ずっと一緒に居たいと
病的なまでに貴方を思う事
ラジオアイソトープ
「・・・兄貴?」
リビングに虚しく声が響く
なんだかんだで、夜更かしのツケが来たんだと思う
昼近くまで寝過ごしてしまって、さすがにしまったと思い、飛び起き、リビングへ行くと
在って当然と思っていた兄の姿がそこには無かった
「ねぇ、兄貴?」
家全体に聞こえる音量で呼ぶが、返事はない
兄個人の部屋にも居ない
「・・・買い物・・・かな・・・?」
でも、食事用のテーブルの上にもメモなどは残っていないし、寝てる間に声を掛けられた覚えも無い
「・・・ドコ行ったんだろ・・・」
自分で口にして急に不安になった
いつもだったら、自分が起きるまで家に居てくれるのに、なんで今日は居ないんだろう?
なんで、何にも言わないで出てったんだろう
猊下に急に呼び出されたとか? それなら自分の所にも連絡が入るハズ
食べる物がなかった? だったら、僕の分の注文も聞くよね
急に散歩に出たくなったとか? ・・・僕じゃあるまいし・・・
兄が何処に居るのか、わからない
-----------嫌だ、こわい-----
その感情に気づいてしまうと、その場にすら立っていられなくなって、崩れるように座り込む
独りが怖い
いや、ちょっと、違う
独りで、「帰ってくる」って信じて待ってるのが怖い
体内通信で兄に直接、連絡を入れれば何処に居るのか分かるかもしれない
・・・でも、連絡しても出なかったら?
返事が返ってこなかったら?
兄が二度と帰ってこないと分かってしまったら・・・
あの人は帰ってこなかった
人知れず家を出て、二度と帰ってこなかった
父上は、帰ってこなかった
「兄貴」
いつのまにか、手の平で口を覆っていて、その指先と唇が震えているのがわかる
ヤバイ、わけわかんなくなってきた
下手に改造された脳がいらない記憶ばっかり引き出してくる
魔女との戦いの時のコトとか、父上のコトとか、もっと子供の頃のコトとか
こんなの、思い出せば思い出しただけ、不安が増えるだけなのに
兄貴と父上は違う
父上のことなんてどうでもいい
今は兄貴が居る
兄貴は一緒に居てくれるから
「あにきぃ・・・ッ!!」
悲鳴に近い、声の様な気がした
一瞬だって離れたくない
ホントはずっと一緒に居たい
その声で、いつでも僕を呼んで
その腕で、いつでも僕を抱いていて欲しい
お願いだから
お願いだから、傍に居て・・・
「ベル?」
静かな声が、部屋に響く
反射的に顔を上げて玄関を見れば、心配そうにコチラを見る、兄貴の姿があった
「どうした、具合でも・・・」
さっきまで震えて動かなかった足が嘘みたいに、無意識に駆け出して、兄貴に飛びつく
「ベル・・・ッ!?」
勢いが付き過ぎていたのか、兄貴はドアに背を打ちつけて、そのまま背を滑らせて座り込む
「あにきぃ〜ッ!!」
自分でも情けなさが心底分かる、泣声交じりの声
暖かな胸に顔を押し付けて、皺が付くほどに服を握り締めて
「どこっ・・行ってたのッ・・・さぁ?!」
「朝一番で、ラキ家の方に仕事の依頼が入ってな・・・話を聞きに行っていた」
「なんでっ・・・僕・・・ッ、置いてってッ」
「熟睡してたから、わざわざ起すのも、と思ったんだが・・・」
「置き手紙もッ・・・何にも・・ッナイしッ!!」
「すぐ帰ってくるつもりだったんだが、思いのほか、先方の話が長くてな」
「ぁにぎ・・・」
「・・・すまなかった」
兄貴の手が、優しく僕の頭を撫でる
僕が泣くと、兄貴はいつでもこうしてくれる
僕が泣き止むまで、凄くカッコイイ腕を僕の肩に廻して、あったかい手で優しく僕に触れてくれる
「あんまり泣いてると、また猊下に『泣き虫の弟』と笑われるぞ」
咎めるような声じゃなくて、少しからかうような声
「・・・泣いてないもん」
八百でも足りない程の嘘
眼は真赤だし、鼻水でちゃってるし、頬に涙の痕バッチリだし・・・
そんな顔、兄貴に見られたくなくて、また胸に顔を押し付ける
「・・・久しぶりに、昼飯は外で食べようか?」
起きてから、何も食べてないんだろう?と、相変わらず僕の頭を撫でながら、兄貴が言う
「街道の角にね、新しいご飯屋さん出来たんだよ、イタメシだけど、行ってみる?」
声が少しかすれ気味だったけど、いつも通りの僕で返事を返せた
「じゃあ、そこにしよう。 早く、着替えてこい」
兄貴は僕から手を放すと、顔をあげさせて眼に溜まっていた涙を拭い取る
「ただいま」
酷く優しい笑みで、兄は言う
息が詰るほどに、暖かな笑み
「・・・うん、おかえり」
今度は完璧、笑い顔までついた、いつもの僕で返事を返せた
依存症のベル君
精神的にヤグい感じのベル君が好みです
超・激烈にお兄ちゃん大好ッきー☆っていうより、
ベル君のは依存と執着って感じがする
オマケ的な感じですが、イェスパーサイドが有ります