第四章
赤影は起きた時、真っ暗な中に一人たたずんでいた。そしてなんとなく左手の小指を突き出し、
「・・・・・・Ligft Fire(左小指の小さな炎)・・・。」
そうつぶやくとポッと炎が指先で燃えた。だがまったく熱くない。しかも不思議なことに、なぜこんな事が出来るのかという疑問はみじんもなかった。出来て当たり前という気がしていた。
明かりがともると、そこで赤影は一枚の手紙を見つけた。じいちゃんからだった。
「赤影よ。お前はこれから一ヶ月、ここで修行をするのじゃ。お前の属性は「炎」。それ以上はわしも知らん。シキには色々な能力があるはずじゃ。頑張って探して見ろ。一ヶ月したら勝手に出ていけ。お前の選んだ道だ。生きて帰って来るんじゃぞ!」
「フッ・・・。くそじじい・・・。」
そう言うと赤影はまた眠りについた。
次の日から赤影の修行は始まった。食料は蔵にあったし、水も蔵に水道があった。赤影はただ修行に専念することが出来た。
それから二十九日が過ぎた。そして次の朝、赤影の旅立ちの日が来た。
その日の朝は、真っ赤な朝焼けだった。彼の旅立ちを祝福するかのように・・・。風も適度にあり、昼には綺麗な秋晴れになりそうだった。
一ヶ月開くことの無かった蔵の戸が、鈍い音を立てながら開いた。そこには赤影が立っていた。赤影は大きく伸びをすると、決心したかのように叫んだ。
「さて・・・。いくぞ!フレア!」
「クルルゥ!」
赤影の後ろから一匹のかわいい生き物がついてきた。そう、シキの第二の能力である。シキは自分の分身といったらいいのか、ペットといったらいいのか分からないが、ある種の生き物をシキになってしばらくすると生み出す。(これからはこの能力を「クリエイト」、生き物は「サブ」と名付ける。そして、赤影のサブは「フレア」ってわけ。)
サブに雄雌があるのかどうかは知らないが、フレアは雌のような感じだった。
「おっとその前に、じいちゃんに挨拶していかねぇとな。ド派手にいくか、それとも地味ーにいくか・・・」
そう言うと赤影はおもむろに片手の袖をたくし上げ、地面に落ちていた木の枝を拾い上げるとしゃがみ込んだ。少し黙り込んだ。何かを考えているようだった。そして・・・
『あばよくそじじい』
と地面に普通に書いた。なんだよ、なんか能力使うんじゃねぇのかよ。
「じゃあ、今度こそ行くか!」
赤影は持っていた木の枝を放り投げ、
「On fire(右人差し指から走る火)」
木の枝がぼっと燃えて地面に落ちた。
そしてそのまま家を旅立った。
赤影二十歳にして旅立つ。