第7章
「赤影。」
青星が確かめるような口調で話しかけた。
「ん?」
青星が口調を落として話し始めた。
「後ろに敵がいる。」
「えっ。」
「振り向かないで。気づいてないふりをして。どうやらお出ましのようね。よかった、あたしの後ろじゃなくて。背後からの攻撃にはまだ慣れてないから。」
青星は相当場慣れしているようだ。一方の赤影は実戦経験なんて、ほとんど無いに等しい。こりゃ尻に敷かれそうだな。(笑)
「でも何で敵だって分かった?」
「黒羽の刺客は、みな黒のバンダナを巻いてるの。覚えといて。こんな森の中に来るバンダナ巻いたやつは刺客に決まってるしね。」
「俺は何をすればいい?」
「そーね。見たところあんまり強い敵じゃなさそうだし、戦いたい?」
「出来れば、実戦を積みたい。」
「そう、じゃあたしは見てるわね。人数は二人。あなたから見て7時と6時の方向だから。じゃ、よろしく。あたしはカバーに回るわね。」
そう言うと青星はティアラとフレアの方へ歩み寄っていった。
「さて。」
赤影の手足はふるえていた。恐怖?いや、武者震いだ。一ヶ月の修行の成果が試される時が来た。
「On fire!」
敵のいるであろう方向に指を向け、叫んだ。そして振り向いて、敵の姿を確認した。しかし敵もさるもの。第一撃はかわされた。その時敵の後ろにあった木が燃えだした。
『やべっ!』
そう思った時、赤影の後ろで声がした。
「Running water(右手から走る水)!」
青星が突き出した右手から、水龍のように流れる水が走り、燃えている火を消した。
「よそ見してないで!気を抜くと殺されるよ!」
「OK!」
敵は二手に分かれていた。一人は剣、一人は弓を持っていた。
『どっちから・・・。』
「迷ってないで!弓からやるのが基本でしょ!」
青星の声が響く。赤影は弓の方へ向かっていった。剣の方は青星の方へ向かっていった。「青星、そっちはまかせる!」
「ったく・・・。」
赤影は正面から弓の男に向かっていった。男は弓をすでにつがえており赤影に向けて射ようとしていた。
「Wall fire(左親指が作り出す壁)!」
赤影の周りを炎の渦が取り巻いた。飛んできた弓は炎の壁に飲み込まれて消えていった。男が第二の弓をつがえるより早く、赤影は自分の間合いを掴んだ。そして
「Burning energy(燃えさかる豪火球)!」
ドッジボールくらいの大きさのボールのようなものが敵に命中した。敵は叫び声をあげて燃えた。
「やった・・・。」
ザクッ!
『えっ・・・。』
敵はまだ生きていた。敵の放った弓が赤影の右脇腹に命中した。赤影を激痛が襲った。
「赤影!」
青星がやってきた。剣の方はもう倒したというのか。やっぱつえぇ。弓の敵は何ともないと言った表情で立ち上がった。
「わるい、言っておくの忘れてた。黒羽の刺客の倒し方。」
青星は立ち上がると敵の方へ向き直った。そしてまた右腕を突き出した。さっきとは多少構えが違った。そして敵が弓を放つか否かといった瞬間、
「Runnning river(全てを流し去る激流)!」
その流れは飛んできた弓をはじくと、敵の頭部に命中した。バンダナがするっとほどけた。次の瞬間、敵の姿は消滅していた。
「黒羽の敵は普通に戦ったんじゃ勝てないわ。奴らはあの黒のバンダナが力の源なのよ。だからいくらダメージを与えても無駄ね。あれをとってしまえば死んじゃうって事。」
「さっさと言えよ・・・。」
赤影はその場に倒れた。体中がしびれて動かなかった。むろん、弓に塗られた毒のせいだろう・・・。