃんは何時だって私の事ばっかり。あいつにあんな事されたって、それでも、が傷付かないで済むならそれで良いって……」
はそう言うと再び谷底に視線を落とす。
あいつに、あんな事…。
また、気に掛かる台詞がの口から漏れてくる。
「どうして、私はお姉ちゃんの妹に生まれたんだろう…。私がお姉ちゃんだったら良かったのに……。そしたら、私がお姉ちゃんを守ってあげられたのに……」
の語る言葉には、ひどく苦しそうで。
俺は彼女が自分をひどく責めているのがすぐに解った。
「私が一番嫌いなのは私だ。お姉ちゃんを守れない私だ。お姉ちゃんに守られてばかりの私だ……」
私なんか大嫌いだ……。
そんな言葉を紡いでいるの頬は涙で濡れていた。
俺の口元がフッと緩む。
ああ、やっぱりコイツはの妹だ。
真っ直ぐで気の優しい所はそっくりだ。
捻くれた様な素振りは見せても、芯は真っ直ぐで。
やっぱり姉妹だな。
それ故の苦悩なのだろう。
しかし、こればかりは、自身で乗り越えてもらわなければいけない事だな。
今俺が説教をしたとしても、にはなんの効果もない。
かえって卑屈になるだけだ。
だから俺は、話の内容を変える事にした。
「あいつって…誰だ?あんな事って……一体 の身に何があったんだ?」
それは俺はどうしても知りたかった事だった。
の身に起こった事。
その事はだけでなくの心にも深い傷を残している。
先ほどのの様子を考えれば、すぐにでも解る事だった。
からは聞きだせなかった。
ならば、からは……?
「………言えない………」
やはり答えはノーだった。
「そうか…」と、俺はその一言だけで全ての会話を終わらせた。
「が心配する、部屋に戻るぞ」
するとは頭を振る。
「もう少し、ここに居る。泣いたままじゃ、お姉ちゃん余計に心配するから」
そうが言葉を返したとき、ふと視界にの姿が見えた。
どうやら、を探しに来た様だ。
「もうとっくに心配されてるみたいだぜ」
俺がそう言うと同時に、の「!」と言う声が俺達の耳に届いた。
「もう、部屋に返ったら居ないんだもん、心配したのよ、?」
橋の上に居るの傍まで近寄って、が言う。
「すみません、景吾様…。がご迷惑を……」
がそんな風に俺に謝ってくる。
「いや、は何も俺に迷惑を掛けてないから、謝る必要はないぜ」
俺はにそう言葉を返すと、この場から離れる事にした。
この姉妹にはなにやら深い事情がありそうだが、今の時点では全く何も解らない。
時間を掛けて、心を開かせて聞くしかない。
出会ってやっと一月。
と俺との距離の遠さを思い知った。
そして、この恋が、思ったよりも前途多難なものになりそうだという予感も………。
橋での一件の後、の様子は少し変わっていて、その後、慰安旅行の雰囲気をぶち壊しにするような行動はとらなかった。
けれど相変わらず、俺は敵視されたまま………。
………どうしたもんだろうな、この状況は………。
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<あとがき>
ピンクから一転ダークネス。
ええ、私の小説がピンク一辺倒で終わる筈がないじゃありませんか。
なにせ、ダークネスな裏設定が大好きな神威なのですからw
さぁ、跡部、頑張ってw |