「あー!また間違えた!!」
悔しさのあまり思わず頭をかきむしっていると、ナーヴァさんがその手を抑えて
やめさせてくれた。
「少し休憩して、もう一度通しましょう。」
舞は頭じゃなくて体で覚えるのが望ましいという。
だから毎日舞ってるんだけど、完璧にできるのって5回に1回なんだ。
これじゃ、いけないよなぁ。
「根をつめすぎてもいけませんよ。
今日は年少の舞手が練習している様子でも見学してみませんか?」
確かにナーヴァさんの言う通りだな。
ムキになるとうまくいかないこと、あるじゃん?
変に力が入ってるんだと思う。
「見学してみたい!
10才から舞手の訓練するんだよね?」
「ええ。」
そういうナーヴァさんは8才から舞ってたらしい。
祭儀官の舞手を多くだしてる家系なんだって聞いたな。
ナーヴァさんと移動中、ナーヴァさんの婚約者のフェグリットさんに会った。
「やぁ、我が最愛の姫君。
尚吾様とどちらに?」
この人ナーヴァさんの事、普通に呼べないのかな?
聞いてる俺が恥ずかしいんだよ。
「見習い舞手の練習室に行く所です。
貴方はこんな所でサボりですか?」
「これは手厳しい。
では仕事として、護衛につきましょう。」
ナーヴァさんが仕方ないといった顔してるよ。
やっぱり伴侶となる人には甘いんだなぁ。
そうして案内された部屋には、10才くらいから15才くらいの
7人の見習い舞手がいた。
みんな綺麗な顔してて人形みたいだ。
あ、紺色の髪の子がいる!
「私の甥が二人、見習いにいます。
私と同じ髪の色の子と、銀髪の子です。」
「へぇ。ああ、二人とも上手いね。」
振りのメリハリがビシッとしてるんだ。
でも凄く楽しんで舞ってるのがわかる。
もしかして、俺に足りないのは楽しむ余裕かな?
楽しむには舞が好きにならなくてはいけない。
難しい部分があっても嫌いじゃないから、俺も楽しめるはずだよな。
よし!
「私は少々用事がありますので失礼します。
残り時間は見学を続けるか、ご自分の練習にもどられるか
ショウゴ様のお好きなように使ってください。」
ナーヴァさんはそう言って足早に消えてしまった。
残ったのは俺とフェグリットさん。
「俺、自分の練習室にもどるかな。」
「もう少し見学する事をお勧めしますよ。」
なんでだろう?
あれ?
舞の感じが変わった…。
「今練習してるのは、初代の王が最愛の異世界人と離れる時の
心情を表すところですね。」
「…そうなんだ。
なんか苦しい感じが伝わる…。」
身を切られる想いで離れた二人。
舞でもその感じがよくでてる。
舞はその意味も込めて表現しなきゃいけないんだな。
「今度こそ、わかった気がする。」
「さすが尚吾様。
では練習室にお送りしましょう。」
フェグリットさん侮れないなぁ。
まぁ天使ってやつだしな。
そういえば天使の羽根って、鳥みたいに物体で出来てるんじゃないんだ。
天使の力が具現化したものなんだってさ。
だから大天使は何枚も羽根が生えてる絵ばかりなんだなぁ。
フェグリットさんは長身だけど細身の部類。
でも青っぽい銀髪が短く整えられてて、なんか貴公子って感じに見えるんだ。
「ね、フェグリットさんはナーヴァさんとどうやって知り合えたの?」
前から疑問に思ってたんだよね。
「俺がこの建物の裏に落下したんですよ。
ナーヴァが手当てしてくれまして、言葉も全て教えてくれました。」
「やっぱりそういうパターンなんだ…。」
この世界の法則なのか!?
まぁ、レオノアとめぐり合えて今では感謝してるけどさ。
「ナーヴァの場合、神格化しているので私が伴侶として
召喚されたんだと思いますよ。
まぁ、それだけではないんだけどね。」
「意味深じゃん。教えてくれないの?」
「時が来たら教えますとも。
そういえば、尚吾様の身体に浮き上がった模様ですが
今度見せていただけますか?
もちろんナーヴァも立会いのもとで。」
なんだか話をそらされた気分。
教えてくれるのを待ってみるか。
「レオノアやユーシスに聞いてみるよ。」
「よろしくお願いします。
では、失礼しますよ。」
フェグリットさんが出て行った後、自分なりに意味を考えて舞ってみた。
なんだか舞の振り一つ一つに愛着が持てた感じがする。
午後はレオノアと昼食。
一通り食事が終わった後、フェグリットさんに言われた事を伝えた。
「駄目だ。」
「えっ!?
だってさ、ナーヴァさんもいるし。
意味があることなんだと思うんだ。」
「ショウゴは俺の伴侶だ。
他人に肌を見られるのは俺が許せない。」
うわぁ〜…。
嬉しいとか思っちゃったじゃん!!
「いや、でもさ。
俺の役目に関わることだから…。」
レオノアが俺の事をじっと見てるよ。
目をそらせたら負けるって事だよな。
しばらく見つめ合ってたら、ため息とともにレオノアがおれてくれた。
「俺も同席させてもらう。
明日の夕方、それ以外に時間は作れない。」
「あ、うん。すぐに手紙を書いておくよ。
ありがとう。」
レオノアは少し笑ってくれた。
執務に戻るレオノアを見送ってから、手紙を書いてナーヴァさんのとこに
届けてもらった。
ナーヴァさん経由の方が誤解されないし、なんだか安全だと思ったんだ。
あ、そろそろ俺も行かなきゃいけないな。
どこかって?
それはユーシスの息子達のところだ。
ユーリとキーアの勉強時間に、俺も便乗して勉強してるってわけ。
その後はお茶したり、遊んだりしてる。
こうして日々過してるうちにさ、自分の使命が誇りに思えてきたんだ。
頑張るのが苦じゃないんだ。
この世界の事を学ぶのも苦じゃない。
あれだけ勉強嫌いだったのにって思うよ。
押し付けられて勉強するんじゃなくて、自分が興味を持ったから。
その違いが大きいんだ。
この世界に来て、俺はよかったと心から思えるよ。
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まだ準備が整わないままスタートです;
なるべく週一回くらいで更新できるよう頑張ります^^;