第22章
実践修行も、もう一月経った。赤影の達成度が80%を超えようとしていた頃、ようやく白夜と互角に戦えるようになっていた。そして旅立ちの日の朝。
「赤影、起きろ!」
白夜にたたき起こされた赤影は、眠い目をこすりながら布団からはい出した。熟睡中に起こされるのは、もう慣れっこになっていた。
「ん?今日は黄閃が何でいるんだ?休みだったっけ?」
白夜の横には黄閃が立っていた。
「ちょっとな。着替えて外に出てこい。」
いつになく緊張した面もちで白夜がいった。黄閃もいぶかしげな顔をしている。
「あぁ、わかった。」
ただ赤影はそういうと、着替えを始めた。
その日は雨。外では屋根に激しく打ち付ける大量の雨が降りしきっていた。
「ったく、こんな日に修行かよ。雨の日は俺は相性悪いのに・・・。」
ぶつくさ言いながらも外へ出た。意外に風が強い。
「赤影、今日・最後の修行・・する。」
風が耳に当たる音で、白夜の声が聞き取りづらかった。
「最後の修行、黄閃の一撃をかわせ。以上。考える時間を3分やる。」
その隣で、バンダナのようにシーフを巻いた黄閃がいた。
――ちっ、今日の天気は雨。黄閃の属性は雷。ということは、地面にいたら、放った電気が地面の水たまりを伝ってアウト。かといって空に飛んでも、着地の瞬間を狙われてアウト。それ以前に、自分の真上に雷を落とされたら・・・。――
「あと1分!」
白夜が叫ぶ。黄閃は右手首を左手で掴んでいる。充電中だ。時間は刻一刻と過ぎる。
「あと30秒!」
――打つ手なしか。せめて天気が晴れだったら・・・。そうか!――
「豪炎網!」
赤影の周りを、炎で織られたマントのようなものが覆った。
「水分があるから電気が伝わるんだ!ここの周りの水分を0にしてやれば電気は他の所へ流れる!」
「それがお前の出した答えか!足りねぇな!そんな程度の炎じゃ防ぎきれねぇぞ!残り5秒!」
「分かってらぁ!」
「3・・2・・1・・0!」
「雷龍!」
黄閃が叫び、右手を天に突き上げた。そこから放たれた一筋の雷が赤影の方へ突進していった。
バーーーーーン!
地を引き裂くようなもの凄い音がして、あたりが光に包まれた。
白夜が目を開けると、そこには宙に浮く青い炎の塊があった。
「ようやく引き出せたか、デスファイアを。」
白夜がそうつぶやくと同時に、炎が消え、赤影はその場に突っ伏した。
「大丈夫なのか、あいつ?」
「大丈夫さ。あいつの打たれ強さと、回復の早さは天下一さ。さぁ、修行は終わった。行くか!」
その夜、黄閃の家を飛び立つ一羽の鳥が村の人々に目撃され、4人は消えた。
その町では、今でもその事件は、『フェニックスの神隠し』として語り継がれている。