ジーナに連れられて到着した場所は、城から出て南にある建物だった。

白い建物で、天上がドーム状になってるんだ。


「ここは祭儀官が働く場所です。
祭儀官の仕事は、国の祭儀に関わる全ての行事と、祭りでの舞の奉納。
そして、世界の成り立ちなどを国民に伝承することなんです。」

「すごいね。ナーヴァさんって綺麗だし、舞とか凄いんだろうね。」


多分、歌舞伎とか演劇が混じった仕事なんだろうな。

日本でも皇室関連で似たような仕事無かったっけ?

兎に角、大事な仕事なんだと思う。


「ナーヴァ様はこの国で知らない者がいないほどの舞い手です!
神秘的で、凛としていて、まるで人ではないような神々しい方です!!」

「そ、そうなんだ…。」


ファンなんだね…。

だから今日はいつもより気合入ってるんだ…。


「ショウゴ様。ナーヴァ様は10歳から舞を奉納される役目を務めてお出でです。
舞い手は穢れの許されない身。
なのでナーヴァ様は18年間、清い身を保った事になるのですよ。
ですがついにショウゴ様に舞を教えるのを最後に、ご結婚されるそうです。」


あ、落ち込んだ。

でも、あのナーヴァさんの結婚相手か…。

どんな人だろう?

俺たちは建物の入り口に来ていた。

ジーナは中に入れないらしい。残念だったね…。

二人いた警護の片方が俺を中に案内してくれた。


「ショウゴ様、おはようございます。
まずはこちらへお座りになってください。」

「は、はい…。」


緊張するな…。

劇場みたいになってる客席に俺は座った。

舞台になってる方へナーヴァさんが上っていったから

たぶんお手本を見せてくれるんだろうと思う。


「まずは見ていてください。」

「はい。」


一度目を閉じてから、ナーヴァさんの舞が始まった。

足が…、どう動いてるのかわかんない!!

跳ねるようなステップで、手にもったベルを鳴らしたりしてる。

静かに動きが終わると、ナーヴァさんが来た。


「今のが静めるための舞です。
本来なら足にも鈴をつけますが、影響が出ないように
練習ではつけません。」

「やっぱり、音が重要なんだね。」

「ええ、そうです。」


あ、ナーヴァさんがにっこり笑ってくれた。

やっぱり綺麗だなぁ。


「今日は本調子では無い様なので、手の振りだけ練習しましょう。」

「あ、…はい…。」


昨日レオノアとエッチしたのがばれてる!?

落ち着け、俺!!

なんとか集中して練習を終えた。

腕が痛い!普段使わない筋肉を使ってるんだな。


「お疲れ様です。筋がいいようで安心しましたよ。
これで私も心おきなく引退できます。」

「ナーヴァさんも結婚するんだよね?
どんな女性なんですか?」

「私の結婚相手はショウゴ様と同じ異世界人です。
…ああ、ちょうどいいのでご紹介しますね。」


ナーヴァさんは入り口近くにいた護衛の人、さっき案内してくれた

男の人を手招きして呼び寄せた。

ナーヴァさんの相手も男なんだね…。


「お呼びとあらば。我が愛しの君。」

「バカ言ってないでごあいさつを。」

「ははは。先ほどはどうも、尚吾様。
私はフェグリットといいます。あちらの世界で言うとこの
天使ですよ。」

「!!」


俺の目の前でフェグリットさんの背中から羽が生えた。

雪みたいに真っ白な羽が舞い散る。

凄く綺麗だ…。


「本当に…天使っているんだね…。」

「ええ。あ、そうそう。
レオノア様がお待ちですよ。」


は!?

もっと早く言えよ!!


「あまり待たせてはいけませんね。
お引止めしてすいません。」

「俺のほうこそ。
明日もお願いします。」


俺は二人に見送られて外に出た。

城側方にレオノアがいた。


「ゴメン。待たせて。」

「気にするな。どうだった?」


歩きながら、俺はさっきのこと全てを報告した。

レオノアは相変わらずの無表情に、目だけが優しく俺を見てる。

なんだか甘い雰囲気で困る。

何が困るって、キスしたくなったからだ。

どうしよう?そんな風にレオノアを見たら、通じたみたいで

レオノアの顔が近づいてきて…。

ゴツッ!!


「いってぇ〜!!」


おでこ、痛い!!

ああ、もう!なんなんだよ!?

うわっ、レオノアが頬骨抑えて涙目になってんじゃん!!


「ぶつかってきておいて謝らないのはダメだろう!?」

「おまえがショウゴだろ?
それぐらい避けられないの?」


このガキが!!

俺の背後にぶつかって来たのは10歳くらいの子供だった。

サラサラ金髪に、左右微妙に色が違う眼をした黙っていれば

可愛い少年。


「キーア、お前が悪い。
ショウゴは大事な役目があるんだ。
怪我をさせたら大変だろう?」


レオノアは知ってる子みたいだな。

もっと怒ってやれ!!


「だって…。」

「キーアが悪いよ。
ごめんなさい。レオン叔父様。ショウゴ様。」


あ、増殖。いやいや、双子なんだな。


「ユーリが謝るとキーアが謝りにくくなる。」

「そうだね。ごめん、キーア。」

「う、…僕が悪いんだよ!
二人共、ごめんなさい!!」


あ、キーアが走って逃げていった。

お辞儀してからユーリが追っかけていく。

なんかある意味可愛いかも…。


「驚かせてすまない。
兄上の息子で、双子の兄がユーリ。
弟がキーアだ。」

「ユーシス結婚してたんだ!?」


しかも子供いるし!!

まだまだ俺が驚ける事は多いんだな。


「王妃様と里帰りしておられたんだ。
仲良くなってやってほしい。」

「ああ、俺けっこう子供好きだから。
大丈夫だよ。」


笑って言ったら、レオノアの早業でキスされた。

今度は邪魔は入らなかったな。

俺とレオノアはユーシスたちと合流して昼食とった。

いやぁユーシスの奥さん、すごいよ。

元・王直属の騎士団副隊長だってさ。

シャーレンさんっていって気さくで、豪快な人なんだ。

なんだか女性の概念が覆されたよ。

顔は中の上。背は俺より頭半分高い。

そして俺よりガッシリしてるんだ。

ユーシスと二人で馬鹿笑いしてる姿は親友って感じ。

でも、それも有りなんだって思った。

ユーシスが王様でも兄でも無い、素顔でいるのが分かったから。

子供達とも仲良くなれたみたい。

明日は午後に遊ぶ約束しちゃった。




結婚式の衣装の採寸が終わって、俺は舞の復習をした。

夕食はシャーレンさん達と食べた。

ユーシスとレオノアは忙しいみたいで一緒じゃなかったけどね。

夕食後はパラパラと本を読んでたら寝てしまった。

レオノアがベットに運んでくれたみたいだ。

寝ぼけてあんまり覚えてないんだよね。

そんなこんなで、俺は舞の練習と王族マナーを覚えつつ

双子と楽しく遊んだり日々を過していた。

なんだかあっという間に結婚式前日になった気がする。

バルコニーから見える城下町は、お祭り騒ぎで色とりどりの花が

飾ってあるのがわかる。

異世界に来て、まさか自分が本当に結婚することになるとは…。

でもこんな風に受け入れてもらえると嬉しいもんだなって思うんだ。

ジョンと村長さんには手紙を出した。

お祝いに来てくれるって。

レギウスだった頃の邸に泊まることになったみたい。

俺たちも王族専用の部屋に異動しているんだ。


「ショウゴ、眠れないのか?」

「うーん、そうかもしれない。」


レオノアは前より柔らかく笑うようになったと思う。

俺が幸せを貰った分以上にレオノアにも幸せになって欲しい。

もっともっと笑って欲しいんだ。

俺は広いベットだけどレオノアにひっついて目を閉じた。




当日は婚礼の儀式から始まって、ナーバさん達が祝いの舞を舞ってくれた。

貴族や他国の王族がいる中、四体の竜の像の前でレオノアとの婚姻報告をした。

そして豪華な馬車に乗ってパレード。

花びらが舞い散る中、俺たちは城下町の大通りを一周して城に戻った。

婚礼の衣装は、二人共男だからそんなに派手じゃないんだ。

薄いブルーの服で、俺はちょっとヒラヒラしてるシャツに短めの上着。

レオノアはシャツにスカーフ、長い上着。

よく見ると銀糸の刺繍がスゴイんだ!!

でもって二人共マント着用。

マントを止める宝石が大きいから、落とさないように気をつけなくちゃ。

城に帰った俺たちは少し休憩してから晩餐会で、お祝いに来てくれた

各国の王族・貴族に祝いの言葉や贈り物をもらった。

あんまり大勢の人で、名前とか覚えられなかったよ。

本当に王族って大変なんだな…。

やっと晩餐会が終わって、俺はぐったりしていた。


「大丈夫か?ショウゴ。」

「うん。これで俺たち一緒にいられるね。」

「ああ。ちょっと散歩しないか?」

「ん?いいよ。」


なんだか珍しいな。

俺が少しでも疲れてると休めって五月蝿いのに。

レオノアは俺の手を引いて城の階段を上っていった。

しばらく行くと、そこは屋上のようにひらけた凄く広い場所だった。

あれ、ユーシスとユーリがいる。


「ショウゴ、疲れているところすまない。
ここにおいで。」

「う、うん。」


俺たちは真ん中辺りに集まった。

すると、上空から次々と竜が降りてきたんだ!!


「うわっ!!大きい!!」

「水の竜がショウゴに祝福と加護をくれる。」


ユーシスの言葉のあと、銀色の体に深いブルーの目の竜が

俺に光る腕輪をくれた。


「ありがとう。」

「守りの腕輪だ。」

「次は炎の竜です。」


ユーリだ。そうか、ユーリは火の精霊の加護があるんだ。

炎の竜は赤い体に金色の目をしていた。

ちょっと怖いけど、俺に指輪を二つくれた。

左右の人差し指に違和感無く落ち着く。


「ありがとう。」

「指輪が勇気と強さを増徴してくれます。」

「ショウゴ、地の竜だ。」


レオノアが俺の肩をそっと抱いた。

目の前には黒い体に薄茶色の目の竜。

その竜は俺とレオノアに対になるペンダントをくれた。


「離ればなれになっても、これがあればすぐに見つかる。」

「ありがとう。…大事にするから…。」

「ショウゴ!お待たせ。
風の竜からだよ。おめでとう!!」


風の精霊・フィルがいた。

フィルの手から光の帯が流れ出て、俺の両足に一本ずつ巻きついて消えた。


「これでショウゴは風に乗れるんだよ!」

「すごいな…。本当にみんなありがとう!!
俺、頑張って使命をはたすよ!」

「ショウゴは一人じゃない。
皆で協力して使命をはたすんだ。」

「…うん。」


なんだか涙がとまらなかった。

胸がいっぱいになって。

俺は一人じゃないんだ。

レオノアやユーシス、いつの間にか来ていたシャーレンさんと子供達に囲まれて

泣きまくってしまった。

俺はこの日の事を、一生忘れないと思う。



第一章 完。

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ついに完結です。ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました^^

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