第19章
ライトは、秋の日差しの中、力強く飛行を続けていた。
ライトの背中では、赤影と青星が二人並んで気持ちよさそうに眠っていた。赤影も闘い疲れたのだろう。フレア、ティアラも二人の横で丸くなっていた。クレバスもうとうとしている。
「みんなお疲れだな。」
黄閃が後ろを振り向きながらつぶやいた。
「ところで、お前の家ってどこなんだ?黄閃。」
相変わらず携帯をいじっていた手を止めて、白夜が黄閃を仰いだ。
「・・・ラリー・トゥリー・タウンって知ってるか?」
「ラリー・トゥリー・タウン・・・。あんまりいい噂は聞かないな。」
「まぁまぁ、そういうな。いってみりゃわかるよ。いい奴らばっかだから。ただちょっと仲間意識が度を超しているだけなんだよ。」
そう、ラリー・トゥリー・タウンは最近社会で問題になっている町で、一週間ほど前にも、この町に迷い込んだ旅行者が、重傷を負って帰ってきたとテレビで報じられていた。
「大丈夫なんだろうな、本当に。」
「俺がいるから大丈夫だよ。かえって安心だよ。敵がいないからさ。」
「そうか・・・。」
白夜はあまり納得していないようだった。でもそんな顔はせず、いつもの変わらぬ冷静な顔があった。
「さて、そろそろ赤影の体力も回復したことだろう。あいつの回復力は異常だからな。」
そう白夜はつぶやくと、
「おい、起きろ!」
そういうと、赤影の頭を叩いた。パシーンと気持ちのいい音がした。
それとは反対に赤影の気分は最低だった。温かなライトの背中で、気持ちよく眠っていた中、いきなりはたき起こされたのだ。
「・・・」
寝ぼけ眼で、白夜の方を向いた。何だか、何が起こったのかわからないと言う顔だった。
「何すんだよ、白夜!まさか敵か?」
「オラ、修行始めっぞ。」
「マジでかよ・・・。」
あきれたように赤影がつぶやいた。
「お前の元々持ってるエネルギーは底知れないんだからな。お前を育てない手はない。さて、今日からこの紙に書いてあるメニューをこなしていけ。最終目標時間は一時間。でも、1日五時間以上やるとぶっつぶれるから、注意。最初は四時間くらいかかるだろう。」
その紙を見た赤影は、目を丸くした。A4サイズの紙にびっしりと字が詰め込まれていた。遠くから見れば、ただの黒い紙だ。
「おい!ハードすぎだろ!」
「お前なら大丈夫。俺はお前の体内エネルギーを計算してメニューを作った。ま、がんばれ。俺の修行の時よりまだ軽いくらいだ。」
白夜がうすら笑いながらいった。
――うそくせぇ・・・――
そう思いながらもライトの背中でもできる修行から、赤影は修行を開始した。