第25章
ばさばさっとライトが羽ばたき、地上に降りたった。
「着いたな。さてと・・・。」
目の前にそびえ立つ大きな山を見上げ、白夜がつぶやいた。
「おい!二人とも起きろ!着いたぞ。」
赤影も黄閃も、眠たそうな目をしながらのそのそと起き出してきた。
「これはこれは・・・。想像以上にひどいところですなぁ・・・。」
脈々と波打つような山なり、目の前に延々と続く階段、囂々と音を立てて鳴る、黒い空を見て、黄閃がつぶやいた。
「んで?ここで何するわけ?」
とぼけた顔で赤影が聞いた。
「ったく・・・人の話聞いといて欲しいわね。出発前に言ったでしょ!」
「あっ、そうだったそうだった。」
「ったく相変わらずだなお前は。これからここ龍山に乗り込もうってのに、そんなのほほんとした雰囲気でいいのかよ。」
「ま、なんとかなるさ。」
黄閃が胸にかけてあるペンダントのふたを開けると、ライトが吸い込まれるように封印された。白夜がいぶかしそうな目で黄閃の方を見た。
「コイツは戦闘能力ゼロだからな・・・。勘弁してくれ。」
「ってか、それはいいけど、質量保存の法則、無視してねぇか?」
「そういうツッコミはしないことにしましょう、白夜く〜ん。だいたい俺らシキの能力自体おかしいんだからよ。」
「へいへい。」
「じゃあ、心の用意はできた?行くわよ!」
「おぅ!」
青星を先頭に、白夜、赤影、黄閃、そして彼らのサブ達は、延々と続く階段を上り始めた。彼らの中に渦巻く思いはそれぞれであったが、目的は一緒だった。黒羽を倒し、世界を色の消滅という危機から救うこと。その使命は、まだ若い彼らと、まだ見ぬ仲間の小さな肩に全て課せられていた。
周りでは誰もが色の変化に気づくようになっていた。人も、動物も、魚も、植物も。
しかし彼らの行動を知る者は、彼らの家族以外には誰一人としていない。誰もこれらの少年少女達が世界を救う旅に出ていることなど知りはしない。
それでも彼らはこの龍山に足を踏み入れる。入ったものは二度と帰って来られないというこの龍山に。何のために?それは彼ら一人一人の心の中で渦巻いている。
大切な誰かを守るため、世界を救うため、自分のため・・・。
人は何か大切なものを守りたいって思ったときに、自分の限界の力を越えた力が出せる。自分のために生きているヤツより、他人を大切に想って生きているヤツの方が結果逞しくなれる。
さぁ、ゆけ、シキ達よ。過去のアウシュビッツといわれるこの龍山へ・・・。