…僕が選んだのは浴室に行く方だった。
背中を流すと言って、入り込めばいい。
流石に大胆な気もするが、浴室まで押しかければ彼とてその気になるだろう。
三度、脱衣所に向かうと大河に声をかける。
「大河」
「はい」
「僕も入ってもいいかい?背中でも流してあげるよ」
「…へっ?」
「嫌かな?」
「そんなことありません!でもそんな…悪いですよ」
「僕に背中を流されるのが嫌じゃなければ、入れてくれると嬉しいな」
「………わかりました」
彼が渋々と浴室の鍵を開ける。
開いていたらそのまま入ろうかと思っていたのだが、ご丁寧に鍵がかけてあったので開けてもらうしかなかったのだ。
「お邪魔するよ…」
一応、タオルで前は隠す。
「昴さ…!服を着てないんですか」
ちらりと僕を見て慌てて視線を逸らす大河。
「あ、あれですね。昴さん、男性だったんですね。叔父さんが言ってた、裸の付き合いってやつなんですね…あはは…はぁ」
声が上ずっている。と思ったらため息が一つ漏れた。
それに何だか誤解もされているが。
まぁいい、いずれはわかることだし。
「じゃあ、背中を流してあげるよ」
「は、はい…よろしくお願いします」
スポンジに泡を含ませて彼の背中をこする。
当たり前だが、大河の裸の背中をじっと見るのは初めてだ。
「大河は…着痩せするんだね。思ったより、がっしりしている」
「あ…そうですか?やっぱりこの顔のせいか、なんかひ弱に見えるんですよね。サニーさんにもからかわれました」
「…サニーサイドと一緒に入ったのか」
男相手に嫉妬しても仕方が無いのだが、大河がサニーと一緒に風呂に入っているという事実が気に食わない。
「あ、露天風呂に入ってたときにサニーさんが『日本だと裸の付き合いが大事って言うじゃない?』ってやってきて」
なるほど。
だから僕も同じように思っているというのか。
まぁ…僕が女だと思っていたら、大河はきっと入れてくれなかっただろうからよしとするべきなのか。
「でもやっぱりお風呂の中だからか、普段話せないことも色々話せて楽しかったですよ」
表情は見えないがきっと笑っているのだろう。さっきとうってかわって声が少し弾んだ。
しかし僕が女だと知ったら驚くのだろうなと思いつつ、それはそれで反応が楽しみだった。
「へぇ…どんな事を話したんだい?」
「え、それは………秘密です!」
気に食わない。
「…僕に言えないようなこと?言わないなら言わせてみせようか」
そう言って彼のわき腹をくすぐる。
「わひゃあ!?昴さん、くすぐったいですよ…!」
彼が身を捩る。
だが、言うまで許す気はない。
「言う気になったかい?」
「ダメです!サニーさんと約束したんですから!男同士の約束は破れません!!」
彼が必死に僕の手を掴む。
…ますます気に食わなかったが、大河の性格を考えるとそれはきっと言ってくれないだろう。
仕方ない、諦めるしかないようだ。
「…それは仕方ないな」
「すいません、でも…昴さんの悪口とかじゃないですからね?誤解しないで下さい」
目線だけでちらりと僕を見て大河が言う。
「わかってるよ。……じゃあ今度僕とも一緒に入ろうか。シアターの露天風呂に」
「……そうですね。男同士だから一緒に入ってもおかしくないんですよね……はぁ」
何だか未だに誤解したままだが心なしか大河の声に力が無い。
もしかして、がっかりしてるんだろうか。
彼の背中に湯をかけて流し終えると、彼は意を決したように僕の方へ振り向いた。
「じゃあ、今度は僕が昴さんの背中………を……………へ?」
「大河」
彼の視線が、僕の顔を見て、上半身を見て、下半身を見たところで止まった。
僕はもうタオルで前を隠してはいない。
つまり、裸だ。
「………」
彼の目は僕の下半身を見たまま釘付けになっている。
顎がそのまま落ちそうなほど、口をぽかーんと開けて。
どうやらようやく気付いたらしい。
「今度は君が僕の背中を流してくれるのかい?嬉しいな、大河」
彼に向かってにっこりと微笑むと、お返しとばかりに大河の下半身を見つめてふっと笑う。
「ああ、それと。僕の性別は男じゃない。女だよ。見れば分かると思うけど」
男の下半身というものは非常にわかりやすい。
隠すように置かれたタオルの上からでも、彼の分身がむくむくと鎌首をもたげているのが見えて僕は満足だった。
僕のおよそ女性らしくない身体でも彼はちゃんと反応してくれるのだから。
これなら、いけるかもしれない。
「す、すすすすすすすす昴さん!!」
「何だい」
「ご、ごめんなさい…ぼく……てっきり男性だと勘違いしていて。すぐに出て行きますから!!」
そのままアワアワしながら浴室から出て行こうとする大河の背中に、ぴったりと自分の身体を押し付ける。
彼がびくりと震えた。何だかどっちが男でどっちが女だか分からない気もするが。
冗談じゃない、ここまでしているのに出て行かれたら僕の立場が無いじゃないか。
「酷いな、大河。僕がここまでしているのに…わからないのかい?」
耳元で、囁く。
「僕を洗ってくれるんだろう?隅々まで、綺麗に、ね」
「……っ…」
大河がくるりと振り向くと、僕にやや強引にキスをする。
噛み付くようなキスと共に、手が胸をさすって突起を探り当てるとくりくりと円を描くように弄んだ。
「…んっ……」
ようやくその気になってくれたらしい。やれやれ、世話の焼ける。
僕も彼の背に手を回して抱きしめようとしたら、唇が離れて、手も止まった。
「……いいんですか、本当に。これもいつものようにぼくをからかっているだけだったら、怒りますよ」
「冗談で自分の性別をばらしたりしないよ。僕だって」
くすりと笑う。
ここまで来ても疑われるとは…さんざんいじめすぎたのだろうか。
「大河は…僕と、したい?」
「したくないわけないじゃないですか。いつも、必死に我慢してたんですよ」
恨みがましい目が、僕を睨む。
僕はあやすようにその頭を撫でた。
「じゃあ、もう我慢しなくていいよ」
「でも…」
と彼は口ごもる。
「まだ何かあるのかい?」
「…ここで、いいんですか?」
「昴は言った…場所が何処かなんて、僕たちにとっては些細な問題だ、と」
この期に及んで場所を気にするとは。
でも、彼らしいといえば彼らしいのかもしれない。
「僕は君が好きだ」
「ぼくだって、昴さんが好きですよ」
「じゃあ、何も問題はないじゃないか」
「……もう、本当に我慢しませんからね!」
その言葉と共に彼の唇が再び重なり、手が胸を優しく揉みしだく。
…実際は揉むほどの胸はないけれど。
「…っは……ぁ」
遠慮がちに舌を差し入れられれば、それに自分の舌を絡めて応える。
僕の口内の舌も彼の手の動きもぎこちなかったけど、一生懸命さが伝わってきて胸が熱くなった。
何よりも、直接肌と肌を触れ合わせて感じる彼の体温は温かくて、安心する。
「……たいが…ぁ……たいが……ん……はぁ……あぁ…」
彼の手が滑るように身体を這い、唇と舌が首筋から鎖骨を通って立ち上がった桃色の先端へと辿り着く。
「昴さん……」
「んんっ…!う、んっ……ひぁ……ふ…っ……あぅ…ん…」
口に含まれて舌で転がされると、一層甘い声が自分の喉から漏れて、僕は天井を仰ぎながら彼の頭を抱いた。
浴室を漂う湯気の中に、自分の吐き出す息が混じって。
頭の中にも靄がかかっていく。
「……んっ!」
するするとおりてきた彼の指が僕の秘所に触れたが、どうやら何処が入り口かいまいちわからないらしい。
数本の指が入り口の辺りをうろうろするが、彷徨うばかりで中に入っても来なければ、優しい彼は強引に割り込もうなどとは当然しない。
愛撫と呼ぶにはちょっと奇妙な動作がしばし繰り返されて。
「んんっ…大河……ぁっ」
僕はくすぐったさに耐え切れなくなって、さりげなく身を捩って彼を避ける。
そんなことをされると気持ち良いというか、むず痒い。
彼を見ると、恥ずかしさからか少し顔を赤らめていた。
「す、すいません……」
「……いいよ、ちょっと待って」
すっと立ち上がり、バスタブの縁に腰掛ける。
そうすると、しっとりと濡れて彼を待つ僕の割れ目…が彼の視線の先、目の前にくる。
流石に恥ずかしいけれど、浴室という湯気に包まれてじっくりとは見られない環境のせいか、覚悟を決めたせいか。
「これで……平気?」
大河の視線を感じて、耳まで赤くなるのを感じながら呟く。
「昴さん……」
タイルについた爪先がぷるぷる震えているのが自分でもわかる。
恥ずかしい、でもその恥ずかしさに僕は少しばかり『感じて』いるのかもしれない。
こんな事をして、彼に嫌な顔をされたらどうしようという不安もなかったわけじゃないが。
大河は嫌な顔どころか食い入るように僕の秘部を凝視している。
その視線に、嫌悪感はない。
「あ、あんまり…見つめないでくれないか。僕だって、恥ずかしくないわけじゃない……」
あまりにじっと見つめたまま動かない大河にそう言うと、我に帰ったようだ。
「す、すいません……あんまり綺麗なんで、つい」
そんなことを呟いた。
「大河……」
それがお世辞であっても。
彼がそう言ってくれるのは嬉しかった。
「すごい、ひくひくしてる…」
「……触っても、いいよ。大河の好きなように…して」
わずかに足を広げて、大河を誘う。
彼は花の蜜に誘われる虫のように僕に近づくと、なぞるように指で触れた。
「…んっ……」
「痛かったら、言ってくださいね」
今度はちゃんと場所が分かったらしい。
潤みを纏った彼の指が、一関節分だけ沈められた。
「昴さんの中、あつい……それにすごいどろどろしてる…」
「……っ」
口に出されると行為そのものより恥ずかしい。
「たい、が……もっと、入れても、平気…だから」
彼は僕を気遣ってか、それ以上指を侵入させようとはしてこない。
じれったい。
「あ、はい…じゃあ、痛かったら本当に言ってくださいね」
遠慮がちに、彼の指が僕の奥を目指し入り込んで。
あっという間に指の付け根まで飲み込んでしまった。
「…本当に、入るんですね」
「当たり前、だろう?だって…」
感心したように言う彼に苦笑しながら閉じていた目を開き、下を向く。
タイルに触れていた爪先を軽くあげると、そそり立った彼の分身を指の腹と爪で突いた。
反射的に、彼がびくりと身体を震わせる。
「…っ!?昴さん!」
「これだって、入るように出来ているんだから。人間の身体は」
慌てて腰を引くのが面白い。
「ふふっ……でも、大きさが全然違うからね。ゆっくり時間をかけてくれないと、僕だって辛いけど」
さりげなく行為の続きを促したつもりだったのだが、彼には伝わったのか伝わってないのか。
指を引き抜くと、何と鼻先を近づけて匂いを嗅ぎだした。
「ば、馬鹿…!何をしている」
「え、だってどんな匂いだか気になるじゃないですか」
「そんな…嗅ぐな!」
「えへへ……味はどんななんでしょうね」
「んんっ!!たいが……あ…ぁ…ぅぅん……」
彼にも少しは余裕が出てきたと喜ぶべきなのか。
僕の股間に顔を埋めて、本当に味わうように吸い付かれた。
大河の舌が、周りの蜜を舐めて更に溢れ出る先を探すように僕の中に割り込んでくる。
「んっ……あ…や……たい…が……ふぁ……あ……ぅ……ぅうん……」
中を舌で刺激されるのは勿論の事、彼が奥へ奥へと舌を伸ばすたびに鼻先が陰核に触れるのも身体を痺れさせて。
彼を催促するように割れ目が震え、媚びて甘えるような声が自分の口から漏れた。
「…ぁあ……たいが……たいがぁ……んっ…そこ…そこも……気持ち…いい……もっと………あぁ……」
「ここ、と…ここもですか?」
僕の言葉通り、僕が感じる箇所に大河の舌先と指が触れる。
こくりと頷くと、彼は舌を抜いて代わりに指で入り口にほど近い部分刺激をしながら芽を唇で包み込むようにして二箇所を責めたてて来た。
そうすると僕はもっと甘い声をあげて、すすり泣くように彼に懇願してしまう。
「ああっ…!た、いがっ……ぁ…んん……や、はぁっ……くぅぅん!」
薄目を開けると、彼の黒い髪を撫で付けるように触れていた自分の手は握るようにして何本かの髪を絡めている。
さきほど、彼の雨に濡れた髪にやけにドキッとしたのを思い出し、再び心臓が跳ねた。
顔を俯かせると、自分の視界にも同じ黒い髪がばさりとかかる。
不思議だな、と思う。
同じ日本人である僕と彼がこうして紐育で出会ったことも、惹かれあったことも。
日本だったら出会うことは無かったかもしれない。
紐育という全てを飲み込む巨大で若い都市。
その溢れんばかりの熱情を帯びたところは、彼に似ているかもしれない。
だから僕はこの都市で、彼に惹かれたのだろうか。
そんな事を思いながら。
「ぁっ……たいが…っは……はぁ……あぁ………ぅ、んんっ……」
いつの間にか、肩幅程度に開かれていた足が思い切り広げられてつま先がぴんと伸びているのに気付く。
改めて自分の格好を見るととても恥ずかしい。
でもそれすらも感じてしまう。
大河にだったら。
どんな自分でも、見て欲しいと思ってしまう。
こうやって彼を求める僕も、紛れも無い僕だから。
「ああっ…!たいが…!もう、もう……や……ぁっ…あ…んっ、い、くぅ……っ!!」
震えが最高潮に達すると同時に、僕はぎゅっと身を屈めて彼にしがみつくようにして、のぼりつめた。

「…はぁっ……はぁ……たいが…」
「昴さん、イったんですか?」
整わない呼吸の代わりに、頷いて答える。
そうすると彼は嬉しそうに笑った。
「良かったぁ。ぼくもう必死で……えへへ、嬉しいです」
「大河……」
彼の胸に飛び込むようにして、身体を預ける。
大河は優しく僕を受け止めて、抱きしめてくれた。
「ありがとう……大河」
そう言って彼を見上げると視線が合い、貪るようにして唇を重ねあわす。
…ちょっとしょっぱいような味がするのは、それが自分の愛液なのかと思うと少し恥ずかしかったけど。
「…ん……大河……」
「昴さん、挿れても…いい、ですか?」
いちいち断るのが彼らしいというかなんというか。
「いいよ…僕だって、大河が…欲しい」
耳元でそう囁くと効果は抜群だったらしい。
大河は僕を押し倒すようにしてタイルの上に寝かせると、ゆっくりと僕の中に分け入ってくる。
「……っ」
その熱さよりもひんやりとしたタイルの感触に、思わずびくりと身体が震えた。
「あ、すいません。冷たかったですね」
「いや、平気だよ…それに、君が温めてくれるんだろう?」
そう呟きながら彼の背に腕を回そうとしたら
「……ぼくにしっかり掴まっていてくださいね」
「え?」
彼は僕の両足の膝の裏に腕を回し、ひょいと抱えあげるとバスタブの縁に腰掛けさせた。
…繋がったまま。
「これなら平気ですか?」
「平気だけど…君が辛くないか?」
「平気ですよ。じゃあしっかり掴まっていてくださいね」
言うなり彼は浅く抽挿を数度繰り返したかと思うと、いきなり奥深くまで突き上げる。
「んっ…んっ………あぁぁぁっ!…はっ…ぁ…っ…っ」
「昴さん……」
「はぁっ……た…い……がっ……あっ…ぁ……んっ……ふっ……」
浅く繰り返される度に入り口付近を刺激される快楽も、深く挿入される心理的な満足感も。
どちらも僕を蕩けさせ、おかしくする。
その度に全身が揺すぶられて、彼を呼ぶ声すらまともな言葉にならない。
僕の口からは甘い喘ぎとかすれた悲鳴のような声が交互に漏れて、室内に消えていく。
だが、おかしくなっていたのは僕だけではないらしい。
「昴さんの中……あつくてすごい、気持ちいい……」
「まっ、そ…そ……ん……激し……あ…やぁっ……た…いが…ぁっ」
まるで今までの我慢をぶつけるみたいに。
浅く、時折深く、を繰り返していた彼の動きがだんだん早まっていったと思ったら。
しまいには息もつかせぬほど激しく揺すぶられる。
子宮口を突き上げるように深く繰り返される挿入。
それ以外の動作を忘れてしまったかのように大河はがむしゃらに僕を責めたてる。
「たい……っ…たい、がぁっ……待……まっ…も…少し……あっ、あっ……」
待って、と言おうとしても言葉にはビブラートがかかって彼の耳には伝わらない。
何よりも、結合部が立てる淫らな音の方が大きくて。
貪るような大河の動きに僕は振り落とされないようにしがみつくのが精一杯だった。
しがみつきながら、こんなにいきなりペースを速めたら彼がもたないんじゃないだろうかと頭の隅で思っていたら。
「……っ!昴さん、すいませ……」
思ったとおりというか、彼がイってしまったしい。
「ごめんなさい…昴さんの中、気持ちよすぎて…耐え切れませんでした……」
がっくりと肩を落として、彼はすまなそうに目を伏せる。
確かに…まぁちょっと早かったけど。
その仕草もおかしくて、僕は思わずクスクスと笑ってしまう。
「…笑われても仕方ないですよね。はぁ…」
「そうじゃないよ。大河がそんなに貪欲に僕を求めてくるなんて思ってなかったから、ちょっと意外で」
「そりゃあ…!今まで我慢してたんですよ。……昴さんが知らなかっただけで」
「知ってたよ。だから悪いと思ってるんじゃないか」
「本当に?」
じっと見つめられる。
「本当だよ。さて、どうしようか…って」
未だに僕の中に収まったままの彼が固さを取り戻すのがわかって、思わず彼を見ると彼は照れくさそうに笑った。
「えへへ、今度は頑張りますね」
「…そうだね。今度はもうちょっと長く楽しめるように、期待してるよ。大河」
「はいっ!サムライの意地にかけて頑張ります、何度でも!」
「でも」
「でも?」
「今度はもっとキスして欲しいな。知ってる?キスされるだけで、僕がもっと君を欲しくなるくらい感じてることを、さ」
微笑む僕に、大河は優しく口付ける。
キスもセックスもまだまだ『躾』の余地があるけれど。
まぁこれからじっくり時間をかけて彼に僕がどうすれば感じるのかわかってもらえばいいか。
初めてにしては及第点だったし、時間はたっぷりあるのだから。
ちらりと頭の隅でリカから貰ったストロベリーキャンディーの存在を思い出す。
僕には甘ったるくて食べる気になれないから置きっ放しになっていたのだけれど。
ああ、あれなんかキスの練習にいいかもしれない。
キスをしながらキャンディーを相手の口から取り返すゲームでもすれば彼のキスも少しは上達するだろうか?
後で試してみよう、とそんなことを思いつつ。
僕は相変わらずぎこちないけれど、でも一生懸命な大河と口付けを交わしながら、心の中で一人笑った。


「くしゅん!」
「…くしゅん」
「おや、大河くんも昴も風邪かい?二人揃ってって……もしかしてどちらかの風邪をうつすようなことでもヤっ…」
「サニー…それ以上言ったら踏むわよ」
「ラチェット!踏んでから言わないでくれよ!!」
翌日。
僕と大河が共にくしゃみするのを見たサニーにそんな事を言われた。
ラチェットに『躾』られるサニーを見ながら大河と顔を見合わせて笑う。
彼がサムライの意地にかけて頑張ったのか。
例のゲームによってキスが上達したのかは。
僕と彼だけの秘密。

END





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