〜第17章〜
さて、話はまた青星とクレバスの方にもどる。
クレバスがブラックに動きを封じられているとき、青星はその機に乗じてB/hへ攻撃を加えようと走った。間合い内にB/hをとらえた。
「Glass water!(突き刺さる水片)」
青星のまわりに、針のような形に姿を変えた水の粒が浮かんだ。そしてB/hに向けて一直線に飛んでいった。
しかしB/hもそのまま攻撃を受けるほどバカではない。クレバスの方に向けていた両手を青星の方に向けると、
「縛念!」
そういうと、またしてももの凄い速さで飛んでいた水のかたまりはすっと消えていった。「・・・アンタの能力って、まさか、念の吸収?」
青星がふとつぶやいた。
「ククク・・・。50点だ。」
次の攻撃の機会をうかがいながら、B/hが話し始めた。
「まぁ、単純にいうと、念の制御だ。お前らの攻撃は、体の中からのエネルギーを、シーフを媒体として、念という変化自在な物質に変え、攻撃するものだろう?俺の能力はその逆を行うわけだ。つまり念をただのエネルギーに変えることができる。そのエネルギーを利用して・・・」
そういうとB/hは小さな鉄球を取り出して、青星の方へひゅっと放った。ただ放られただけで、野球のような投げ方などしていないにもかかわらず、鉄球は一気に加速して向かってきた。気を集中していた青星は、何とか間一髪その鉄球を避けることができた。
「とまぁ、こんな感じだ。さて、どうする?」
青星は動けなかった。シキの攻撃は全て念によるもの。うかつに手を出せば吸収され、転して反撃されてしまう。それに青星のエネルギーもそろそろ限界に近づきつつあった。
「どうした?来ないのか?」
そういっていた瞬間、クレバスが動いた。それを察知して青星も力を振り絞って、
「Running water!」
B/hの左手側からはクレバス、右手側からは激流が襲ってきた。
――入る!――
そう青星が思った瞬間、クレバスの動きが止まった。そして激流もすっと消え失せた。その奥には両手をその方向に向けたB/hの姿があった。
「ウソ・・・。片手でできるなんて・・・。」
青星が倒れ込みそうになった瞬間、後ろから一筋の炎が轟音をあげて走った。両手をふさがれていたB/hは炎の直撃を頭に受けた。シーフが燃えていく。
「縛念!」
B/hは叫んだ。炎は消えたがシーフの1/2ほどが燃えた。青星が振り返るとそこには、右手にシーフの束を抱えた赤影が立っていた。
「くそったれぇ!」
B/hは叫んで、懐から十数個の小さな鉄球を取り出した。
「赤影伏せて!」
青星がいった瞬間、鉄球が赤影の方へひょうと音を立てて飛んでいった。
「Fire wall!(炎の壁)」
赤影の前に青い炎の壁ができた。飛んでいった鉄球は全て赤い液体となって、軌道をすっと上に向け、赤影の頭の上を抜けていった。
「上昇気流ね・・・。」
ほっとしたような面もちで青星はその場に倒れ込んだ。