第2章
高校を卒業した赤影はいつも通りTVを見ながら朝ご飯を詰め込んでいた。今日は朝ご飯は・・・ご飯にみそ汁に焼き魚。う〜ん、日本人だねぇ・・・。
だがその時、赤影は周りの微妙な変化に気づいた。いつもとは違うことに。
「・・・色が薄くなってる・・・。」
「えっ?」
母が聞き取れなかったという顔で赤影を見た。
「いや・・・。何でもない・・・。」
その時TVにニュース速報が走った。
|パーッパッ・パーッパッ|
『国際芸術活動連盟(IAO)は、昨夜未明記者会見で、世界中で色の濃度が徐々に薄くなっていると発表。原因はただいま調査中です。』
いつも無言で食事をしているじーちゃんが重々しく口を開く。
「ついに始まったか・・・。」
「じーちゃん、どういう事だよ?」
「ちょっと来い・・・。」
赤影は言われるままに部屋に入った。線香臭い香りがあたりいっぱいに漂っている。
「お前、これを覚えているか?」
差し出されたのは10年前に赤影が見つけたあの箱だった。
「ああ。だけどそれがなに?」
「これはシキの道具じゃ。」
「???」
「わしらはずっとこれを守り続けてきた・・・。」
俺でも開けられる鍵で何が守ってきただと思ったが、赤影は黙っていた。
「はるか昔、これと同じ事が起こった。色の濃度が、世界から消えたんじゃ。つまり全てが真っ白になった。だが、一人の男が自分の命と引き替えにその呪いを封印した。そしてこれが繰り返されるのを防ぐため、その息子によって7つの秘具が作られた。その一つがこれじゃ。」
「何でじーちゃんそんなこと知ってんの?」
「・・・わしの祖先じゃからな・・・。そしてこの秘具を受け継ぐものには体の一部に特殊なアザがあるのじゃという・・・。」
「っちょっと待てよじーちゃん。そのアザってこれのことか?」
赤影は左腕、ちょうど二の腕の所に生まれつき持っているアザを指さして言った。
「・・・そうじゃ。」
「待てよおい!ということは・・・。」
「その通りじゃ。この事件の犯人は、おそらく黒砂一色。前回の事件を起こした張本人じゃ。」
「えっ?何でそいつ生きてんの?相当昔の事件だったんだろう?」
「あやつには特殊な能力があってな。あいつの能力は『吸収』。色を己の糧にしとるんじゃ。前の事件で死刑に処されたと巷では言われているが、わしが思うにおそらくヤツは魂を処刑される寸前に自分の影に移したのじゃろう。ヤツは黒に乗り移る能力も持っている。」
「そんなヤツを俺がどうしろと!」
「お前一人ではどうにもならん。じゃが、この7つの秘具の継承者を皆仲間にすることが出来れば、勝てる望みはある。旅に出ろ、赤影よ。お前はもう大人だ。」
赤影が二十歳まであと三日の朝だった・・・。