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季節が再び変わる頃、外の人間が迷い込みシンラが負傷した。

いつものシンラならば腕が立つので、俊敏な動きで相手の背後から気絶させ

外の人間の集落の近くまで届ける方法をとっていた。

だが、今回はそうもいかなかったのだ。

見回りを交代して仲間と歩いていると、シンラの靴の帯がはずれてしまい

仲間を先に行かせ結びなおしている所に出くわしたのだ。

そして運の悪い事に相手も武人で相当腕の立つ者だった。

激しい剣の討ちあいの末、相手が一人だった事もあり捕らえる事ができた。

だがシンラにとっては背筋が凍る思いだった。

国内では十本の指に入るほどの剣技をもっている。

それなのに、腕を切られてしまったのだから。

井の中の蛙なのかも知れないとシンラは自分を戒めた。



先に行っていた仲間達が追いついて来ないシンラを迎えにきたので

来訪者は牢に護送された。

上の者がシンラに怪我を負わすほどの人間に興味を持ったようだ。

「シンラ、よくやった。

 んっ?この傷は深くはないが今晩は熱がでるぞ。」

いつの間に来たのか、カイはシンラの腕を取ると素早く血止めの布を結んだ。

普段は王の警護をしているが、騒ぎを聞きつけて様子を見に来たようだ。

「カイ将軍みずから手当てしていただき、ありがとうございます。

 どうやら自分の腕を過信しすぎていたみたいです。」

シンラは悔しげに、うす茶の瞳をふせた。

「気にするな。救護の手当てが終わったら

 今日は兵舎に戻って養生しろよ。

 早く治してくれないと、政務に集中できないお方がいるからな。」

カイは笑いながら言った。

「セイレン様には心配はいらないと伝えてください。

 しばらくお会い出来ませんが…。」

「伝えておくよ。

 毎日の様にお前を独り占めしていたんだ。

 気にするなよ。じゃあな。」

カイは沈み気味のシンラの様子に励ますように言い、素早く周りの者に指示を出すと

王のもとへ消えた。




宮廷内の奥、厳重に警備されたさらに奥に執務室がある。

静かなその部屋に冷たい空気が満ちていた。

「それで、本当に大丈夫なのだろうな?カイ」

セイレンは言葉の刺をそのままに、静かにカイに詰め寄った。

他の臣ならあまりの迫力に固まってしまうだろうが、カイは慣れていた。

カイはセイレンとは同じ師に剣を学んだ兄弟弟子であり、親友といっていい仲にあった。

セイレンは常に冷静だが、その実 心に炎を宿す者だとカイは知っている。

心を御する事が出来なければ、前王の様になっていただろう。

暴君として名高いセイエンは王族を憎み、銀髪の者を処刑した。

王家の血筋の者は銀髪の者が多い。

シンラが生きているのは父親がセイエンの唯一の友だったからに他ならない。

セイレンがシンラに執着するのは数少ない王族の血にたいしてなのかも

知れないとカイは考えている。

「シンラの傷は大丈夫です。

 ただ相手がさびた剣を使っていたので、今晩は熱が出ると思いますが。」

「シンラに傷を負わせるとは…。

 カイ、シンラにしっかり養生するように伝えてくれ。

 …いや、私が行こう。」

セイレンは急ぎ、本日中の政務に戻っていった。

カイも渋々手伝う事をかってでた。



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