媚薬

「靴下は残しておいて下さいね!えへへ」
「大河君、シャツも大事なポイントだよ」
「サニーさん、ここはネクタイも残すべきですか?」
「そうだねぇ、そのネクタイで目隠しか手を縛るのはどうだろう?」
…うっすらとした意識でそんな声が聞こえた気がする。
眩しい光に視覚を刺激されながらも、細く目を開けると視線の先にあるのは自分の部屋の天井だった。
だが、何故か自分の二の腕が目の端にあって、身体が妙にスースーする。
「…あ。昴さん起きちゃいましたよ。早く縛らないと!」
ぐっ、と頭の上にあるらしい手首に何かがきつく締まる感じがして顎を上向かせると大河が見えた。
「……何をしている」
寝起きで頭がぼんやりしているせいだろうか。
僕は彼を見て瞬時にそれが『おかしい』と思えなかった。
「す、昴さん!おはようございます。こ、これは…」
「やぁ、目覚めの気分はどうだい?昴」
声のする自分の横に視線を向けると、そこには何故かサニーサイドが居た。
「サニーサイド…何で君がここに」
「いやぁ、まぁ成り行き?プロデューサーとしては最後まで見届けないといけないしな」
プロデューサー?見届ける?一体何の事だ?
…もっと早く気付けば良かったのかもしれないが、とにかく眠くて思考がはっきりしなかったのが災いした。
起き上がろうとして、自分の置かれている異常さにやっと気付いたのだから。
「…何で僕はこんな格好なんだ」
自分の前半身を見て呆然とした。
ネクタイは解かれ、上着は脱がされ、あげくにシャツのボタンは全て外されている。
そういえば、と再び頭上に視線を戻す。
自分の手首を戒めているのは事もあろうに自分のネクタイだった。
ぼんやりした意識で二人がしていた会話を思い出す。あれは、夢じゃなかったというのか。
「大河…サニーサイド……これは、どういうことだ!説明しろ」
とりあえず視線の先に居た大河を睨みつけながら叫ぶ。
…僕の記憶が確かなら、僕はさきほどまで大河と湯豆腐を食べていたはずだ。それが食べ終わったら急に眠くなって…。
「そ、それはですね……あははは」
大河は僕の怒鳴り声に驚いたようだが、引きつった笑みを浮かべながら僕から視線を逸らしてサニーの方を見た。
「いやぁ〜まぁ、ほらね。抵抗されたら少々困るから手首の自由だけ奪わせてもらっただけだよ。目隠しは悩んだけど」
何ならそっちもする?大河くんのネクタイでもボクのでもどっちでもいいし、とさらりとサニーは言う。
「答えになってない!とっとと解け!!」
「…ごめんなさい、昴さん。それは無理です」
「大河……」
なんと、即答したのは大河だった。
「でも、昴さんがどっちでも、ぼく頑張りますから!」
…話が全く見えない。一体僕の身に何が起こっているんだ。
「じゃあ昴も起きた事だし、そろそろお待ちかねのイッツ・ショーターイム!…日本だとご開帳って言うんだっけ?」
「サニーさん…何でそんな言葉知ってるんですか」
僕をよそに二人はやたら盛り上がっている。嫌な予感がした。直感とでもいうのか。
「じゃあ…昴さん、ごめんなさい。ちょっと我慢してくださいね」
大河の手が、僕のズボンにかかる。剥き出しの腰に冷たい手が当たって、僕はかすかに身動ぎをした。
「な…大河!何をする!やめろ!よせ!馬鹿!」
「い、いたた…!昴さん、蹴らないで下さいよ」
「蹴られたくなかったらこの手を離せ!」
大河が僕のズボンをおろそうとするのがわかり、問答無用で彼を顔や身体を蹴る。冗談じゃない、何を考えているのだ。
「サ、サニーさん…見てないで手伝ってくださいよう……」
「サニーサイド!君も見てないで大河を止めろ!」
大河と僕の両方から視線を注がれたサニーは腕組みをしてその光景をじっと眺めるだけだったのが…
口の端を吊り上げながら、ずれたサングラスを直すと僕の足を掴んだ。
「サニーさん!」
「……」
大河は嬉しそうに、僕は唖然としてサニーを見つつ。
「しょうがないなぁ。ほら、今のうちだよ。ボクも昴に蹴られたくないからね」
「はいっ!昴さん、大人しくしててくださいね」
「馬鹿っ!これが大人しく出来るか!馬鹿!馬鹿!やめろっ!」
手首を戒められている上に足を押さえつけられては抵抗らしい抵抗も出来ない。
「いやだ……っ!」
無常にも僕の下半身は、二人の視線の下に晒されてしまった。
「……女の子だったんですね、昴さん」
「へぇ…ほとんど生えてないんだ。ここまでつるつるなのはボクも初めて見たなぁ」
羞恥に頬が染まり、僕は奥歯を噛みしめながら顔を背ける。
何で、僕がこんな目にあわなくちゃいけないんだ…。
「良かった!ほら、言ったとおりだったでしょ?サニーさん」
「うーん、必死に性別を隠していたのはこれかぁ。てっきり男なのかと思ってたけど」
「そんなことないですよ、昴さんは時々ドキッとするくらい女性らしいんですから」
「…でも、キミより男らしいよね。プチミント姿でデートした時は昴に助けてもらったんだろ?」
「う……その事は言わないで下さい」
「うるさい!黙れ!」
好き勝手に言い合う二人に堪忍袋の緒が切れて僕は叫ぶ。
「大河!サニーサイド!とっととこの手を解け!君たちには躾が必要だ…!!」
「おお、怖い怖い。この状況でもそこまで言えるとは流石は昴だな」
「うう…やっぱり躾けられるんだ。でも、そこはちゃんと考えてありますから」
大河はそう言って胸ポケットからキャメラトロンを取り出す。
「これで昴さんの写真を撮っておけば、昴さんもそんな気にならないですよね」
「な……!」
「ごめんなさい、昴さん。でも躾けられるのは流石にぼくも嫌です…」
パシャリ、と音がした。
一瞬にして顔から血の気が引く。
「まぁ、他にも手段はいくつかあるんだけどね。これが一番手っ取り早いじゃない。あ、大河くん。もう一枚よろしく」
もう一度、シャッターを切る音がして僕は愕然とした。
「ごめんなさい、昴さん…痛くはしませんから、ちょっとの間だけ我慢してくださいね」
「そうそう。キミを悦ばしてあげようと思ってるだけだから。…まぁ、小道具は使わせてもらうけど」
大河くんじゃ昴を満足にイかせてあげることもできないだろうし、とサニーは下卑た笑いを浮かべる。
「サニーさん、ひどいですよ!ぼ、ぼくだってサムライの意地にかけて頑張るんですからね……」
小道具、イかせる、それらの言葉で彼らの意図がわかってしまった。
僕の顔はますます青ざめ、唇がわななく。
「でも、昴さんのここ…本当につるつるしてて綺麗ですね……ああ、中はどんななのかなぁ」
「大河くん、あんまり見たら昴に失礼だよ。それに、まずはキスからだろう?女性をその気にさせるならね」
「あ、それもそうですね。昴さんの唇もきっと柔らかくてぷるぷるなんだろうなぁ…」
「大河!サニーサイド!馬鹿な冗談は……、んっ!」
覆いかぶさるようにして大河の顔が近づいてきたと思ったら、唇が塞がれた。初めて感じる、大河の唇。
こんな状況でなければ、僕は抵抗しようとは思わなかったかもしれない。彼は嫌いじゃない、むしろ好きだ。
…だが、この状況では素直に受け入れる気になどとてもなれなかった。
とにかくもがこうとしたら、大河は僕の身体に重心をかけてそれを遮る。
サニーは傍らでそれをにやにや眺めるだけ。
「…っ……!」
大河が僕の唇に吸いついたまま、シャツのボタンを外されて露になった胸をさすりあげる。
すぐに、まだ立ち上がってもいない突起に触れた指先がそこでぴたりと止まった。
その部分を愛おしそうに指の腹で撫でられて、身体がびくんと震える。
しばらくさすられたせいか、ぷくりと立ち上がった突起を大河が摘み上げると僕の身体はさっきよりも大きく震えた。
大河が、唇を離して僕に微笑みかける。いつもと変わらぬ穏やかさで。
「…っや……大河…やめ………」
「えへへ、昴さん。昴さんの唇はやっぱり柔らかいなぁ。さっきはキス出来なかったから思う存分してあげますね」
さっき…寝たふりをして彼を試したときか。ウォルターが湯豆腐を運んできて、確かに未遂には終わったが…。
「あの時、ウォルターさんが邪魔をしなければ今頃はこんなことしなくても昴さんとこうしてられたのに…」
「そうかなぁ。昴だったらそう簡単に許すとは思わないけど。キミなんかからかわれて終わりじゃない?」
僕をぎゅっと抱きしめる大河に向かってサニーが呆れたように声をかける。
「そんなことないです!いい所まで行ったんですよ…あとちょっとだったのに…はぁ」
「まぁまぁ、経緯はどうであれ結局昴とキスも出来るしそれ以上も出来るんだからいいじゃないか」
「…そうですね。昴さん、キスしようとしても抵抗しなかったし、きっとそれ以上も良かったんですよね?」
「……っ、そんなはずあるか!」
僕は大河の顔を噛み付かんばかりに睨みつけ、威嚇するように低い声で唸った。
だが、大河の反応は…。
「昴さん……じゃあ、やっぱりぼくを弄んだだけだったんですね。ひどいです……」
むしろ今にも泣きそうな顔をして見つめ返された。
「ほらほら、言ったとおりだろう?だから昴にはちょっとくらい強引な方がいいんだよ」
追い討ちをかけるようなサニーの声に、大河は泣きそうな顔のままため息をつく。
「やっぱりそれしかないのかぁ……」
「馬鹿、何故そこで納得する!大河!目を覚ませ!」
どうやら大河はサニーにいいように言いくるめられたらしい。
「サニーサイド!大河に何を吹き込んだ!」
きっ、とサニーを見上げる。
だがサニーは飄々とした顔のまま僕を見下ろすだけだった。
「ん〜?ん〜…健全な青少年の悩みを聞いてアドバイスしてあげただけだよ?」
「大河!よく考えろ!こんな事をしておかしいと思わないのか!?君の良心は痛まないのか!」
こんな風に訴えかけるのは嫌だったが背に腹は変えられない。
第一、普段が普段なだけにサニーの良心になんぞ訴えかけるだけ無駄だ。丸め込むなら大河しかいない。
「う…昴さん……」
「今ならまだ間に合う!この手首のネクタイを解いて僕を自由にしてくれ…大河、お願いだよ……」
ちょっと潤んだ瞳で見つめるのは勿論わざとだ。この方がきっと効果が高いと信じて。
予想的中、大河は困ったような顔で僕を見ている。これは効いたらしい。
「僕だって君に身体を許す気が全くなかったわけじゃない…でも、こんな風に、他人に見られながらなんて嫌だ」
そう言ってじっと見つめていた大河から視線を外し、俯く。なるべく悲しげな表情を作って。
「昴さん……」
よし、大河の声が動揺している。あと一押しだ。
「大河……お願いだ、君だけが頼りなんだよ。こんな恥ずかしい格好をさせられて…僕は……」
そこで、唇を噛んで黙りこくる。よし!これ以上ないほど完璧なはずだ。我ながら惚れ惚れとするほどの演技だった。
「昴さん、ごめんなさい…ぼく……」
大河の手が僕の手首の戒めに伸びる。そうだ、そのままさっさと解け!と心には思っても口には出せない。
どうせ後で躾けるのは二人一緒だとしても、今だけは大河に味方になってもらわねばならないのだから。
「ストップ。大河くん、本当にそれでいいのかい?昴の演技にグラっときたようだけど、その後の事をわかってる?」
…大河が戒めを解こうとした瞬間、それまで黙っていたサニーが笑いを堪えるように呟いた。
「そんなことをしたらボクもキミも昴に『躾』られるよ。…断言するけど、今の昴の態度は演技だ」
「え…」
大河の手が止まる。あとちょっとだったのに!と悔しさに歯噛みしたが、まだ諦めるわけにはいかない。
自分の貞操がかかっているのだ、僕だって必死だった。
「昴さん…演技だったんですか?」
良くも悪くも素直な大河はちょっと言われただけでぐらぐらと傾く。その目は僕への疑心に満ちていた。
「ひどいな大河…僕を疑うのかい?君は僕よりもサニーサイドの言葉を信じるのか…?」
目を伏せがちに、震えた声で囁く。嘘くさかろうと構うものか!大河はきっとこういうのに弱いはずだ!
「ううう…ぼくはどうすれば」
迷ってる迷ってる。よし、ここは押しの一手だ。成せば成る。…というのは彼の言葉だったか。
「大河」
彼の名前を優しく呼びかける。
「昴さん…」
大河の視線が僕を見てはサニーを見て、頭を抱えている。とっとと判断しろ、この馬鹿!
「…まぁ、大河くんが本当に止めたいなら止めてもいいよ?」
ぐらつく大河を尻目に、サニーはそんな事を言い出した。
「え…サニーさん……」
「でもこの写真は頂いていくから解くならボクが帰ってからにしてね。ボクは躾けられるのは勘弁だから」
「!!」
そうきたか!と心の中で舌打ちする。共犯者という心理を利用した作戦、確かに悪くはない。
悪くはないが…サニーサイドらしい嫌な策だ。僕はサニーを睨みつけてやりたい気持ちを必死に抑えた。
まだ、大河は迷っている。表情に自分の心のうちを出してはいけない。
「それに…キミは我慢できるわけ?昴のこんな痴態を目の前にして。ああ、日本人は我慢強いのか、そこら辺」
サニーは床に散らばった写真を拾い上げると扇のようにぱたぱたと扇ぐ。
「こんなチャンスは二度とないかもよ?ボクも身の危険を感じるのはご免だから流石に手を貸す気もないし」
「うう……ううう」
大河がサニーの方にぐらついてるのが分かって僕は焦った。何とかしないとこのままでは大河がサニーの魔の手に!
…じゃなくて僕の貞操が危ない。
「大河は…僕を無理やりに抱いて楽しいのかい?…君が、そんな人だとは思わなかったな……」
こうなったらとことん良心に訴えかけるしかない。儚げで悲しげな『九条昴』を演じて。
「無理やり、ねぇ。健全な青少年を自分の部屋に招いて二人きりな時点で普通はオッケーだと思うと思うけど」
サニーサイド!余計な事は言うな!
「うう…ぼくはどうすれば……」
「大河……お願いだ、僕を自由にしてくれ」
「…大河くん、キミにプレゼントをあげよう。それを使えば強情な昴もそりゃあもうメロメロになるよ」
サニーはあくまで冷静な笑みを崩さずに胸ポケットから細長い化粧品のような瓶を取り出し、大河に向かって投げた。
瓶は、僕と大河の横にぽとりと落ちる。思わず見たが外見からはそれが何なのかわからない。
どうせロクなモノではないのは想像に難くないが。
「サニーさん…これは何ですか」
「催淫剤というか催淫薬というか。えーと、説明書によると『性欲を催させ生殖器の機能を高めるために用いる薬』だってさ」
瓶が入っていたらしい箱から説明書を取り出してわざわざ読み上げるとサニーはにやりと大河を見た。
「つまり、セックスが気持ちよくなるクスリってわけだよ。興味ない?」
「……」
僕も大河も呆然とその薬を見つめる。見た目はただの化粧品にしか見えないそれがまさかそんな薬だとは…。
「で、でもそんなもの昴さんに…」
馬鹿、ぐらつくな大河!
「ん〜心配しないでも平気だよ。原材料は南米原産の植物とかだからねぇ。第一、ボクだってそこらへんは考えてるよ」
サニーはそんな心配をする大河を見て笑う。
まぁ、笑いたくなる気持ちはわからないわけじゃないが。
「いくらなんでも怪しげなクスリを昴に使わせたりしないさ。…それに、睡眠薬は良くてもこっちはダメなわけ?」
「!」
「サニーさん!それは言わない約束じゃないですか!」
…まさか、とは思っていたが。
食後の睡魔。そして起きたら既にあの状態。…不自然だとは思ったが、やはり仕組まれたのか。
「ああ、昴。大丈夫だよ、睡眠薬は王先生に調合してもらってボクも普通に使ってるやつだから」
あたふたする大河に喉を鳴らしつつサニーは僕に向かって言う。…ちっともフォローになってないが。
「使う、使わないは大河くんに任せて持たせたんだけど…いやぁ、彼は大物なのか小物なのかわからないねぇ、どう思う?昴」
「……サニーサイドの話は本当なのか、大河」
極力、咎める口調ではなく優しく問いかけるように大河を見る。
「うう…昴さん、すいません。だって、さっきの続きをしたかったんですもん…」
「もういい…」
ぷい、と横を向く。悲しげな遠い目をして。
「昴さん……」
「大河、とっととこれを解いて帰ってくれ」
「す、昴さん」
そのまま、黙ったきり大河のほうを見ようともしない。……よし、これで完璧だ!
微妙に演技ではなく本心も混じっていたが、これならきっと大河も居た堪れなくなるはずだ。
…だったはずなんだが。
大河新次郎。
彼は僕の予想を超えるでっかい男だった。

「………わかりました。こうなったら、昴さんへのせめてもの償いに昴さんを気持ちよくさせてあげるように頑張ります!」
「なっ……!」
何故そうなるんだ!
「おや、決心したのかい。長かったねぇ、ボクは疲れたよ。…昴もだと思うけど」
「サニーさん、これどうやって使えばいいんです?」
決心した大河は素早かったというか、もう止まらないというか。呆れて声も出せない僕も目に入っていない様子だった。
「はいはい、もうちょっと落ち着こうね、大河くん。女性の身体はデリケートなんだからさ」
サニーが含み笑いをしながらも大河に説明書を渡す。…この中で一番楽しんでいるのはサニーに違いない。
「ええと…これを手にとって、女性器にマッサージするように塗りたくる…ふむふむ」
ご丁寧に口に出して読みながら大河は瓶の口を開けると中身を手に取った。
「や…大河!よせ……そんなもの、昴はいやだ…!」
じたばたと暴れても吹っ切れた大河には聞こえないらしい。
「いや〜…今は頑固な昴があ〜んなになってこ〜んなになるんだからね。楽しみだよ」
サニーは椅子に腰掛けたまま膝を組んでそれを悠々見物している。
「昴さん、ちょっと冷たいかもしれませんけど、すぐに熱くなるらしいんで我慢してくださいね」
「…ひっ!……やだ…たいが……んっ!」
ひんやりとした感触が、恥部に触れた。
びくっと身体を震わすと一瞬大河の手が止まったが、次の瞬間には指がゆっくりと差し込まれる。
あくまで遠慮がちに、ほんの少しだけではあったが。
「敏感な部分に優しく5分以上……昴さんはどの辺が敏感なんですか?この辺とか?」
「あっ」
「この辺とかも?」
「んんっ」
「この辺もかなぁ」
「ばかっ」
大河は感触を楽しむようにして僕の陰部全体に催淫薬を塗りたくる。
逃げようとしても手は戒められて足は彼によってがっちりと押さえつけられたまま。
もう恥ずかしいやら情けないやらで涙が出てきそうだった。
…おまけのように隣でサニーの視線を感じるのでそのことにも腹が立つ。
「昴さん、少しは熱くなってきました?」
大河のぎこちない愛撫は続く。
ちっとも気持ちよいとも思わないし、何より心情的にそんな気分でもなかったのだ、が。
だんだん、冷えていた身体が温まってきた。
何だか…身体の中心が、じんじんしてきた気がする。
そんな馬鹿な。
「……っ…」
そして本当に5分以上、飽きもせず塗っては撫でていた大河の指がふと陰核を爪弾くように動いたとき。
背筋を震えが走った。
「昴さん?」
「おや、効果が出てきたか」
首を傾げる大河と対照的にサニーはふっと笑う。
「どう、昴?」
「………」
「大河くん、昴は物足りないらしいよ。瞳がそう言ってる」
「え、あ…はいっ」
「ち、違う…ああっ」
大河の指が、僕の窪み全体をすぅーっと撫で上げると、さきほどより強い震えが襲う。
「なんだか、昴さんのここもさっきより熱くなってきたような……中からも溢れてきたし」
彼が僕の中に指を忍び込ませると、薬とはあきらかに違う粘り気が絡みつくのが自分でもわかる。
「んっ…たい、が…よせ……」
身体があつい。顔が火照る。でもまだ僕はこの段階では理性が十分残っていた。
…もっとも、僕の理性が残っていたとて彼がその気ならどうしようもないのだが。
「昴さんの顔、あつい…」
彼がぴったりと頬をくっつけてくる。
「ああ…たいが……」
別に大河の頬が冷たいというわけではないのだろうが、自分より遥かにひんやりして気持ちよい。
思わず、もっと触れたくて自分から頬を摺り寄せたのがまずかった。
「たいがぁ……」
耳元で囁くと、彼がぴくりと反応した。
「昴さん!」
がばっと抱きつかれる。
服越しでも大河の股間が張り詰めているのが分かって、僕は息を呑んだ。
「おいおい、大河くん…キミはせっかちだねぇ。せっかちな男は嫌われるよ。そういう男は大抵『早い』しね」
「う…昴さん、ちょっと待ってて下さいね」
僕から離れてごそごそと衣擦れの音を立てる大河と入れ替わるようにして、サニーが近づいてきた。
「昴」
耳元に吐息を感じる。
それにすら、びくっと身体を震わせる自分が信じられない。
しかし、僕がこんな状況になっているのも元はと言えばサニーのせい。
僕は眉を吊り上げてサニーを睨みつけたが、サニーは微笑んだまま僕の頬に手を触れるとほんの一瞬、口付けを落とした。
「ボクがお手本を見せてあげるから、しっかり覚えてくれよ。…天才のキミなら飲み込みが早いと思うから楽しみだな」
言うが早いか、サニーは僕の指を軽く噛み、根元からなぞるようにして舐めあげてきた。
舐めあげては、唇で吸いつかれ、口内で舌と唇で一関節分、なぞりながら吸い上げられる。
「っ……サニーサイド…」
何の、とは聞かなかった。
擬似的な愛撫でもそれが何を示しているかわからないわけじゃない。
「サニーさん!昴さんに何しているんですか!」
「何って…見れば分かるだろう。別にキミの大切な昴に…まぁ、指一本は触れてるけど」
服を脱ぎ終えて戻ってきたらしい大河が僕の指に吸いつくサニーを見てジト目で睨みつける。
だが、サニーは僕を見下ろしたまま目配せをしてくるだけだった。…さっきのは秘密だと言いたげに。
どうやら大河とサニーは利害は一致しているが目的は微妙に違うらしい。
「ダメですよ…昴さんはぼくの恋人なんですから。昴さん…サニーさんに変な事されませんでした?ってさっきより凄い…」
なんでもいい。身体があつくて…疼いて、たまらない。近い感覚で言うならムズ痒いとでもいうのだろうか。
サニーは相変わらず僕の指一本一本を丹念に舐め上げていたがそんなんじゃ足りない。
もっと、身体の中心に…奥に、触れて欲しくて。ああでもそんな事など当然言えはしない。
「んぁっ……!」
「昴さん…」
指先で触れられるだけじゃ、気持ちよいどころか拷問だ。
自然に息が荒くなっていくのを、抑えきれずに胸が上下するのをぼんやりと見つめる。
「こ、これだけ濡れてたら中に入れても平気ですかね…」
「さぁ?それはキミの好きに。ボクは別にキミが昴に好かれようが嫌われようが関係ないし」
僕の頭の上と足の間で繰り広げられるそんな会話も遥か遠くから聞こえてくるだけ。
あつい、あつい、あつい…あつくて、たまらない。
身体中が火照る中で特に自分の奥が一番あつく、燻っていて。
「昴さん…痛かったら、言ってくださいね」
遠慮がちに、大河の指が中に入ってきても。内壁をこすられる気持ちよさよりもじれったさで気がおかしくなりそうだった。
「…んっ……あぁ……たいが……たいが…ぁ…」
くねるように腰が動いた事に、彼の方が驚いたようだ。
「す、昴さん」
あつい、あつい。どうすればこの熱さを鎮められるのか。
だんだん頭には霞がかかっていく。
「ははっ、良かったじゃないか。昴がキミに催促してくれるなんて。頑張ってみたら?『サムライの意地』にかけてさ」
サニーの唇が僕の指を離れ、額におりてくる。
「あつい……」
僕はうわ言のように呟き、上目遣いでサニーを見ると誘うようにちろちろと舌を出す。
意識してやったのではなく、それも無意識での行動だったがサニーは微笑みながら顔を近づけ舌を絡ませてくる。
吐息が重なり、熱い舌が絡まりあう。
絡め取られるように口付けが交わされても僕はなされるがまま、むしろ積極的に自分の舌を絡めていた。
「サニーさん!」
大河がびっくりした声が聞こえたが、それも耳に入らなかった。
この熱さを鎮めてくれるなら、どっちでもいい。
僕は貪るようにサニーに舌を絡め、サニーもそれに応じる。
サニーの手は愛しいものでも撫でるかのように僕の頬に触れていて、その冷たさが心地よかった。
「…昴さん、ひどいですよ。ぼくがいながらサニーさんと……」
どこか拗ねたような大河に呼応するかのように、きゅっと肉芽をつままれる。
「ふぁっ!……や……ぁ……ぁん…」
びくん、と身体が仰け反ったが大河もサニーも各々の行為を止めようとはしない。
大河はむくれたように僕の芽を親指と人差し指で摘んで弄んでは中指で僕の入り口や内部も掻き回して。
サニーは僕の頬を撫でたまま、唇を、舌を交わして僕の吐息をも奪い、時折耳たぶまで軽く甘噛みされたが。
「あぁ……ダメ………はぁん………やだ……あつ…い………あつい…あついぃ…」
身体の火照りは取れない。
二人に刺激されればされるほどもっと熱くなっていく。
僕は次第に言葉すらも忘れていくかのように、ただ「あつい」と繰り返した。
「サニーさん…昴さん平気ですか?さっきから『あつい』ばっかり言ってますけど」
「……それをどうにかするのがキミだろうに。キミで役不足ならボクが相手をしてもいいけどさ」
言ったろう?メロメロにするクスリだと、とサニーは言う。
「だ、ダメですダメです!こんな昴さんをサニーさんに任せたら何されるやら…」
「…どうせボクだろうとキミだろうとやることは一緒だろうに…」
そんな会話が耳から入ってはすぅーっと逆の耳に抜けていく。
「何なら昴に聞いてみようか。昴、どっちが欲しい?」
「サニーさん!そんな事聞いても昴さんが答えてくれるわけ…」
「……」
ぼんやりした頭でサニーの言葉の意味を考える。
どっちが欲しい…?
とろん、とした瞳を向けたまま僕を見つめるサニーに向かって首を傾げる。
サニーは優しく僕に微笑んでいた。
「大河くんと、ボクと、どっちのを挿れられたい?」
「さ、サニーさん」
いつもの僕だったら、言い終わる前に鉄扇でサニーをしばく所だが。
今の僕にはその鉄扇を握る為の手は戒められて、それを深く考える思考能力に欠けていた。
必死に、霧がかかった頭で考える。大河。サニー。どっち…?
大河。ああ、今日は大河と朝からデートをしたんだ。ぼんやりとそんな事を思い出す。
変装をしてベーグルを買いに行って、朝のセントラルパークで一緒に食べて。
パンの屑を頬につけていた大河は子供みたいだった事を思い出し、クスと笑う。
「大河……」
君は子供みたいだったな、と言おうとした言葉は興奮気味な彼の言葉に遮られた。
「昴さん!」
ぎゅっと足にしがみつかれる。
「ああ、良かった。サニーさんを選ばれたらどうしようと思ってました…昴さん、大好き」
彼は何をそんなに感激しているのだろう。よくわからない。
目で問うようにしてサニーを見るとサニーは微笑んだままだった。
「おやおや、やっぱりキミの方がいいのかい。残念だけど仕方ない、昴がそう言うならね」
そう呟く彼の瞳は全く残念そうじゃない、むしろ嬉しそうに笑っている。
サニーは何がそんなに楽しいのだろう。
「じゃあまぁ…あんまり無理して昴を壊しちゃダメだよ、大河くん。昴の身体は華奢なんだしさ」
「わ、わかってますよ!昴さん、ゆっくり挿れますから……力、抜いてくださいね」
大河が僕の足を大きく開かせる。それを恥ずかしいと思う余裕もない僕は入れる力もない。
「昴さん…」
彼のあつい先端が膣口に宛がわれた感触に、ぴくんと身体が跳ねた。
意識は朦朧としていても、その先に起こることはなんとなく理解できる。
「昴」
サニーがあやすように僕の髪を撫でて、優しく口付ける。
「大丈夫だよ、彼があんまり無茶をするようなら止めてあげるから」
「うぅ…無茶なんかしませんよ。じゃあ昴さん、挿れますからね……」
ぐっ、と熱くて固いものが入ってくる感覚に眉が寄る。
「……あぁぁぁっっ!!」
それが痛みなのか、内壁にこすれた熱さによるものなのかもよくわからない。
指でこすられるよりも、あつい、あつい、あつくて、死にそう…!!
必死に身を捩り、無我夢中で指先にあったサニーの服を掴む。
「大丈夫だよ、昴」
サニーが僕の指に自分の指を絡めながら言う。
「そのうち気持ちよくなるから」






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