ソニック
日本初の交流専用振り子式電車として登場しました。振り子式車両とは、 カーブに差し掛かるとコロ(もしくは空気バネ)の働きによって車体を曲線の内側方向に傾ける装置が ついている車両のことです。乗り心地を損なわずにカーブを曲がれるので曲線の多い路線での スピードアップが可能です。ここで注意したいのは、振り子装置自体は 速度向上にはほとんどタッチしておらず、あくまで乗り心地向上の役割を担っている点です。振り子車両の重心は回転軸よりも下側にあるため、 カーブで振り子が作動すると重心が外側に寄ることになります。また傾くことで重心が移動するわけですから 保線上も安全上もあまり好ましくありません。しかしながら振り子車両を採用するのは理由がありました。というのは車内事故防止の観点からです。国鉄の内規ではカーブの通過時に乗客にかかる 遠心力を0.08G程度に収めるように規定していました。これはテーブルの上に水を入れたコップが動き出すかどうか、といった加速力とのことですが、 これ以上になると車内での転倒、さらには乗客がカーブで吹き飛ばされる、という状態が起こり得ます。また、地上側のカント高さも停車時に不快にならないよう105ミリと決められており、規定速度以上でカーブを曲がる際に不快感がないようにするためには不足するカント量を車両側で補ってやる必要がありました。そのための振り子なのです。
交流電車は直流電車と違って屋上に変圧器など重い機器を載せる必要があり、 そのために、重心を低くする必要のある振り子式車両の開発は遅れがちでした。 それらを解決し、なおかつ四国の8000系電車で実現した、架線追随装置を搭載して 94年に登場しました。ただし、架線追随方式は8000系のワイヤー方式ではなく、台枠とパンタ台を鋼材で直接つなぐ方法となっています。車内スペースが取られますが、ワイヤーと違ってメンテナンス不要なのでこの方式となりました。運転開始は95年4月からですので、比較的長期間 試験走行を重ねて、万全を期したことが分かります。
そのようなメカニック的な面をおいても衝撃的な車両で、ロボットのような 前面デザインは、車両ごとにカラーが違い”ソニックファミリー”と 呼ばれています。また、飽きがきたら前面ブロック(前頭部の青い部分)を 取り替えられるような工夫もされているそうです。車内は原色を多用しており、 ネズミの耳のようなヘッドレストのついた腰掛けに代表されるように、 遊び心のある室内に仕上げられています。また、比較的短時間の利用 (博多‐大分約2時間)で高速バスとの競合区間でもあるので、定員の確保が 第一となり、787系(つばめ)では荷物置き場だった客室中央部は、ガラスで 仕切られた4人掛けのボックスシートとなっています。
一方、ハイパーサルーン(783系)で好評だった前面展望は787系で一旦 廃止となりますが、この883系にはグリーン車のパノラマキャビンという 形で復活しています。グリーン車には革の座席が採用されています。革張りの座席は5年後、885系で本格的に採用されました。こういった次の車両の試験的要素が見出せるのもドーンのデザインした車両の面白さといえましょう。
形式 | クモハ883 Mc |
サハ883-0 Ta |
モハ883-100 M1 |
サハ883-100 Ta1 |
モハ883-200 M2 |
サハ883-200 Ta2 |
クロハ882 Thsc |
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最高運転速度 | 130km/h (曲線速度+30km/h) | ||||||
電気方式 | 交流20000V | ||||||
座席定員 | 48 | 56 | 56 | 56 | 44 | 56 | 33 |
空車重量(t) | 39.8 | 38.1 | 38.6 | 37.7 | 38.6 | 36.7 | 36.0 |
車体長(mm) | 21000 | 20000 | 21000 | ||||
車体幅(mm) | 2853 | ||||||
屋根高さ(mm) | 3450 | ||||||
ボルスタ中心距離(mm) | 14150 | ||||||
走行装置 | 制御付振り子台車:DT402K(M)、TR402K(T) /三相かご型誘導電動機 | ||||||
動力伝達方式 | 平行カルダン | - | 平行カルダン | - | 平行カルダン | - | - |
主電動機出力 | 190KW×4 | - | 190KW×4 | - | 190KW×4 | - | - |
補助電源装置 | - | SIV | - | SIV | - | SIV | |
電動空気圧縮機 | - | 2000L/min | - | 2000L/min | - | 2000L/min | - |
制御方式 | VVVFインバータ制御、発電ブレーキ、抑速ブレーキ | ||||||
ブレーキ方式 | 発電ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ、直通予備ブレーキ、応荷重装置付 | ||||||
連結器 | 密着連結器・半永久連結器(Mc-Ta,M1-Ta1,M2-Ta2の間) | ||||||
緩衝器 | ゴム緩衝器(初期0タイプ) | ||||||
自動列車停止装置 | ATS−SK形 | ||||||
空調装置 | セパレート(ヒートポンプ)
冷房38000kcal/h (19000kcal/h×2台)、暖房28000kcal/h(14000kcal×2台) |