風花
雪が空から舞い散る夜は 俺は必ず夢を見る――
「…………どの、……殿、馬…超…殿…?如何されましたか」
優しく自分を呼ぶ声。
目を明けた時写ったのは自分を心配そうに覗き込む趙雲子龍。
「ずいぶん魘(うな)されていました。悪い夢でも…見ましたか?」
「まぁな……」
汗で額に張り付いた髪をかき上げ、馬超は気だるそうに寝床から起き上がった。
「『休、鉄、楊氏、許せ…』と何度も何度も…うわごとを…」
――――超哥!超哥は岱哥と逃げて下さい!
――――休!!!鉄!!!
――――私がいては…殿のお手を煩わせるだけ。ここに…残ります。
――――楊氏…っ!!!
昨日の事のように思い出される、あの日の出来事。
「雪の降る日には…いつも…あの日の夢を見る」
苦しげな顔をする馬超に趙雲の顔が曇る。
「弟たちや…楊氏は…俺を恨んでいるだろう」
曹操が攻めてくる切っ掛けを、自分は多少なりとも作ったのだから。
長い沈黙。
それを破ったのは趙雲の一言だった。
「肉体は滅んでしまったかもしれませんが…馬超殿のご家族は、あなたの記憶の中には生きています。人間の真の死とは…死んだ後に…誰にも…思い出されなくなる事だと思います」
趙雲の言葉に馬超は顔を上げる。
「私が思うに…皆様は馬超殿の足枷になりたくなかったのではないか… と思うのです」
「俺は…皆に…生きていて…欲しかった!!」
泣いているようにも聞こえる、馬超の慟哭。
「…………私は……生きて…馬超殿のおそばにいたいと…思います」
震える体をそっと抱きしめる。
「本当だな?」
「もちろんです」
心も、からだも
ずっと、あなたの傍に…
終
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私の愛読書のマンガにてすごく心を打たれたセリフがありまして、
それをどうしても趙雲に言わせてみたくて書いた話です(もちろん、そのままを使用してはいませんが…)そのマンガファンの方、すみません(汗)
何故か馬超の家族が殺されたのは冬のイメージがあるんですよね。雪の降る日に夢を見るというのはそういう私の勝手なイメージからです。
因みにはじめて書いた馬超×趙雲だったりします。