第10章
「クレバス〜。」
辺りの森には三人の声がこだましていた。しかしそれも次第に聞こえなくなった。はぐれても、彼らはもう白夜の携帯で集合出来るようになっていた。だがこれが油断であったことは、誰も知るよしもない。
「クレバス〜、どこだ〜。」
赤影はフレアをつれて、北の方へ向かっていた。行けども行けども同じ道。徐々にクレバスを呼ぶ声も小さくなっていく気がしてきた。その時、林をの中を進む中で道の横にちょっとした洞窟を見つけた。
「クルゥ!」
その入り口にフレアが反応した。
「どうした、フレア?」
「クルル!」
制止するいとまもなく、フレアは洞窟の中へ駆けだしていた。
「おい待て!フレア!」
赤影も後を追って洞窟の中へ走り込んだ。
フレアの体は炎で出来ている。それ自体が照明となって、新たに何か灯す必要はなかった。フレアは奥へ奥へと駆けていく。やはりサブどうしお互いの居場所が分かるのだろうか・・・。
赤影がようやくフレアに追いついた。と思ったら、フレアは走るのをやめ、洞窟の奥を見つめていた。と、その時だった。赤影も洞窟の奥になにか青白い光を見つけた。
「あれは・・・?もしかしてクレバス?クレバスー!」
呼びかけるが返事がない。ただ青白い光がゆらゆらと揺れている。姿形は分からないが、何か生き物のようだ。その時、
「クルゥ!」
フレアが叫んでもと来た道を戻り始めた、唐突に。ただただ駆けだした。赤影も何となくいやな予感がして、フレアと一緒に駆けだした。しかし刹那遅かった。
『ドスッッ!』
駆けだしたフレアと赤影の間に鋼鉄製の鉄格子が落ちてきた。
「危ねぇ!」
赤影は間一髪のところで踏みとどまり、その衝撃で地面に転がった。が、洞窟の内側に閉じこめられてしまった。
「いててて・・・。」
赤影が起きあがると目の前には信じられない光景があった。
「クルルルゥ!!」
フレアの足が鉄格子の下で串刺しにされていた。短い足にくさびのように刺さっていた。痛々しいフレアの顔がその苦しさを物語っている。
「フレア!大丈夫か!しっかりしろ、今助けるから!」
赤影はフレアの足に刺さっている鉄格子に手をかけると、目を閉じた。そして、
「Heat up」
赤影の掴んでいる鉄が赤くなってきた。それを掴んでいる赤影の手が、焦げ始めた。辺りに皮膚の焦げる臭いが漂う。さらに温度は高くなっていく。赤影の額には汗がにじんできた。その時ついに鉄が溶け、フレアの足が抜けた。それを確認すると赤影は力を使い果たしたようにその場に倒れ込んだ。
そして倒れ込んだ赤影を心配するようにフレアが近づいたとき、後ろから忍ぶ人影があった・・・。