1. あんた・・誰だ?


重たい体を起こして辺りを見回す。
真っ白で簡素な部屋。
ベッドの脇にある透明な袋からは、液体が管を通して腕へと注入されていた。
どうやら、俺は点滴をうたれているらしい。
ということは、ここは病院なのか?
どうしてこんなところにいる?
記憶が曖昧で、どこか霞がかって感じる。
軽い頭痛と眩暈を覚えて額を押さえると、指先に異物感を覚えた。
しばらく触っていて分かった。
これは、包帯だ。
では俺は、頭を強く打ち付けでもしたのだろうか。
そして意識を失っていた……?
だとすれば病院にいることにも、記憶が靄がかかったようなのにも、すべて納得がいく。
どうしてこうなったのかは分からないけれど。
とりあえず俺は、他に体に異常がないかを調べることにした。
これといって痛む箇所はない。
頭以外に包帯が巻かれているところもなかったし、体だって十分に動かせる。
そのことに安堵を覚えていると、勢いよく部屋のドアが開かれた。
ひどく乱暴な開け方で、ドアはバンッと大きな音を立てた。
そこから現れたのは、見ている俺のほうがぞっとするくらいに顔を青ざめさせている男だった。
男は俺の姿を目に留めると表情を少しだけ和らげ、近づいてきた。
体を引き寄せられ、強く抱きしめられる。
俺は男の腕の中で目を白黒させた。

「春姫……良かった。意識、戻ったのか……!」

俺の名前を涙声で呼ぶ男の顔を、まじまじと見つめる。
男の目尻は白い蛍光灯に照らされて、微かにだけど光っていた。



「あんた……誰だ?」



俺の一言に、男の顔から、すぅ……っと血の気が引いていった。




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