た、た、大変だ!!
風の精霊フィルが消えた!
昨日の夜は居たのに!
籠の中で寝てたのに!!
窓は開いてなかったから、外には出てないはずなんだけどな……。
結局、部屋中探しても、フィルは見つからなかった。
ヴァフィトさんに相談したら、俺の側に気配はするから
安心するようにって言われた。
でもさ、見えてたものが見えないわけで……。
ここにきて、ちょっと不安になってきた。
いや、弱気は禁物!しっかりしろ、俺!
次の日から、舞は自主練習。
ナーヴァさんは、ヨルドさんと準備にかかりきりになるみたいだ。
ゆくゆくは祭儀官長になるから、今のうちにヨルドさんについてるらしい。
レオノアとユーシスは、公務をかたづける為に忙しい。
毎晩、夕食ですら会えない。
レオノアとゆっくり話したいのにな……。
でもって、不安な気持ちを整理したい。
フィルが消えた理由が、ヴァフィトさんが言ってたみたいな
自分の枠が無くなって消えてしまうってヤツじゃ無ければいいな……。
あれって死んじゃうのと変わんないじゃん。
ヘンな精霊だけど、フィルはもう家族みたいな感じだから。
弟みたいなさ。
無邪気で子供みたいなんだけど、心強い味方で。
ああ、なんだか目が霞んできた。
だんじて、涙なんかじゃないから!
俺はいつの間にか寝入っていた。
翌朝、レオノアに起こされて朝ごはんを食べた。
レオノアは朝一番に朝議をすませて、俺と二人で食事を摂る。
心配かけたくないけど、やっぱりダメだ。
食が進まない。
「ショウゴ、もういいのか?」
「うん……」
俺をしばらく見ていたレオノアは、目の前の皿を綺麗に平らげた。
そっと席を立つ気配に、俺はますます気が重くなった。
「今日は午後からの執務になっている。
少しゆっくりできる」
レオノアが俺を抱き上げて告げた。
何も心配いらないぞって言うような、そんな顔で微笑まれたら……。
俺は不覚にも、その後しばらく大泣きしてしまった。
レオノアの厚い胸に抱きしめられて、大きな手が髪を撫でる感触に
慰められながら。
レオノアは口下手だけどさ、行動で語るのが凄く上手いと思う。
少なくとも俺には、言葉よりも深く多くを語ってくれてる気がするんだ。
「レオノア、忙しい時なのにありがとう」
「気にしなくていい」
やっと涙がおさまった俺は、やっと顔を上げる事ができた。
あんなに無茶苦茶だった心が、今は軽くなってるのが不思議だよ。
「フィルが居なくなって、なんか不安で……。
それにさ、俺自身の事とかも……」
「お前は自分でも知らない間に、不安を溜め込んでいるんだ。
俺がお前の不安ごと引き受ける。
だからショウゴは、ただ前を向いていればいい」
「うん……。レオノア」
レオノアはいつも俺を支えてくれる。
俺もいつか、レオノアと並びたい。
今は支えられる方でも、いつか俺が支えたい。
だから今は試練の時なんだよな、きっとさ。
フィルの事も、ヴァフィトさんのいう事を信じて待つことにした。
風の竜に会えば、きっとなんとかなると思うし。
そんな事を考えてたら、レオノアの手が俺の胸の辺りを撫でてきた。
いつの間に服脱がされてんだよ、俺!
レオノアの綺麗な緑の瞳が、熱く射る。
この目で見られると、俺の身体も反応しちゃうんだよなぁ。
俺は素直に身を任せた。
レオノアは寝室に俺を運ぶと、自分も服を落として重なってくる。
啄ばむ様なキスから始まって、口の中を犯すようなものに変化していく。
レオノアの激しさを受け止めながら、俺はフィルの声を聞いて気がした。
意識を失う寸前に。
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久しぶりの更新になって申し訳ないです;