「Double Bind」 4 (葉月ルート)

女の子達が尻込みする。
確かに、古くて使われていない建物を探検するのに
単独行動はマズイかもしれないな。
「じゃあ二人一組にしようか?」
「そうね・・・じゃ、アタシと由良で・・・」
葉月が言いかけたところで、思いついた事を口走ってみる。
「あー・・・たまには違う組にしねえ?」
「・・・違う組?」
こういうとき、いつも由真とコンビだが
たまには相手を変えたほうが新鮮だ。何が新鮮なのかは自分でもよくわからんが。
・・・考えてみると、由真と由良ちゃんを組ませた方が
何かあったときに能力が上がってたりテレパシーがあっていいかもしんない。
「うし、葉月、行こうか?」
一瞬、キョトンとした後
「・・・へ?ああああああああたあたたしっ!?」
葉月がバタバタと大げさに驚く。そんなに意外だったのか。

「じゃ、俺たちはコッチな」
「私たちは・・・」「あっちを探してみるねー」
「うい、気ぃつけてなー」「・・・」
さっきから、葉月はあまり喋らなくなっている。
「・・・お姉ちゃん、大丈夫?」
「・・・え?え、、だ、大丈夫よ、何言ってんのよ・・・もう」
「そう・・・無理しないでね」
「生意気言ってんじゃないわよ」
廊下の真ん中で、右と左に分かれて歩き始める。
由良ちゃんが心配して声をかけたときは、まだ空元気もあったが
今ではすっかりしおらしくなって、俺の後をビクビクしながらついてきている。
で、2階にあがってきたわけだが・・・
音楽室なんて、たいがい2階か3階のはじっこだろう。
意見を聞こうと、振り向かずに葉月に声をかける。
「なあ」
・・・返事が、ない。

驚いて振り返る。
・・・別に、葉月はいなくなったりはしていなかった。
ただ、うつむき加減でトボトボと歩いている。
「・・・おい、葉月!」
「ぅひぃぁああっ!?」
奇声をあげて葉月が飛び上がる。
「なっ、なによっ!?」
・・・膝はガクガクに震え、目にはうっすら涙まで浮かべている。
普段の強がりかたからすると、ちょっとおかしくて、ちょっと可哀想で・・・ちょっと、可愛い。
「怖いんなら、引き返してもいいぞ」
「こっ、こわわこっこわっわっないっ!」
そして、やっぱり強情っぱりだった。しょうのないやつ。
歩み寄り、葉月の後ろに回ると、震える両肩に手をおいた。
「・・・あ・・・」
「まだ、怖いか?」
肩の震えが、とまった。

「・・・まだ・・・怖い、かな」
贅沢なやつだ。だいたい、さっきは怖くないとか言ったくせに。
「・・・寄りかかっても、いいかな?」
「どーぞ、好きにしてくれ」
葉月が体重を預けてくる。
・・・自然と、胸に抱きとめる格好になった。
胸の中の葉月は、柔らかくて、暖かくて、いい匂いがして・・・
改めて、実感した。
葉月は、女の子だ。
そして、二人っきりで、周りには誰もいなくて・・・
そして、葉月は、俺に、体を預けていて・・・
俺は葉月の肩に手を置いていて・・・
胸がドキドキと鼓動を伝える。
伝わってくるのは俺の心臓のドキドキなのか
それとも背中から伝わる葉月のなのか。
・・・両方だな。

「・・・落ち着いたか?」
そういう俺自身が落ち着いてはいないわけだが。
「え?・・・うん・・・ありがと・・・ね、まだ音楽室探すの?」
ああ。そういえば、そんな最中だったっけ。
「まあ・・・いちおう、な。俺が言い出しっぺだし」
葉月が振り向いて微笑む。俺に寄りかかったままで。
振り向いた笑顔と俺の顔は、ほんのちょっとしか離れていなくて
「・・・あっ」「・・・う」
・・・そのまま、どれくらい見つめ合っていたんだろう。
気が付けば葉月は目をつぶっている。
俺はどうしていいのかわからなくて
首をこっちに傾けあっちに回してオロオロしていると
不意に葉月が目を開けた。
「もう・・・世話が焼けるなぁ」
正面を向いた葉月が俺の首に手を回して伸び上がり・・・
「・・・こうするの、よ・・・」

「!!!」
混乱。大混乱。何?何が起きてる!?
訳のわからないまま、葉月の顔が俺の顔から離れていく。
「えっと・・・今のは・・・何?」
「何って・・・キス、だけど」
そうですか。キスですか。なるほど・・・
って、えええええええええ!!?
「いやあのっ!・・・キスって!?」
「いいでしょ、別に。だいたい、逃げなかったじゃない」
あの体勢からどうやって逃げられるというのか。
「いやだって、知り合って、まだ数日なんだけど・・・」
「アタシは・・・ずっと前から知ってたわよ、達也のこと」
「へ?」
ずっと前からって?同じクラスになったのは今年からで、それまでは名前も・・・
そうだ。名前。入学式の日。
葉月は俺を「桜井くん」と呼んだ。知っていた。俺のことを・・・

少し照れくさそうにしながら葉月が続ける。
「別に・・・いますぐ、その・・・答えが欲しいわけじゃないから・・・」
「あ、ああ・・・うん・・・」
俺も照れくさくて、ただ生返事を返す。
「そうだ、二人はまだ音楽室さがしてるのかなっ?」
照れくささに耐えられなくなったのか、葉月が無理矢理話題を変える。
「そうだな、まだ探してるぞ。俺たちも探そう!」
・・・俺も便乗。
結局、1、2階では音楽室は見つからず、3階に上がったところで
「お兄ちゃーん」「達也さーん」
妹コンビに声をかけられた。手を振って近づいてくる。
まだ距離があるうちに葉月にささやく。
(さっきのことは、考えるな・・・その・・・感づかれるかもしれないから)
(・・・わかった)
合流した二人によれば、あちら側に音楽室はなく、上に上がる階段もないらしい。
「じゃあ、ここからまた4人一緒かな」

(5に続く) (Seena◆Rion/soCysさん 作)

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