第1章
いつだっかかはもう忘れてしまった。俺が最初にあの能力に目覚めたのは・・・。あぁ、そうだ。確か秋だったな・・・。蔵のなかで見つけたんだっけ、俺の進むべき道を・・・。
20年前。
赤影色也(あかかげしきや)は蔵のなかを探検するのが、毎日の楽しみだった。その時彼は9才だった。
彼の家は代々栄えていたので、蔵の中にはお宝になるものがたくさんあったが、彼はそんなことお構いなしだった。(この時代、蔵もほとんど無くなっていたが・・・。)自分の思ったとおりに値札をつけて遊んでいた。
その中で彼は、一つの箱を見つけた。鍵かかかっていたが、彼にとってはこの程度の鍵は鍵と呼べるものではなかった。(笑)
箱を開けてみると、そこには白でもなく、銀色でもなく、実に透き通った、透明に近い布っきれが入っていた。そしてその横にはなにやら怪しげなお札の貼ってある小瓶が一本おかれていた。
「なんだこりゃ?」
赤影は何だか心引かれるものがあって、これが何か知りたくなった。そして、この発見をいち早く誰かに知らせたくなって、箱をもってじいちゃんの所へ走っていった。むろんこのあと彼の身に何が起こるかは知るよしもなかった・・・。
ゴチッ!
じいちゃんのげんこつが炸裂ぅ!
「ばかもん!!なぜ勝手に蔵に入った!!しかもご丁寧に箱の鍵まで開けてくれておる。何を考えとるんじゃ!!」
「いちちち・・・。痛いなぁ、もう。」
「まったく、お前のそのくせはいつになったら治るのかのぅ・・・。」
「ところでじいちゃん、その布っきれと瓶は何?お宝?」
「・・・。これは何でもないな。お宝でも何でもないのう。」
「ちぇっ、残念。絶対お宝だと思ったのに・・・。あっ、でもお宝じゃないんならそれ僕ににちょうだい。なんか気に入ったんだ。」
「だめじゃ!」
じいちゃんが一喝した。いつも柔和なじいちゃんが、こんなに大声を出したのは久々だった。最後に記憶があるのは、学校を抜け出して、隣町のゲーセンに友達と遊びに行き、カツアゲされてお金を使い果たして、帰れなくなって挙げ句の果てに警察のお世話になった時以来だった。(彼は不良ではなかったが、少し危ない思想を持っているようだった。)
「どうしたの、じいちゃん?」
「いや。なんでもない。いいか、もう二度とこの箱に触れるでないぞ。わかったな?」
「はーい・・・。」
その時赤影の目の奥が光ったのをじいちゃんは見逃さなかったようだ。今の赤影の技術ではとうてい開けることの出来ない鍵が、その時から箱には着けられた。そしてまた蔵に入れられた。
その時から10年がたち、事が起こったのは赤影が19才の冬だった・・・。