第3章
「ヤツを倒すにはシキにならなければいかん。今日の昼まで待つ。もし決意が出来たらそこにある瓶の中身を飲み干して、その布を持って、蔵へ来い。だがこれだけは覚えておけ。今世界の色を守るにはお前の代わりはいないじゃぞ。」
そう言うとじいちゃんは部屋を出ていった。
赤影は箱の中を見つめながらずっと考えていた。戸を隔てた外では、雨が降りしきっていた。風も強い。もうすぐ台風が来るとでもいうのか?ごうごうと鳴る風の音が、彼の心を乱していた。
壁にかけてある柱時計が九時を知らせる。いつもなら大学で講義をさぼって友達と遊んでいる頃だろう。だが今日はそうはいかなかったようだ。
赤影は気づいた。なぜ自分の名前が「色也」という変な名前だったのかということに。この「色」というのがシキの血を受け継いでいるもの証なのだ。
赤影は悩んだ。自分の家族のこと。いつも自分を支えてくれた親友のこと。これまでになく愛したあの人のこと。数年前別れて行き先が分からなくなったあこがれの人のこと。そして世界のこと。
そして数時間が経過し、赤影は決心した。
蔵ではじいちゃんが待っていた。薄暗い蔵の中には屋根に当たる雨の雨音が、これからの未来を暗示しているかのように、暗く暗く響いていた。
「・・・来てくれたか。」
蔵の入り口には赤影が立っていた。
「では時間がない。儀式を始めるかな。」
「じいちゃん。一つだけ・・・。俺で大丈夫なのか?本当に俺でいいのか?」
「あぁ、お前しかできない。」
じいちゃんはいつも赤影を支えていた。
「赤影、こっちに来い。」
じいちゃんは蔵の中心の地面を、スコップで掘り始めた。そしてカバーで覆われたボタンを露出させると、カバーをはずし、ボタンを押した。
そこら一面にあったお宝が一瞬にして下へ沈み、あたりにはろうそくの火が二本燃えているだけだった。
「さあ、赤影。その布を貸せ。あと、左肩をだせ。」
赤影は黙って布を手渡した。そして上半身裸になった。
「ここに座るんじゃ。」
赤影が座るとじいちゃんは念仏のような言葉を唱え始めた。重苦しい空気だった。息が詰まりそうだった。ほんの少し動いただけで、命が危ないと思う位だった。
「破ッ!」
そう言うとじいちゃんは布を腕に押しつけた。すると布は勝手に赤影の腕に巻き付いた。
「うっ。」
赤影を激痛がおそった。そのまま気を失った。
そして目覚めた時には夜だった。