1. 時には理性も脱ぎ捨てて (相楽視点)


正直に言って、有原はセックスが下手だった。
これは別に、今まで俺を抱いてきた男――主に“あの人”――がテクニシャンだからそう感じるとか、そういうわけじゃない。
本当に、ダメなんだ。
何がダメって、有原の俺を気遣いすぎる性格と、俺の声を聞くだけで達することが出来るという傍迷惑な……もとい驚くべき能力のせいだ。
そんなわけで俺達は一度も性行為を最後までやったことがなく、今日こそは、と意気込んでいるのだけれども。

「あぁっ、破れちまった!」
「……オイ」

装着時にゴムを破ってしまうのは、これで何度目だろうか。
俺は深くため息をついて、ベッドに身体を投げ出した。

「わ、悪い。まだ持ってきてるから…!」
「分かったから、早くしてくれ。あんまり時間かかってると、身体が冷えるし、萎える」
「ああ…っ」

いそいそとゴムを取り出す有原。
そして次の瞬間、ビリッと音を立てて破れるそれ。
俺は流石に苛立って、有原の手から真新しいゴムを奪い取った。

「さ、相楽…?」
「俺が着けてやるから」

口にゴムを銜え、屹立した有原の先端に被せる。
指で雄を刺激しつつ、少しずつゴムを装着していくと、有原がくぐもった声を上げた。

「――はっ、だめ…だ。出ちゃうから…」
「んっ、も…少しだから我慢しろ」

震える有原にゴムを着け終えると、俺は彼をベッドに押し倒し、乗り上げた。
有原は訳が分からない、とでも言いたげに目を丸くしている。

「有原ってさ。ヤり方を知らないわけじゃないんだろう?」
「も、もちろん。ただ緊張しちゃって…。いざするとなると頭の中が真っ白になっちまって…」
「……じゃあ何だ。今、真っ白な状態なのか」
「あ、ああ。真っ白だ!」

ビッと親指を立てる有原に、俺は頭痛を覚えて額を押さえた。
そりゃ、俺だって初めてシたときは驚きの連発で予備知識なんて全く役に立たなかったけれど、ある程度のことは出来たのに。
それとも俺が、何も出来なくなる程に彼のことを興奮させているということなのだろうか。
……ちょっとだけ、嬉しいかも。
俺は顔を赤めている有原の首に腕をまわすと、胸板をピッタリと密着させた。

「俺……今日こそ、有原が欲しい」
「っ……そ、れは」
「ダメか?」
「全然!」

首を激しく横に振る有原に俺は苦笑を漏らし、そっと、彼の昂ぶりに指を触れさせた。
有原が息を呑むのを感じつつ、腰を上げ、後孔に先端をあてがう。
ゆっくり腰を下ろしていくと中を割りいってくる有原自身に、自然と恍惚とした吐息が零れた。

「あ…ぁ…」
「相楽…。辛いのか?」
「ち、が…。はっ、ん……!」

奥深くまで咥えこむと、俺は有原に再びもたれ掛かった。
初めからこうやって、俺が自分から挿入すれば良かったのかもしれない。
そうすればこんなにも、繋がるまでに時間はかからなかっただろう。

「はぁ、はっ…。有原ぁ…」
「な、何?」
「キス、して…?」

頬を摺り寄せるようにすると、有原は優しい口付けをしてくれた。
ただ触れ合っているだけなのに、中にある有原自身は脈打ち、俺自身も熱い雫を溢れさせる。
舌を絡めあえばそれこそ頭がどうかなってしまいそうなほど気持ちがいい。
拙いキスだというのにここまで感じられるのは、きっと相手が有原だからだ。
もしも彼が性行為に慣れ、テクニックを身につけたとしたら……そのとき俺は、一体どうなってしまうのだろう。

「……はぁっ。相楽…動いても平気か…?」
「もちろん…。好きにしてくれて、いいから……」
「んっ、くっ…」

有原は俺の腰を支えるようにして掴むと、軽く揺さぶってみせた。
ぐちっと粘着質な音がしたのは、腸液が滲み出たからだろうか。
何にせよ、今の俺は幸せで一杯だった。
やっと好きな人と、一つになれたのだから。

「はぁ、はぁ、はぁ…あ、ああっ。相楽…ッ」
「あ、ぅんっ…ふぁ…ッ」

有原の息が次第に上がってくる。
それに連れて腰の動きも激しさを増していき、俺は彼の背にしがみつくように抱きついた。
前立腺を突き上げられるとどうしようもない程の射精感が込み上げてきて、声が発せられる間隔もどんどん短くなっていく。

「あぁぅっ、あっ…あぁあ…!」
「くっ、やば…出そう…っ」
「え…えぇ!? まだ…そんな…っ。我慢して、有原っ」
「む、無理…っ。ぁ、あぁ――ッ!」

ドクンッ、と中で有原が爆ぜた。
ゴムを着けているおかげで熱い奔流を感じこそしないものの、有原自身が小さくなっていくのが分かる。

「あ、あっ……有原ぁーっ!」
「ごめっ…。ま、まさか俺もこんなに早くイクなんて……」
「ば、ばかぁっ。有原は何でいつも俺より先にイクんだっ!」
「だから悪かったってば! でもさ、始めの頃に比べれば進歩してるだろ? 前回なんて、相楽のを弄ってただけでイッちまったわけだし!」
「五十歩百歩っていうんだよ、こういうのを! 大体何で触れられてもないのにイクんだお前はっ」
「相楽の声とか反応がいやらしすぎるからだよっ。さっきだってそう。どんだけ俺を興奮させれば気が済むんだよ!」

顔を真っ赤にしてそんなことを怒鳴られたって、困ってしまう。
どう言い返せというのだ、俺に。

「くっそー。いつになったら俺は相楽のいやらしさに慣れれるんだぁーっ」
「いやらしくて悪かったなぁっ」
「悪くねぇよ! 俺相楽大好物!」
「い、いっ…意味分からないことを言うな! もういい。今日はこれで終わりだ!」
「え!? だって相楽、まだイッてないじゃないか」

愕然とした表情を浮かべる有原に、俺は心底不機嫌そうな顔を向けてやった。
それから、指で下半身を差す。

「今の会話のうちに、醒めた。有原だってもう縮こまってるし。続行不可能だろう?」
「そんなことねぇよっ。俺、相楽相手なら何度だって勃てれるぞ!」
「その都度妙なタイミングで達してたら意味がないだろっ。いいから早く抜け! っていうか、抜く!!」

不満げな有原を無視して、俺は腰を上げた。
……の、だが。

「ひゃぁんっ!?」

俺の中から有原が引き抜かれるという直前で、彼は俺の腕を引っ張って腰を下ろしにかかったのだ。
一気に中に挿ってきた屹立に、萎えていた俺自身が再び頭をもたげ始める。
そのことに気がついてワタワタとしていると、有原が親指で優しく亀頭を擦り上げたではないか。

「ぁっ、ありは…ら。馬鹿、やめ…あぁんっ」

押し潰すように擦られて、ビクビクッと身体が痙攣する。
ゴムを着けていないそこは蜜を零し放題なわけで、有原の指が濡れていく様子に、並々ならぬ羞恥がこみ上げてきた。

「もういいからぁ…。有原、今日は…」
「いやだよ、こんなところで止めるなんて…。俺、相楽とちゃんとしたセックスをしたいんだ……」
「…っぁ、あ…!?」

有原は俺をベッドに寝転がすと、前後に腰を揺すりだした。
敏感な粘膜が擦り上げられる感覚に、目の前が白く霞みだす。

「ひんっ…やぁ、だ…そこ…あぁ!!」
「い、痛いのか…?」
「ちがっ…んぁ、やっ……か、感じすぎちゃう…からぁ……っ」

だからそこは突かないで、と小さく喘ぐように言うと、有原の動きがピタリと止まった。
どうやら俺の願いを聞き入れてくれたらしい。
……だなんて安心したのが間違いだった。

「相楽ぁあああっ!!」
「えっ、わ、わあああ!?」

有原は俺の膝裏に腕を通して抱え上げるように脚を大きく開かせると、ガツガツと腰を突き入れてきた。
その衝撃に思わず背を仰け反らす。

「ちょっ、あ…ありは…!」
「相楽、相楽…。はぁ、はっ……好きだよ、相楽ぁ…ッ」
「やめっ、あ…こら……あぁあっ!?」

一番感じる箇所を深々と穿たれて、生理的作用からか涙が溢れた。
けれど有原は俺の涙に戸惑う様子もなく、荒々しい腰使いのまま動き続ける。
俺のことを気遣ってばかりの有原がするとは思え難い行為に、快感に閉じそうになる瞼を必死に開いて焦点を合わせれば……。

「あ、う…うそ…やっ…!」

そこには先程までのように不安げな様子は一切ない、それどころか愉しげな笑みさえ浮かべる有原がいた。
彼の瞳はぞっとしてしまうほど熱い情欲の炎を滾らせていて、俺は顔から血の気が引いていくのを感じた。
もしかしなくても、理性が飛んでいる……!?

「あ、有原っ。待って、まっ…」
「誰が待つかよ。相楽だって、本当はもっと突いて欲しいんだろ? ほら…ッ」

有原は俺の腰を掴むと、最奥を突き上げてきた。
手加減のないそれに、ビリッと電流のように快感が脊髄に走る。
全身を震わす俺に有原は笑みを零すと、これ以上なく昂ぶっている俺自身をぎゅっと握り込んだ。

「ぁっ…」
「相楽、本当に可愛いよな…。ここ、ビクンビクンしてる。俺の手で触られるの、そんなに気持ちいい?」
「ふぁ…あ、ぁん…ッ」

優しく擦り上げられることで訪れた緩やかな快感は、今の俺にはもどかしいだけだった。
俺は有原の手に昂ぶりを擦り付けるように腰を動かした。

「何だよ、相楽? ――ああ、そうか。この程度じゃ満足出来ないんだ? こうやって、強く扱いて欲しいんだな?」
「あぁんっ、ひあ…ッ。あ、あっ…変に、なっちゃ…そぉ……っ」
「なら止めるか?」
「や、やだ…っ。もっと…。あっ、あぁ…い、い…。ありはらぁ…。気持ちいいよぉ…!」

有原の蠢く指に高みへ追い上げられた俺は、達しそうになって彼にしがみつく。
すると有原はふふっとやけに艶っぽい笑みを零して、俺の根元をギュッと締め付けた。

「や…!?」
「まだ、駄目だよ。相楽がイクのはもっともっと、俺を味わってからじゃないと」
「ぁ、え? ……ひぅ!?」

有原は俺の中から昂ぶりを一気に引き抜いた。
それからゴムを外すと、俺の腰を抱き寄せて、再び貫いてきた。

「あっ、あん! ちょ、ありは…っ」
「ゴム着きだと、やっぱりつまんねぇよな? 生の方が断然気持ちいいってもんだ。な、相楽…?」
「ゃぁっ、はっ…!?」

有原は俺に何度もキスをしながら、激しい抜き差しを繰り返した。
動くたびにじゅぽじゅぽと大きな音がし、俺自身も限界とばかりに昂ぶっているというのに、有原はイかせてくれない。
強すぎる快感と苦しさに嗚咽を漏らしていると、彼が耳元に口を寄せてきた。

「どうしてもイキたいのなら、俺に頼んでみせて。そうしたら、イかせてあげないこともないぜ?」
「っ……ねが、い…」
「聞こえないよ、相楽。もっと大きい声で言ってもらわなくちゃ。ほら、イキたいんだろ? ここ、まだ痙攣してるもんな。可愛い…」

クチュッとわざと音を立てながら、有原が鈴口を引っ掻くように擦る。
からかうような笑みを浮かべる彼に、俺は縋るように抱きついた。

「ありはらぁ! もう我慢出来ないよぉっ。……いっ、ぁ…いか、イかせてぇ…っ!」
「……いいぜ。このまま俺に貫かれて、俺の掌の中に、たくさん出せよな……っ」

有原はズルッと自身を引き抜かんばかりに腰を引くと、奥に叩きつけるように突き入れてきた。

「あっあ…やあぁあ――ッ!!?」
「っ、ぁ…く、ぅ……!」

埋め込まれた有原の先端から、熱が放たれるのが分かる。
俺自身からも精液が吐き出され、今までにない鮮やかな快感に、頭の芯が大きく揺さぶられた気がした。




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