命の重さ 11





大通り沿いにある衣倉の店は、今日も繁盛している。

だが店の奥、店主の私室は静まり返っていた。

衣倉の店主は壁際の文机の前に、ただ人形の様に座っていた。


「失礼します」


声をかけてから、イルカとカカシは姿を現した。


「任務は終了しました。
亡骸の処分は其方で行う、と聞いております。
なので自分の寝所で、眠っている様に見せかけてあります」


イルカは無感情に、淡々と報告を済ませた。


「そうですか。ご苦労様でした」


店主は振り向かずに言う。

こちらの声にも、感情はなかった。


「亡骸を横たえる時に見つけたのですが、目を通していただけますか?」


イルカの言葉に、はじめて店主の身体が動いた。

作法の手本のように、店主は身体ごと向きをなおした。

向かい合わせになるのを待ち、イルカは懐から古い書を差し出した。

店主は受け取ると、書に目を通した。

少しして、店主の身体が不自然に揺れた。


「これを、あの子が持っていたのですか?」

「はい。正式に、私が譲渡されたものです」


イルカが告げると、店主はそうですか、と呟いた。


「・・・もうお気づきでしょうが、私の一族の祖先は血継限界をもつ忍です。
ユウゲツは生まれつき、その力を本人の意志とは関係なく暴走させてしまう子でした。
あの子は……奪った命に、償うつもりだったのでしょう。
私達は昔からの習わしで、力を持つ子供を亡き者にする事しか、考えていませんでした。
けれども、これからはこの書にある“力を切り離す法”を選ぶでしょう。
その時は木の葉に依頼する、という事でよろしいですか?」


店主の身体は、呪縛がからとかれた様に人間らしさが戻っていた。


「はい。
書はこちらで大切に、保管させていただきます」


イルカは目礼し、店主の部屋をあとにした。

イルカ達の姿が消えた室内では、店主が独り涙を流した。


「…ユウゲツ…安心してお休み…」


イルカ達は遠ざかりながら、その言葉を耳にいれていた。


「よくできた人形みたいだったのに。
最後の最後で親の顔した人間になった…か…」


カカシは独り言の様に呟いた。

イルカとしても、冷たい人間だと思っていた。

だがユウゲツの亡骸を寝所に運んだ時、見つけた海比古宛ての手紙を読んで

見解を改めたのだ。

血継限界のある者は忌み嫌われる。

狩られる側と言ってもいい。

一族を守る為、我が子の命を奪わなければいけない店主は、その心を凍らせたのだろう。

ユウゲツは最後まで店主を、父親を憎んでいなかった。

依頼主を知っていたにもかかわらず。

ユウゲツは本当に全てを悟り、自らの命で殺してしまった命に償う事を選んだのだ。

生き残る方法も、あったにもかかわらずに…。




『海比古さんへ

望みを叶えてくださって、ありがとうございました。

仲の良い祖父母をみて育ち、恋というものが知りたいと思いました。

海比古さんに出逢えて、僕は幸せです。

ですが、好きな人に僕の命を背負わせてしまいました。

どうしても、忘れてほしくなかったのです。

僕の命の重さが、そのまま貴方への想いの深さです。

最後に我が儘を通してしまい、ごめんなさい。』




ユウゲツの手紙の前半は、そう書かれていた。

書を発見した時、ユウゲツは幾度かめに人を殺めた後だった。

えぐられた丘のいっかくから、厳重に守られて見つかった書。

度重なる戦火の中、書を守るためにそうしたのかもしれない。

だがいつしか、忘れられてしまっていたのだろう。

イルカはユウゲツを忘れないだろう。

イルカの中で、ユウゲツは生き続けるのだ。


「イルカ先生、里に帰ったらアナタの全てをもらいます。
喜びも、苦しみもです。
だから“はたけカカシ”を、もらってね」


カカシは森の中を駆けながら、イルカを抱きしめた。

カカシの温もりは、とても落ち着く。


「そんなに甘やかさないでください」

「恋人の特権です。
オレも甘えますから、里に着いたら覚悟してくださいね」


カカシは、にっこりと笑いかけた。

イルカは頬を染めながら、頷いた。

もう奇行をはたらく、あやしい上忍なんて思えない。

はたけカカシに向き合い、はらを括る事にしたのだ。

二人の足取りは、自然と早くなっていくのだった。



END


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