不機嫌な夜に気をつけて


「よう、アルバート」
 灯り一つない夜道で急に声をかけられ、アルバート・エンジェルは軽く舌打ちした。それは、急に声をかけられたことが原因ではなく、その声に聞き覚えがあったからだ。そして、あまり歓迎したくない相手だったからでもある。
「さよなら」
 アルバートは短くそう応えると、足をとめずに歩き続けた。長いマントの前をかき合わせ、フードを引き上げてその顔を隠しながら。
「つれないな。ちょっと手伝ってくれてもいいんじゃないか」
 その声の主は、暗闇の一角に足をとめていて、アルバートという青年の方へは近寄ろうとしなかった。ただ、少し疲れたような口調であることはアルバートにも解った。
 ふと、アルバートは足をとめた。
 血の匂いがしたからだ。
「……何を手伝うって?」
 彼はゆっくりとその声の主の方に視線を投げた。
 冴え冴えと輝く双眸が、暗闇に輝く。暗闇の中でも、あらゆる物を見通す力を持った、その瞳が。

 アルバート・エンジェルというのは、この国ではそれなりに名前の知れた魔術師である。
 二十代前半であろう風貌。短い黒髪と黒い瞳、白い肌。背は高く、華奢な身体つきをしている。
 見ようによっては絶世の美女とも勘違いされるほどの秀麗な顔立ちをしていたが、その目つきの悪さと、いつも唇に張り付いている皮肉げな笑みが他人を寄せ付けない雰囲気を醸し出していた。
「ちょっと失敗してね」
 声の持ち主はそう言って小さく笑った。
 ちょうどそこは、彼らの住む都の外れ、廃墟が立ち並ぶ一角である。人間の姿はどこにも見あたらず、時々野犬の遠吠えが遠くから聞こえてきていた。
 その道の片隅で、その男性は荒い呼吸を繰り返していた。
 左手で自分の右腕の辺りを押さえながら。
 いや、正確には、右腕のあった場所を押さえながら。
「凄まじい失敗だな、グレン」
 アルバートはその青年を見やり、鼻を鳴らした。
 その血だらけになった肩を見ても、秀麗な顔は動かなかった。

 グレン・オコンネルは廃墟の壁に寄りかかりながら、呼吸を整えようとしていた。歳の頃は三十歳くらい、短い金髪に高い鼻筋、意志の強そうな蒼い瞳。その肉体は鍛えられていて、軍人と言ってもおかしくはない。
 だが、グレンもアルバートと同じく魔術師であった。
 不思議なことだが、魔術師同士というのはあまり仲の良い者はいない。お互い、競い合う精神があるからかもしれない。
 だから、こうして道端で会うことがあっても、せいぜい挨拶程度の会話しかしないものだ。それでも、グレンはアルバートのことが気に入っているらしく、昔からことあるごとに話しかけてくることが多かった。アルバートの方はといえば、迷惑そうな返事しかしないのだが、それでグレンの態度が変わるわけでもなかった。
「『穴』を塞ぐように頼まれたんだ」
 やがて、グレンはゆっくりと壁から離れ、アルバートの方に歩み寄る。
 アルバートはわずかに不機嫌そうに顔をしかめた後、短く言った。
「ただの穴ごときに腕を持っていかれたか」
「うーん、まあ、そういうことだなあ」
 グレンは快活に笑った。
 とても腕をなくしたばかりの人間がする笑い方ではない。その底抜けなまでに明るい声にうんざりしたように、アルバートが乱暴に自分の頭を掻いた。
「で、『穴』はどこだ」
「おお、手伝ってくれんのか」
 嬉しそうに表情を輝かせたグレンを見やり、アルバートが不本意そうに舌打ちする。それから短く言った。
「後で礼をしてもらう」
「じゃあ、この身体で払う」
 グレンも短く返す。
 するとアルバートが眉を顰めた。
「働き手は間に合ってる」
「じゃあ、そういう意味か! 俺の身体が目当てか!」
 ふざけた口調でそう叫んだグレンを見やり、アルバートがため息を一つついて、あっさりとその場を離れようとした。
「あああ、嘘だって、冗談! 待て待て」
 慌ててグレンが叫んだ。
 そして、地面にぽたぽたと血を滴らせながら、アルバートの後を追う。すると、アルバートが急に足をとめた。
「おっと」
 その背中にぶつかりそうになって、グレンも足をとめる。
 そして、目を細めた。
 彼らの目の前に、大きな『穴』があった。

 それは、空間に走る亀裂のようなものだった。
 最近、この国には『穴』が増え始めている。別の世界につながる『穴』だ。その近くに寄ると、人間はその中に引きこまれてしまう。そしてその後は──どうなるかは解らない。その穴に入って、出てきた人間は今までいないからだ。
 別の世界に飛ばされて生きているのか、それともその亀裂の中に閉じこめられて出られなくなっているのか、色々考えられるだろう。
 だが、『穴』は危険な存在であることに間違いはない。
 人間を引きこむだけではなく、そこから魔物をも吐き出す穴だったからだ。
 もともとこの辺りにも、たくさんの人間が住んでいた。しかし、穴がどんどん増えてきているため、誰もがこの辺りから引っ越しをしていった。
 森が近くにあり、夜には野犬も多く出る場所だ。
 もともと、安全だとは言い切れない土地だった。
 だから、誰もこの地に固執することはなかったのだ。もっと安全な土地で生活した方がいいと誰もが考えた。もちろん、この土地でしか作れない作物などもたくさんある。だが、それだけだ。

「……これはこれは」
 アルバートは小さく呟いた。「初めて見る生き物だな」
 大きな亀裂から、無数の触手が伸びていた。
 巨大なミミズのような触手。それは、ゆっくりと蠢き、穴から這い出てこようとしている。それが身じろぎするたびに、奇妙な濡れた音が辺りに響いた。
「まあ、面倒だから穴をさっさと塞いで、そいつごとこっちの世界からおさらばさせようと思ったんだけどな」
 グレンが苦笑する。「で、失敗してこの通り」
 彼は自分の右肩を見やり、それから視線をアルバートに向けた。
 その時には、もうアルバートは無防備な歩き方で『穴』の方へと歩き出していた。
「おい!」
 鋭い声がその背中に向かって飛んだが、アルバートは気にせず触手の方に近寄り、呪文の詠唱を始めた。そのまま触手の群れを掻き分け、『穴』の方へと手を伸ばす。
「待て! 無茶すんな!」
 グレンが顔色を変えて走り出した瞬間、アルバートの身体は触手に埋もれ、その姿が消える。だが、アルバートの声がその中から小さく聞こえた。
「下がってろ」
「下がってろと言われても」
 グレンが唇を噛んだ。「くそ」

 触手の中から弾ける閃光。
 グレンが息を呑んだ時、蠢いていた触手が弾け飛んだ。ばらばらと千切れて宙を舞い、地面に落ちる。
 そして、『穴』から出てきたアルバートが右手にぶら下げていた物。

「つけろ」
 アルバートは不機嫌な表情のままグレンに『それ』を突きつけた。不機嫌な理由はグレンにも解っていた。
 触手の表面は濡れていた。どろどろとした粘液が伝っていたのは遠目にも解っていた。だから、そこに分け入ったアルバートの服や肌は──。
「くそ、私に弟子とかがいれば洗濯してもらうんだが」
 アルバートは気持ち悪そうに自分の格好を見下ろす。そして、改めてグレンを見やり、「早くしろ」と言った。
「早くしろとか言ったって」
 グレンは受け取った『それ』を見つめ、呆れたように笑った。「トカゲの尻尾じゃあるまいし、新しくはえてくるもんでもないし、それに、つけろと言われても」
 『それ』は、触手によって無理矢理千切り取られた、彼の腕に間違いなかった。

「面倒な男だな、お前は」
 やがて、アルバートが『穴』の方に視線を投げた後、舌打ちした。
 まだ、穴は開いたままだ。千切れた触手は動かないが、まだ穴の中からずるずると新しい触手がこちらの世界に出ようと蠢き続けている。
 アルバートはその触手を見つめながら、呪文の詠唱を始めた。
 その途端、グレンの千切れた腕が宙に浮かび上がり、白く輝く。その輝きはさらに強くなり、辺りの暗闇を引き裂いていく。
 浮かび上がった腕は、やがてばらばらに四散していく。グレンが驚いたようにそれを見つめた後、霧のようになった腕の破片がグレンの血だらけの肩へと収束していった。
「くそ、いてえ」
 グレンが全身を貫く凄まじい痛みに顔をしかめる。額に脂汗を滲ませながらも、彼が必死に表情を動かさないようにとしているのがアルバートにも解る。
「神経に直接つなぐから、そりゃ痛いだろうさ」
 アルバートは短く言って、そのままグレンを放置した。
 そして、『穴』へと近づいて新しい呪文の詠唱を開始した。
 穴を塞ぐための呪文。
 そこに、新しい呪文の詠唱が重なる。グレンの声だ。
 アルバートがちらりと彼の方に視線を向けると、新しい腕をつけた彼がそこに立っている。まだその腕に馴染んでいないらしく、ぎこちない腕の動きではあったものの、触手の方に手を上げてアルバートと同じ呪文を重ねてきていた。
 そして、呪文の詠唱が終わった途端に弾ける閃光。
 それは、少し前に輝いた光よりもずっと明るく、目を開けていられないほどのもの。
 蠢いていた触手が一瞬にして蒸発し、広がっていた亀裂がゆっくりと閉じていく。
 そして、その少し後にその場に残ったのは、暗闇だけだった。

「すまんな、助かった」
 やがて、暗闇の中でグレンが真剣な口調で言った。
 アルバートは肩をすくめ、短く返す。
「この礼は食事で返してくれ」
 すると、グレンが小さく笑った。
「相変わらず食事を作るのが苦手か、アルバート。魔術の腕はいいのに」
「余計なお世話だ」
 いつもの彼らしく、不機嫌そうに顔をしかめたアルバートを見つめながら、ふとグレンが疑問を口にした。
「何でこんなところを通った? 普通、こんな町はずれには用などないだろう。特に、こんな夜は危険な生き物も出る」
「呼ばれたんだ」
「誰に?」
「魔術師長に」
「は? 何でお前が?」
「知るか」

「それはこちらから説明しよう」
 突然、そんな低い声が辺りに響いて、アルバートはその声の主に気づかれないように小さく舌打ちした。

 その場に現れたのは、魔術師省をまとめる長である、魔術師長である。
 真っ白な長い髪の毛と、同じ色の髭。灰色のマントを身につけた老人の姿だ。彼は穏やかに微笑みながら暗闇の中に立っていた。
 しかし、彼が右手に持っていた杖が輝き、その暗闇を優しく照らし出している。
「アルバート、君に弟子を取ってもらいたい」
 やがて、魔術師長は優しくそう言った。
 そして、アルバートは目を細めて胡散臭そうなモノを見るかのような目で魔術師長を見つめ、鼻を鳴らした。
「弟子を取っていいのは第一級資格を持った魔術師です。私はまだ二級ですよ」
「そう、だから、今日から君は第一級魔術師だ」
 さらりと返される言葉に、アルバートは呆れたように笑った。
「すみません、私は認定試験を受けていませんから、二級は二級です。それに、弟子を取ったら教育しなくてはいけないじゃないですか。誰がそんな面倒なこと」
「君がしたまえ」
 魔術師長はにこやかに笑い続けている。「先ほどの『穴』の件が、実質上の試験だったのだよ」

「はあ?」
 アルバートが不愉快そうに声を上げ、それから鼻を鳴らした。相手が魔術師長という、魔術師にとって一番上の立場にいる存在だということも気にしないような態度だ。
「グレン、残念だが君は次の試験まで第一級に昇級するのは待ってもらおう」
「……はい、仕方ないですね」
 グレンが何の依存もないと言いたげに微笑んで頭を掻くと、ふとアルバートが何かに気づいたように声を上げた。
「あれはお前の昇級試験だったのか?」
 すると、グレンはそっと肩をすくめる。
「そう」
「じゃあ、最初からそう言え!」
「仕方ないだろう、腕を取られた時点で俺は失格だよ。後はどうしようと俺の勝手。都合良くお前が通りかかったから、お前に手伝ってもらおうと……」
 と、そこまで言いかけてグレンは言葉を切った。
 この国における魔術師という立場は、全て試験によってその資格を決められていると言っていい。見習い扱いの第三級魔術師、正式な魔術師であり、仕事の依頼を受けて収入を得る第二級魔術師、そして弟子を取って魔術師の育成ができる第一級魔術師。
 正直に言えば、第一級魔術師ともなれば多額な収入を得ることができる立場である。しかしその分、仕事はより高度で正確なものが求められるし、社会的な立場としても重要なものとなっていく。だから、魔術師の中には魔術師としての責任が軽い第二級魔術師のままでいようとする者も多かった。
 アルバートもその一人だ。
「試験は受けるつもりはなかったのに」
 彼はイライラとした様子で頭を掻き、今夜で何度目かのため息をこぼした。
 そんな彼を見ながら、グレンは内心で思うのだ。
 もしかしたら、元々、アルバートのためにこの試験が自分に用意されたのでは、と。
 その時。

 アルバートの右手の甲に、突然浮かび上がる魔術師の印。それは、この国の第一級魔術師だけが持つ印に間違いはなかった。
「これで完了だ」
 魔術師長はそう言って微笑んだ。
 忌々しそうに魔術師の印を見下ろしていたアルバートに、魔術師長はさらに言った。優しく、諭すように。
「君は誰か他の人間に関わった方がいい。他人を受け入れることも学ばなくてはいけない」
「人間が嫌いなんですよ」
「だから、人間と関わるべきだ」
「ちっ」
 むかついたように舌打ちするアルバートの横で、グレンが一人苦笑を漏らしていた。魔術師長を相手に、そんなぞんざいな態度を取る男を他に知らないからだ。そしてまた、魔術師長もどんな態度をされても怒らない。優しく微笑み続けるだけ。
 そして、魔術師長がまた呪文の詠唱を始めた。
 呪文が終わった時には、魔術師長の横には幼い少年が立っていた。

 まだ七歳か八歳くらいの風貌の少年だ。痩せていて、顔色は悪い。怯えたようにアルバートを見つめ、それから不安げに魔術師長を見上げる。
 明らかに緊張した面持ちで、少年は震えた手を自分の腹の前で握っていた。
「やっぱり無理ですよ」
 アルバートは軽く首を振った。ゆっくりと魔術師長のそばに歩み寄り、小さく頭を下げる。
「他人のことにまで気をかけてはいられません。この話は、どうかなかったことに」
「アルバート・エンジェル」
 ふと、魔術師長が小さく囁く。アルバートにだけ聞こえるだけの声量で。
「この子も、父親を殺された人間なのだよ。──君と同じように」
 一瞬、アルバートの瞳が凍り付いた。
 彼と魔術師長の視線が絡み合い、アルバートが苦しげにその視線を外すのが先立った。
「君だったら、少年を救える。同じ立場だからこそ」
「しかし」
「少年を見捨てるつもりかな? 昔、自分がされたように?」
「くそ」
 アルバートは吐き捨てた。

「いいように騙された気がする」
 やがて、魔術師長がその場からいなくなった後、アルバートは頭痛を覚えて額に手を置いた。
「まさか、本当に引き受けるとは思わなかったな」
 しばらく、遠くから事のなりゆきを見守っていたグレンが、アルバートに声をかけてくる。そんな彼を睨みつけながら、アルバートが小さく呟く。
「お前があの試験を失敗していなければ、きっとお前が弟子を取ったはずだ」
「かもな」
 グレンはそう言って頷く。そして、暗闇の片隅で立ちつくしている少年の方へと歩き始めた。
「名前は?」
 グレンが少年にそう訊くと、その少年は怯えたように後ずさり、いなくなった魔術師長を探すように辺りを見回した。もちろん、見つかるはずもない。
「ま、いいか」
 グレンは頭を掻きながらアルバートを見やり、にやりと笑った。
「お前が育児とは面白い。これほど似合わないものもないだろう」
「黙れ」
「でもな、お前って女嫌いで有名だろ」
 グレンは意味ありげに笑い、ゆっくりとアルバートのそばに近寄る。その耳元に唇を寄せ、からかうように言った。
「最近は、若い少年少女を買って、自分好みに育てて年頃になったら強姦する、なんて育ての親もいるらしいぜ」
「はあ?」
「お前もそうならないようにするんだな」
「馬鹿か!」
 アルバートは目をつり上げて叫んだ。そんな彼を面白そうに見つめた後、グレンはさっさと歩き出してしまう。
「腕、どうも」
 アルバートを振り返りもせず、グレンは右手を上げて軽く振った。「後で本当に礼はする。食事くらいなら安いもんだ」
「期待しておこう」
 アルバートは疲れたようにそう返してから、傍らにいた少年に視線を投げた。
 怯えた小動物のような反応をする少年。彼はどう接したらいいのか解らず、戸惑いながらもその子に小さく言った。
「悪いようにはしない。それは約束しよう」
「……はい」
 初めて、少年が怯えながらも頷く。
 そして、アルバートが少年の方へと近寄ろうとすると、途端に少年が表情を強ばらせて肩に力を入れた。
「何もしない」
 アルバートは内心、舌打ちしていた。しかし、その苛立ちを面に出すことはできない。苛立っているのは少年に対してではなく、勝手に少年を自分に押しつけていった魔術師長に対してなのだから。
「父親が亡くなったのはいつだ?」
 そっと、彼は少年に問いかける。
 途端に、少年の表情が凍り付き、そのまま俯いてしまう。
「……一年くらい前です」
「この一年はどうしていた?」
「……叔父さんの家に……」
 少年は消え入りそうなほど小さな声でそう言って、ずっと握りしめていた手にさらに力を込めた。その反応に、アルバートは違和感を覚えた。
 そして、ゆっくりと少年の頬に手を伸ばす。
 触れた瞬間、少年が悲鳴を上げて後ずさった。
 でも、そのはずみに、わずかにシャツの襟から首筋の辺りが見えて、その肌に痣のようなものが浮かび上がっていることに気づく。
「そこで暴力を?」
 途端に、少年が慌てたように顔を上げ、勢いよく首を横に振った。

「違います! これは、僕が悪いことをしたから! だから!」
 それは、あまりにも必死すぎて、アルバートはそれ以上言葉をかけることができなかった。
 その代わりに、彼は苦笑して見せた。
「まあ、いいさ。とにかく、ここでは寒い。家に帰ろう」
「え?」
「私はとにかく風呂に入りたいんだ」
 アルバートは乾き始めた服を見下ろしたが、手で触るとごわごわした感触が気持ち悪かった。さっさと脱いで、風呂に入って着替えたい。そう考えながら、少年をもう一度見つめ直した。
 少年は相変わらず、不安げな目つきのままだ。
「私はアルバート・エンジェル。君の名前は?」
「……ブラウン・フレッカー、です」
「ブラウンか」
 アルバートはぎこちなく微笑んだ。あまり他人に笑いかけることをしないせいか、その笑みが引きつりそうになりながら。
「とにかく、おいで」
 彼は精一杯優しく発音しながら、右手を差しだした。
 すると、一瞬の躊躇いの後、少年がその手を握り替えしてくる。
 困ったものだな。
 アルバートは内心でため息をこぼしながらも、少年と一緒に家へ続く道をたどり始めた。

  第一話 了

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